はじめに

 「隣の国が怖いから、強い軍隊を持たなければならない」
 「隣の国が危ない国だから、いざというとき守ってもらうため、アメリカ様に忠誠を尽くさなければならない」
 「でも、戦争は嫌だし、戦争で悲惨な目に遭うのは、お偉い政治家や官僚じゃなくって、子どもをはじめ、一般の人たちばかり。それを思うと、やっぱり戦争放棄の憲法9条を変えてほしくはないんだよな……」

 21世紀に入ったとたん、有事法制が成立し自衛隊イラク派兵が実現するのを横目で見ながら、こんな矛盾する思いを抱えて、無力感に襲われたり、投げやりな気分になったりしていた人が、案外、多いのではあるまいか。
 えっ、あなたがそう?
 もし、そうなら、本書は、まず第一に、他でもないあなたのために書かれたものだ。本書を読めば、「あっちを立てればこっちが立たず」というアンビバレント(二律背反)な悩みは、ズバッと解決! 心のもやもやも、あとかたもなく消え失せて、かわりに、これまで思いもしなかった、明るく楽しく胸おどる未来への希望と展望が、はっきりと見えてくるだろう。

 「今の平和運動は憲法9条がど〜のと言うだけで、ビジョンがない! だから、日本版ネオコンたちにつけこまれるのだ!」

 そうお嘆きの諸姉諸兄!
 この本は、あなたたちのためにも書かれたものだ。ぜひぜひ、日本版ネオコンたちと対決して世界に平和と秩序をもたらすために、本書の助太刀を受け入れてほしい。

 鍵になるのは、国際人道法をはじめとする、国際法・国際慣習法の蓄積だ。
 国際人道法とは、簡単に言うと、戦時下の非人道的行為を抑止し、人間の尊厳と安全を守るための国際法、だ。
 1990年代に入り冷戦が終結した後、国際法の世界では、日本社会が今まさに捨て去ろうとしている「平和主義」の精神が、逆に、新たな息吹を吹き込まれ、ICC(国際刑事裁判所)の設立と運営開始(2003年3月)につながった。国際法と司法の力による、戦争抑止の潮流が、かつてないたしかさで流れはじめているのだ。
 今、日本が「ICCの傘」の下へ、「アメリカの傘」の下から颯爽と飛び跳ねて移動すれば、「傘」の修理や補強をしても諸外国から感謝されこそすれ恨まれることはなく、戦争の加害者にも被害者にもなることのない幸福な時代をイラク、じゃなくて、拓くことができるだろう。
 本書は、戦争を憎み平和を愛する人たちにとって魅力バツグン、威力もバツグンのアイテム、ICCのすごさを解説したうえで、次の2点を提案する。

 「ICC規程を批准して、国際人道法などの国際法を楯に、日本人だけでなく日本に住むすべての人たちの安全保障を築こうよ」
 「軍縮をして、国際救助隊や国際人道支援隊の結成を進めようよ」

 最終目標は、「ICC規程批准国の拡大を推し進め、戦争のない世界をつくること」だ。
 本書が、日本人が明治以降に起こした過ちを繰り返すのをくい止め、戦争の悲惨が世界を覆った時代に終止符を打ち、さらに暴力と憎悪の連鎖を断ちきっていくための一助となることを、切に願いつつ、いざ、めくるめく国際法の書をひらかん!

 2004年11月2日     
 うさちゃん騎士団の円卓にて
         うさちゃん騎士団SC 会員ナンバー1号

【2004年11月に作成した電子本(pdf版などダウンロードページはこちら)の内容を、暫定的に、ブログとして公開します。2005年以降の新情報もちょっと加えてみました。もしコメントをしたいという方は、できれば最後までお読みになってから、どうぞ。また、本文中のリンクは調整中ですので、クリックしてちゃんと飛ばなくてもご容赦ください。  ※参考情報2007.4.27.追記 国民投票法案を語る 共同声明文(案)(国民投票法案を語る)  ※最新情報2007.4.28.追記 国際刑事裁判所(ICC)と日本(ICCに関する最新情報は、こちらでどうぞ!)  ※詳細情報2007.5.1.追記 国際刑事裁判所資料庫(ICCに関する詳細情報は、こちらでどうぞ!)  ※日本:国際刑事裁判所加入へ(Amnesty International アジア・ニュース、2007.4.27)

   ☆☆☆

『戦争の抑え方★軍備オフ:ICCでつくる「戦争のない世界」』もくじ

はじめに

第1章 抑止力としてのICC〜ICCの傘の下へ移動せよ!
1.ICCって何やねん?
 【豆知識1】条約の署名と批准
 【豆知識2】即刻批准のための法律案
 【豆知識3】批准の時期とICCの裁判権
2.ICCのすごいところ!
【豆知識4】国際人道法の流れ
【豆知識5】人道法に実効性を持たせるために何をする?
3.ICCが裁く犯罪のリスト
マンガ 「ネズミ〜皇帝危機一髪 ICCの罠〜国際刑事裁判所の脅威〜」
 【豆知識6】「文民」と「文民たる住民」
 【豆知識7】「戦闘行為」と「敵対行為」
【豆知識8】侵略の罪

4.抑止力としてのICC
 ◎国連憲章の「平和主義」
 【豆知識9】戦争は人間のサガ?
 ICCが好戦国を縛る!
 【豆知識10】大笑い「国民保護法」(「国民保護を反古にする法律」?)
 ブッシュ政権とICC規程
 21世紀の7不思議にノミネート? ブレア首相の決断
5.ICCの傘の下に入れば……?
6.イラク侵略加担を支える2つの命題にツッコミを!

第2章 ICCの傘に入って軍備オフ〜国際救助隊・国際人道支援隊を結成せよ!
1.軍備オフへの不安に答える(1)(2)(3)
 
【豆知識11】世界人権宣言が提示する「テロをなくす方法」
2.「軍隊による国際貢献論」のマヤカシを撃つ!
3.国際救助隊・国際人道支援隊を結成せよ!

第3章 外国籍者、在外邦人と戦争
1.「国民保護法」の憂鬱
2.外国籍者保護のための条約と在外邦人保護(1)(2)(3)

おわりに

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第1章 抑止力としてのICC〜ICCの傘の下へ移動せよ!/1.ICCって何やねん?

 本来ならここで、まず、国際法や国際人道法の歴史を一通り説明すべきかも知れない。
 だが、江戸っ子ではないがカルシウム不足でどうにも気の短い私は、まどろっこしい話が大の苦手だ。いきなりICC(国際刑事裁判所。以下、ICCと記す)の話に突入させていただく。
 ICC設立に至るまでの国際人道法などの流れは、【豆知識4】で後述するので、そちらをご覧いただきたい。

1.ICCって何やねん?

 まず、ICCとはどういうものか、おおざっぱに説明しよう。

 ICC(International Criminal Court)すなわち国際刑事裁判所は、国際連合が設立した独立機関の1つだ。
 所在地は、オランダのハーグ。2003年3月に運営が始まった。

 東京裁判などの臨時裁判所とは違い、常設の裁判所として、武力紛争時に行われた「ジェノサイドの罪」「人道に対する罪」「戦争犯罪」の実行者や共犯者、依頼者、教唆者、煽動者、上官などを、裁く。

 裁判権を行使できるのは、ICC規程(という条約)を批准した国の領土で問題の犯罪が行われた場合と、この条約の締約国の国籍者が問題の犯罪を行った場合が、基本。ただし、ICC規程発効前(2002年6月以前)の行為は、裁判できない。(下記【豆知識3】を参照されたし。)

 刑は、終身監禁刑と最長30年の有期監禁刑、そして罰金。
 有罪判決を受けた者の私財没収や、被害者への損害賠償を命じることも可能。

 ICC規程の批准国は、2006年6月末で100カ国。署名だけで批准待ちの国は43。計143の国がICCに賛同しているわけだ。

【豆知識1】条約の署名と批准
 署名は「この条約に参加するよ」という約束。
 批准は、その約束を果たすこと。
 日本の場合、条約の署名は政府が行い、政府が国会に批准を提案。それを国会が承認して、ようやく批准される。つまり、日本政府がICC規程の署名と国会提出手続を進めない限り、日本のICC規程批准は不可能というわけだ。
 いちおう、批准の準備をする、と言ってはいる日本政府だが、「国内法を整備してから」と言って、先送りの気配。国内法は批准後にも整備できるのに。やはり、宗主国のアメリカ様が署名を撤回しているのに気をつかっているのか、それとも……?

と、思いきや、こんな情報も!
どう展開するかは予断できませんので、「日米同盟に「ICC規程の精神・趣旨」の潜脱を許したら、あきまへんで〜!」もご参照ください。

【豆知識2】即刻批准のための法律案
(このコラムは、日本政府がICC規程批准の準備を進めていると言われる今、もう不要かなあとも思いますが、記念に残しておきます。)

 実際のところ、以下のような内容の、簡単な法律をつくるだけで、ICC規程を今すぐ批准するための国内法整備は完了すると思うのだが、いかがだろうか?

○国内裁判手続法などの整備が完了するまでの間は、「ICCの裁判権が及ぶ犯罪」(つまりICC規程が列挙した犯罪)に対する裁判権行使を、ICCに任せる。
○日本人が訴追された場合、日本国憲法に基づく適正手続保障の観点から、必要であれば日本国政府が弁護人をつけるなど、日本国政府は日本国籍者保護のため万全の手段をとる責任を負う。
○ICC検察官ならびにその補助するスタッフに、捜査上のあらゆる便宜を提供する措置をとる。
○他国籍者が日本国内で、ICCの裁判権が及ぶ犯罪を犯した場合、犯行者および責任者などの身柄確保は、警察組織による国際協力や外交手段を通じて行う。

 日本人が外国の裁判を受けねばならない場合は、今でも通常、あるわけだし、しかも、ICCの手続規則によれば、後述するように、日本の刑事訴訟手続よりも被告人に手厚い保護がある。裁判官の構成も、ジェンダー・バランスや地域バランスなどに考慮するなど、偏りがない。公正な裁判を受けるという日本人の権利も、まあ、万が一にも日本軍関係者が訴追されるような犯罪を犯すことはないと思うが、きっちり守られるので、心配ご無用。

【豆知識3】批准の時期とICCの裁判権
 ICC規程を批准していない国でも、ICC規程が発効した後(つまり2002年7月以降)の犯罪について、ICCの裁判権を受け入れる意思表示をすれば、ICCの裁判を利用できる。
 イラクもアメリカもICC規程を批准していないが、もしイラクの新政府がICCの裁判権を受け入れる意思表示をすれば、アメリカ兵がイラク侵略戦争で犯した罪についてブッシュ大統領(当時)の責任をICCで問うことも可能になる……としか、ICC規程の条文(第11条、特に「ただし書き」と、第12条第3項)は読めない気がする。だが、そうすると、「犯行時に適用されていない法律が、後から適用されてはならない」という刑法の一般原則に反してしまうようで、私の誤解なのかな、とも思えてしまう。まあ、どちらにせよ、ICCの威力を損なう話ではないのだが、ちょっと気になる。真相はいかに!?

◆参考◆ICC規程抜粋
第11条(時間的管轄)
1 国際刑事裁判所は、この規程の発効後に行われた犯罪についてのみ、裁判権を有する。
2 この規程の発効後に締約国となる国に関して、国際刑事裁判所の裁判権は、その国にとってこの規程が効力を生じた後に行われた犯罪についてのみ行使できる。ただし、その国が第12条(裁判権行使の前提条件)第3項に基づく宣言をしている場合は、この限りではない。
第12条(裁判権行使の前提条件)
1 この規程の締約国となった国は、第5条(国際刑事裁判所の裁判権が及ぶ犯罪)が言及<~refer to>する犯罪に関する国際刑事裁判所の裁判権を受け入れる。
2 第13条(裁判権の行使)の(a)または(c)の場合で、以下の国のうち1つまたは複数が、この規程の締約国であるか、あるいは本条第3項に従って国際刑事裁判所の裁判権を受け入れるかしているときは、国際刑事裁判所は裁判権を行使できる。
(a) 問題となっている行為が領域内で行われた国。または、犯罪が船舶内もしくは航空機内で行われた場合の、その船舶または航空機の登録国
(b) 犯罪で告発<~accuse>された者の国籍国
3 この規程の締約国以外の国による(国際刑事裁判所の裁判権の)受け入れが本条第2項の下で求め<~require>られるなら、その国は、書記官に提出する宣言によって、問題となっている犯罪について国際刑事裁判所の裁判権の行使を受け入れることができる。裁判権の行使を受け入れた国は、第9部(国際協力と司法共助<~judicial assistance>)の規定に従って、遅滞も例外もなく、国際刑事裁判所に協力しなければならない。

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第1章 抑止力としてのICC〜ICCの傘の下へ移動せよ!/【豆知識4】国際人道法の流れ

国民あげての総力戦や無差別爆撃、正規兵同士の戦闘とは違った形態で進められるゲリラ戦、そして、正当化されうる軍事目的をはるかに超える被害をもたらす、さまざまな大量破壊兵器の出現、文民犠牲者の爆発的増大……。
 19世紀以降、戦争のもたらす被害は拡大の一途をたどり、その抑止が、全人類にとっての深刻かつ重大な課題として浮上してきた。この課題を解決すべく発展してきたのが、国際人道法だ。
 ICC設立につながった、国際人道法の歴史を語るうえで欠かせない条約と、戦争裁判を、あげてみよう。

 1907年 ハーグ陸戦条約
 1946年 ニュルンベルグ裁判、東京裁判
 1948年 ジェノサイド条約
 1949年 ジュネーヴ諸条約
 1977年 ジュネーヴ諸条約の追加議定書
 1993年 旧ユーゴスラビア国際刑事法廷
 1994年 ルワンダ国際刑事法廷
 1998年 ICC規程(国際刑事裁判所規程)
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▼「ハーグ陸戦条約(陸戦の法規慣習に関する条約)」は、捕虜の待遇や占領国の占領行政上の義務などを定めた他、害敵手段の基本原則である「軍事目標主義」を掲げるなど(第25条、第27条)して、害敵手段を制限した。その源流には、

 「戦争において国家が達成しようと努めるべき唯一の正当な目的は、敵の軍事力を弱めること」であり、
 「そのためにはできるだけ多数の者を戦闘外に置けば十分」であり、
 「すでに戦闘外に置かれた者の苦痛を無益に増大したり、その死を必然的にしたりするような兵器の使用は、正当な目的の範囲を超え」「人道に反する」

 としたサンクト・ペテルブルク宣言(1868年12月。「蝦夷島共和国」がフランス政府に承認されるちょっと前、のことだそうな)がある。
 この「ハーグ陸戦条約」は、第2次大戦の敗戦国を裁いたニュルンベルグ裁判で、1939年までに慣習法化したことが認められた。現在では、あらゆる国を拘束する慣習法として確立している、と言えよう。

▼ニュルンベルグ裁判、東京裁判では、「人道に対する罪」「平和に対する罪」という概念が登場した。また、「ジェノサイド条約」は、ナチスによるホロコーストのような悲劇を繰り返さぬために、ジェノサイドを禁止(ジェノサイドについては、本章「3.ICCが裁く犯罪リスト」を参照)。

▼1949年のジュネーヴ諸条約は、
 「戦地にある軍隊の傷病者の状態の改善に関する条約」(第1条約)
 「海上にある軍隊の傷病と難船者の状態の改善に関する条約」(第2条約)
 「捕虜の待遇に関する条約」(第3条約)
 「戦時における文民の保護に関する条約」(第4条約)
 からなる。第4条約の「文民」は、主として「締約国にとっての外国籍者」を指す。内戦(非国際武力紛争)に適用される規則が、ここで登場した。
 このジュネーブ諸条約は、2005年2月末現在、192カ国が批准や加入などの形で遵守を約束している。ちなみに191は国連加盟国の数と同じ。

▼「ジュネーヴ諸条約の追加議定書」は、国際武力紛争(植民地支配や外国の占領、あるいは人種差別体制に対して闘う武力紛争を含む)についての「第1追加議定書」と、非国際武力紛争についての「第2追加議定書」からなる。
 第2次大戦後の植民地独立戦争や、ベトナム戦争で新しく噴出した被害、そして何より、第1次大戦以降爆発的勢いで増大してきた文民被害を抑えるために、文民や捕虜、傷病者の保護を拡大・強化しつつ、「軍事目標と民用物の区別原則」を徹底。「戦闘行為(敵対行為)(←【豆知識7】参照)を差し控える」のを条件に、正規軍か不正規軍かなどにかかわりなく、すべての傷病者、難船者が「第1追加議定書」でカバーされることになった。
 なお、「第1追加議定書」を中国、北朝鮮、ロシアは批准しているが、アメリカ、イギリス、イスラエル、フランスは批准していない。しかし、批准・加入のペースから見て「第1追加議定書」はすでに慣習法になっている、それどころか、一般国際法の地位に近づいている、との見解もある(Abi-Saab)。実際、アメリカとイスラエルでさえ、「第1追加議定書」中のすべての慣習規則を尊重することを、正式に表明しているほどだ(『国際人道法』藤田久一、p245,248,271-272)。

▼第2次大戦後、ニュルンベルグ裁判や東京裁判のような臨時の裁判所ではない、常設の国際刑事裁判所を創ろう、という動きがあった。しかし、東西冷戦の発生で、とん挫。冷戦終了後、常設裁判所を求める声が再び高まり、ユーゴ内戦やルワンダ内戦の残虐な現実が、設立に向けた動きを加速。ついにICC規程が生まれた。
 ICC規程は、「人道の罪」と「ジェノサイドの罪」、「ジュネーブ諸条約」とその「追加議定書」の重大な違反、国際慣習法の重大な違反について、裁判権を持つ。ICCはまさに、20世紀の戦争がもたらした惨禍を2度と繰り返さぬためにと編み出された国際人道法の、ひとつの集大成なのだ。

批准国(2006年6月末現在)
 ジュネーヴ諸条約 192カ国(たぶん)
 ジュネーヴ条約第1追加議定書 162カ国(おそらく)
 ジュネーヴ条約第2追加議定書 157カ国(きっと)
 ICC規程 100カ国(署名済みで批准待ち43カ国)

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第1章 抑止力としてのICC〜ICCの傘の下へ移動せよ!/【豆知識5】人道法に実効性を持たせるために何をする?

 このように、戦争に関する国際法は、20世紀はじめからどんどん生まれていくのだが、違反も絶えなかった。
 たとえば、昭和天皇は、当時の首相であった東条英機に「開戦の詔勅」から「国際法を守って戦え」との語句が削除された理由を尋ねたところ、「嘘は書けません」との、とっても正直な回答を受け、黙認したのだとか。
 考えてみれば、すでにそれ以前に日本政府は、

 「もっとも重要なのは直接に住民を空襲し、敵に極めて大きな恐怖をもたらし、敵の意志を打ち砕くことである」

 と「軍事目標主義」(「ハーグ陸戦条約」1912年に日本も批准)の蹂躙を明記した「航空部隊使用法」を制定し、5年にわたり重慶への無差別爆撃を展開していたほか、「性奴隷」制度の確立と運営や住民虐殺など、各地で国際法違反を国策として行っていたのだから、東条英機のこの馬鹿正直さが、別の方向に向いてくれていたらと思わないこともないのだが、歴史に「もしも」はありえんしねえ……。

 さて、昭和天皇の黙認後。日本軍は、宣戦布告なき対イギリス開戦や、「日タイ友好和親条約」違反など、さらにますます、国際法違反を積み重ねていった。そして、日本軍の最高責任者、昭和天皇は、アメリカ軍の政治的思惑から、東京裁判を免れた。

 ちなみに、1937年から1945年までに日本国が推進した性奴隷制度(従軍慰安婦制度)は、「ハーグ陸戦条約」(1907年)、「婦人児童売買禁止条約」(1921年)、「ジュネーブ条約」(1929年)、「ILO強制労働条約」(1930年)、慣習法化していた「奴隷条約」(1926年)に違反していたとの指摘がある(『Q&A 女性国際戦犯法廷「慰安婦」制度をどう裁いたか』VAWW-NETジャパン編)。倫理的に問題があるだけでなく、あまりにも明白な国際法違反だったわけである。

 それから半世紀あまり。21世紀を迎えた今、時代は変わったか?
 残念ながら、「否」と言わざるをえない。アフガン・イラク侵略戦争での、アメリカ軍の住民虐殺や捕虜虐待、劣化ウラン弾の使用(どれもジュネーブ条約の違反行為だ)などを見れば、結局、「勝てば官軍」「法はあるけど違反はし放題」の時代が、今も続いていると言うしかない。ICC規程の効力が及ばないところでは。

 戦争被害の抑止と戦争抑止に向けた20世紀後半以降の動きを無に帰させぬためにも、世界を19世紀から20世紀前半の弱肉強食の時代に先祖がえりさせないためにも、
 「19世紀にカエル軍団」
19kaeru
の進軍を、止めねばならない。
 そのためには、やはり、戦争犯罪などを公正に裁き、責任者たちにきっとり責任をとらせ、国際人道法に実効性を持たせる仕組みが必要だ。
 そして、その仕組みであるICCは、すでに設立されているのである。さあ、どうする!?
Kaerugundan

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第1章 抑止力としてのICC〜ICCの傘の下へ移動せよ!/【豆知識6】「文民」と「文民たる住民」

 ここで言う「文民」と「文民たる住民」とは何か。
 ジュネーブ条約「第1追加議定書」の第50条第1項をかみくだいて説明すると、「文民」とは、次にあげる以外の者、だ。

(1) 「紛争当事者の軍隊」の構成員。「紛争当事者の軍隊」とは、部下の行動についてその紛争当事者に対して責任を負う司令部の下にある、組織され武装した戦力、集団、部隊すべてからなる。その紛争当事国を代表する政府または当局が、敵対する紛争当事者によって承認されているか否かは無関係。「紛争当事者の軍隊」の構成員(第3条約第33条の衛生要員と宗教要員を除く)は、戦闘員であり、すなわち、戦闘行為(敵対行為)に直接参加する権利がある。
(2) 紛争当事国の軍隊の一部をなす民兵隊または義勇隊の構成員。
(3) 紛争当事国に属するが「その軍隊」の一部ではない民兵隊、義勇隊、組織的抵抗運動体の構成員で、(a) 部下について責任を負う1人の者が指揮している、(b) 遠方から認識できる識別標章を付けている、(c) 公然と武器を携行している、(d) 戦争の法規と慣習に従って作戦行動をしている、という4つの条件を満たしている者。
(4) 正規の軍隊の構成員で、その者を捕らえて抑留している国が承認していない政府または当局に忠誠を誓った者。
(5) 占領されていない領域の住民で、敵接近にあたり、正規の軍隊を編成する時日がなく、侵入する軍隊に抵抗するために自発的に武器を取る者。ただし、それらの者が公然と武器を携行し、かつ、戦争の法規と慣習を尊重する場合に限る。

 かみくだいて説明って、うそだって? そんなことはないのだが、たしかにこれでもわかりづらい。簡単に図示してみよう。
Bunmin

 ちょっと読みづらいかも知れないが、上記説明とあわせて見れば、だいたいの感じはつかめると思う。灰色部分が、上記説明の(1)から(5)までを表している。そして、灰色以外が「文民」というわけだ。

 なお、「文民たる住民」とは、文民であるすべての者からなる住民であり、「文民」に該当しない者が「文民たる住民」の中に存在していても、その「文民たる住民」から「文民」としての性質は失われない(第50条第2項、第3項)。そして、「文民」は、「戦闘行為(敵対行為)」に直接参加していない限り、「文民」としての保護を受ける。

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第1章 抑止力としてのICC〜ICCの傘の下へ移動せよ!/【豆知識7】戦闘行為と敵対行為

 本書で言う「戦闘行為(敵対行為)」は、英文では「hostilities」。防衛庁ウェブサイトの訳文をはじめ、国際法の専門書の中でも「敵対行為」と訳されることが多いようだ。
 しかし、「敵対行為」と言うと、デモや口頭での抗議、ビラまきなど平和的な抵抗、平和的レジスタンスも含まれるような響きがある。そして、

 「紛争当事者の軍隊」の構成員(第3条約第33条の衛生要員と宗教要員を除く)は「戦闘員」であり、すなわち、「敵対行為(hostilities)」に直接参加する権利がある(「第1追加議定書」第43条第2項)。

 などと言われると、武力によらない平和的抵抗運動も、「戦闘員」の専売特許で、「文民」にはできないように聞こえてしまう。

 だが、そんなことはなかろう。

 だって、もし「組織的抵抗運動体」の構成員が平和的レジスタンスを行うには「文民」でない状態(=「戦闘員」である状態)でなければならないとしたら、つまり(a) 部下について責任を負う1人の者が指揮している、(b) 遠方から認識できる識別標章を付けている、(c) 公然と武器を携行している、(d) 戦争の法規と慣習に従って作戦行動をしている、という4つの条件を満たす状態でなければならないとしたら、どうなるか? ビラ作りやビラまきはもちろん、占領軍の無理難題を非暴力的に拒絶することや、不服従を貫くことすら、この4条件を満たしつつ行わねばならないことになる。しかも、その最中は、敵から「戦闘員」として射撃される危険を負わねばならないのだ。これは、ちょっとナンセンスだろう。

 そこで本書では、「hostilities」を「戦闘行為(敵対行為)」と訳すことにした。「hostilities」は必ずしも銃のドンパチのような「戦闘行為」に限られないのかも知れないが、「hostilities」に平和的レジスタンスは含まれない、というニュアンスを出すためだ。

 なお、国際人道法関係の解説が詳しいICRC(国際赤十字委員会)の英語版ウェブサイトに「Conduct of hostilities」というタイトルのセクションがあり、そのタイトルは「戦闘で敵を殺傷する行為」と訳すべきものと思える。

 また、手元にあるちょっぴり古めの『LONGMAN DICTIONARY OF CONTEMPORARY ENGLISH』)では、「hostilities」は、「acts of fighting in war」となっている。「fight」をどう解釈するにもよるだろうが、本書の訳で、ニュアンス的には問題あるまい。

てなことを書いてみた後、こんなことがわかりましたっ!!!

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第1章 抑止力としてのICC〜ICCの傘の下へ移動せよ!/【豆知識8】侵略の罪

 ICCが裁く「侵略の罪」の内容は、まだ確定されていない。
 だが、「侵略の定義に関する決議」なるものが、国連総会で1974年に採択されている。参考にあげておこう。

(第3条)
 以下の行為はいずれも、宣戦布告の有無に関わりなく、第2条の条項に従うことを条件として、侵略行為とする。
(a) ある国家の武装兵力による、他国の領域に対する侵入または攻撃、または、一時的なものであってもこのような侵入または攻撃の結果もたらされた軍事占領、または、他国の領域の全部または一部の武力行使による併合
(b) ある国家の武装兵力による、他国の領域に対する砲爆撃、またはある国家による他国の領域に対する兵器の使用
(c) ある国家の武装兵力による、他国の港または沿岸の封鎖
(d) ある国家の武装兵力による、他国の陸軍、海軍、空軍、船隊または航空隊に対する攻撃
(e) 受入国との合意に基づいてその国の領域内にある武装兵力の、その合意で定められている条件に反する使用、または、その合意終了後の受入国領域内にでの駐留継続
(f) 他国の使用に提供した自国の領域を、その他国が第三国に対する侵略行為を犯すために使用することを許容する国家の行為
(g) 上記の諸行為に匹敵する重大性を持つ武力行為を他国に対して実行する武装部隊、グループ、不正規兵または傭兵の国家による派遣、または国家のための派遣、または、このような行為に対する国家の実質的関与
(第4条)
 前条に列挙された行為は網羅的なものではなく、安全保障理事会は、その他の行為が憲章の条項により侵略を構成すると決定できる。

 なお、この「侵略の罪」については、たとえICC規程にもとづいて定義されたとしても、具体的な事件が侵略にあたるかどうかは、結局、国連の安全保障理事会が決定することになるので、ICCの力が本当に発揮できるのか疑わしい、との懸念が表明されている(国連憲章第39条とICC規程第5条第2項。「シリーズ 国際人権・随想3 国際刑事裁判所」安藤仁介、『GLOBE 2003秋』)。

 たしかに、自分の国の行動に対する非難決議案が提出されたときに拒否権を行使できる「常任理事国システム」がある限り、「侵略の罪」をめぐるICCの活動には困難が予想される。

 でもまあ、ICCのような斬新な試みが、最初からすべて問題なくうまく機能すると期待するのもなんではある。

 こうした懸念を克服する方策を考えながら、地道にしっかり、ICCを育てるために力を尽くすのが、きっと正しい道だろう。「侵略の罪」がどうであれ、人道被害のかなりの部分は、他の条項で十分に抑止できるのだから。

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第1章 抑止力としてのICC〜ICCの傘の下へ移動せよ!/4.抑止力としてのICC!/ 国連憲章の「平和主義」

◎ 国連憲章の「平和主義」

 ところで、国際連合憲章は、武力攻撃を受けた国が、単独であるいは集団的自衛権に基づいて行う自衛戦争のみを認め、侵略戦争はもちろん、先制攻撃すら違法としている。そして、いかなる場合も、武力行使を慎み、平和的手段で、正義と国際法の原則に従って紛争解決に努めることを、加盟国に求めている。

国連憲章
第1条(目的)
 国際連合の目的は、次の通りである。
1 国際の平和および安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止および除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとることならびに平和を破壊するに至るおそれのある国際的紛争または事態の調整または解決を平和的手段によってかつ正義および国際法の原則に従って実現すること。
2 人民の同権および自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させることならびに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。
3 経済的、社会的、文化的または人道的性質を有する国際問題を解決することについて、ならびに人種、性、言語または宗教による差別なくすべての者のために人権および基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること。
4 これらの共通の目的の達成にあたって諸国の行動を調和するための中心となること。
第2条(原則)
 この機構およびその加盟国は、第1条に掲げる目的を達成するにあ当たっては、次の原則に従って行動しなければならない。
1 この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。
2 すべての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利および利益を加盟国のすべてに保障するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。
3 すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和および安全ならびに正義を危うくしないように解決しなければならない。
4 すべての加盟国は、その国際関係において、武力よる威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない
5 すべての加盟国は、国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、かつ、国際連合の防止行動または強制行動の対象となっているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。
6 この機構は、国際連合加盟国でない国が、国際の平和および安全の維持に必要な限り、これらの原則に従って行動することを確保しなければならない。
7 この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。ただし、この原則は、第7条に基く強制措置の適用を妨げるものではない。
第33条(平和的解決の義務
1 いかなる紛争でもその継続が国際の平和および安全の維持を危くするおそれのあるものについては、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関または地域的取り決めの利用その他の当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。
2 安全保障理事会は、必要と認めるときは、当事者に対して、その紛争を前記の手段によって解決するように要請する。
第51条(自衛権)
 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和および安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的または集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使にあたって加盟国がとった措置は、ただちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和および安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能および責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

 なんとなく、この国連憲章も読み飛ばされたような気がするが、まあ、いいだろう。要するに、国連憲章は、戦争を基本的に違法なものとし、紛争の平和解決を原則としていること、そしてそこに、日本国憲法の「平和主義」に通じるものがあること。以上を肝に銘じてくれれば、ひとまず十分だ。
Joshiki

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第1章 抑止力としてのICC〜ICCの傘の下へ移動せよ!/【豆知識9】戦争は人間のサガ?

 「戦争は、人間の本能に基づくものだ! だから人間は戦争をやめられないのだ〜!」

 なんだか、もっともらしく聞こえる理屈である。もしこれが真理なら、戦争の根絶どころか抑制すら、きわめて困難な話ということになる。実際、学校で習う日本史にしろ世界史にしろ、年表は戦争で埋め尽くされている。マンガやゲームや映画でも、戦争を扱ったものは人気が高いようで、手を変え品を変え、次々につくられている。それを思うと、

 「戦争は、やっぱり人間の本能であって、悲惨な事態を生むことがわかっちゃいるけど、やめられないのだ」

 という意見に、思わず納得してしまいそうになるが、あいや、待たれい。文化人類学者のマーガレット・ミードは、南太平洋の西サモア人を調査した結果、まったく別の結論を出している。

 ミードの調査によれば、なんと、西サモア人は、戦争のような制度的暴力による紛争解決手段を持っていなかったというのだ。
 戦争のない文化の存在。この事実から、ミードは、戦争は生物学的必然ではなく、社会的発明である、との結論を導き出した、のだそうな(『ウルトラマン新研究 その「戦争と平和」論概説』グループ「K-76」編、p57)。

 戦争が生物学的必然でないのなら、社会的発明であるのなら、それを抑えこむことはけっして不可能ではない。たとえば、相互の交渉と妥協によって、戦争に替わる他の解決手段を模索することは、単なる無駄骨とは言い切れないのだ。

 ミードの説だけでは納得できない方もいるだろう。だが、彼女のような主張は、実は珍しくもなんともないようだ。『未開の戦争、現代の戦争 現代人類学の射程』(栗本英世・著、岩波書店)によれば、たとえば、ブロニスロウ・マリノフスキーは、1941年に発表した論文で、個人の怒りや暴力は、生物学的ではなく文化的問題であること、戦争は個人間ではなく、政治的単位である集団間の闘争であることを主張。また、1986年には、社会科学と自然科学のさまざまな分野の学者たちが、世界各国からスペインのセビーリャに集まり、「暴力に関するセビーリャ宣言」を採択した。この宣言は、暴力と戦争に関する4項目、「(1)戦争や暴力的行動は遺伝的にプログラムされている。(2)自然淘汰の過程で、攻撃的行動が進化した。(3)人間は『暴力的な脳」を持つ。(4)戦争は「本能」、あるいは単一の動機によって引き起こされる。」「科学的に正しくない」ことを述べたもので、後に、アメリカ人類学会、アメリカ心理学会、デンマーク心理学会、ポーランド科学アカデミー、スペイン・ユネスコ委員会、メキシコ生物人類学会などでも採択されたのだとか。

 実際、「人類の歴史は戦争の歴史」と言われることがあるとしても、20世紀の2つの世界大戦でも、実際に戦っていたのは、全人類、全国家の一部でしかなかった。アメリカでさえ、国民の大半は、当初は参戦を嫌がっていたのだ。

 これまでの歴史の中で、はたしてどれほどの人たちが、戦争を心から望んできたのか。戦闘に参加した人の多くも、社会的・経済的システムの力で、否応なく参戦させられていたのではないか? 進んで参加したように見える人も、他の時代、他の社会に生まれていたら、どうだったろう?

 人間の歴史に戦争はつきものだったかも知れない。たしかに、たとえば、日本の歴史の中から戦国時代だけを取り出して眺めてみれば、戦争は人間のサガであり、永遠になくならないもの、という結論にたどり着くのは、むずかしくあるまい。だが、その戦国の世も、江戸幕府という「戦争を抑止する権力」が確立することで、終止符が打たれ、長い間、戦乱は抑えられた。

 やはり、ミードが言うように、戦争を抑制するシステムをつくることは可能だ。そして、ICCは、その新たなシステムに育ちうる。

 とまあ、以上のような観点からも、紛争の平和的手段による解決を原則とする国連憲章は、やはり尊重すべきルールに思うのだが、国連査察も終わらぬうちにイラク攻撃に踏み切ったアメリカ政府を即座に支持した日本の政治家や報道関係者、文化人たちの程度は、いかに?

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第1章 抑止力としてのICC〜ICCの傘の下へ移動せよ!/4.抑止力としてのICC!/ ICC規程が好戦国を縛る!

 さて、このような国連憲章の下で、ICC規程のリストにあげられた犯罪に手を染めずに行える他国領域への攻撃、というものを、皆さん、想像してみてほしい。
 どんなものがあるだろうか? ネズミ〜皇帝とその防衛大臣でなくとも、非常に頭を悩ます難問だろう。
Nayami

 私が思いつくのは、たとえば、文民のいない海上や無人の広野で、軍隊同士が、国際法規に則った武器と戦法を駆使して行う、軍同士の決戦。
 あるいは、明らかに周囲から孤立した軍事目標への攻撃。
 ……こういったものに限られてしまう。

 つまり、ICC規程が適用される状況下では、イラク侵略戦争のような、20世紀型の総力戦、敵国都市への空爆や敵国都市での市街戦などは、極めて限られた場合以外(と言っても、そんな場合があるとはちょっと思えないのだが)、その遂行自体が犯罪として処罰されかねないのだ。

 このことから推論できるのが、日本がICC規程を批准すれば、日本から侵略戦争をしかけていくか、日本がわざと緊張を高めておいて相手の侵略を誘発するかしない限り、わざわざ日本本土を先制攻撃しよう、などという国は、まずいなくなる、ということだ。

 なぜなら、他国に戦争をしかけようなどという政治家は、少しでもまともな判断力があれば、ICCで裁かれるのを恐れ、ICC規程を批准した国に戦争をしかけるようなお馬鹿なことはしないからだ。そして、また、他国に戦争をしかけようなどという政権は、ICC規程を批准しようとはしない。

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