おわりに 〜疑いと熟慮を!〜

 以上、あらん限りの力を振りしぼって、「ICCの傘と軍備オフの有効性」を説明してきたつもりだが、導かれた結論と提示された方法が、「20世紀的な常識」すなわち「安全のためには軍隊が必要」という多くの人がなんとな〜く信じているであろう常識、と違いすぎて、なんだか騙されてるみたいでどうにも不安がぬぐえない、という読者が、今もまだ少なくないのではないか、と思う。

 「ICCに頼れば安全が確保できるって、理屈ではわかるんだけど、世の中、そんなものじゃあないんじゃないの? 理屈じゃないけどサ……」
 その懸念は、健全である。

 「おいしい話だよ!」
 などと持ちかけられた話が「おいしい!」のは話を持ちかけているヤツにとってであって、持ちかけられた側には何のメリットもないどころか、着ぐるみとられる、じゃなくって、身ぐるみはがされる罠が待っていた、なんてことは、古今東西、よくある話で、どれほどメリットがありそうに聞こえる話でも、まず疑ってみること、そして、じ〜っくりと検討することが、身を守るうえで大切な心がまえなのだ。

 「ICCによる安全保障で軍備オフ」という方策に、どうにもこうにも落ちつかない、と感じている方は、その感覚を大事にしてほしい。そして、ぜひぜひ、本書を何度も何度も読み返し、たとえば「ネズミ〜皇帝危機一髪」は声に出して読んでみる、しかもキャラクターごとに声色を変えて感情移入して読んでみる、などして、やはりどうしても納得できないのかどうか、じっくりじっくり、何度も何度も、自分の頭で考えてほしい。

 持ちかけられた「おいしい話」やそれらしく聞こえる話。多くの人が感じているらしい常識。そういうものを疑い、検討してみる姿勢こそが、政治家や官僚たちのウソを見抜く力を育て、議会制民主政治をまっとうに機能させる基礎になる。過去の過ちを繰り返すのを防ぎ、違った未来を築いていく足がかりにも、なる。常識にとらわれていては、壁を超えることはむずかしいし、新たな飛躍も望めやしないのだから。

 それにしても、ICC規程とその付属文書を読んでみて、胸の底からふつふつと湧いてくるのは、よくもまあこんなたいそうなものを作り上げた、十年ちょっと前には夢物語に過ぎなかった常設の国際刑事裁判所をよくぞ実現してくれたという、驚きと感謝の気持ちだ。まだまだ「侵略の罪」の定義や裁判所の実際の運営に関して、未解決の部分があるのは否定できない事実である。それでもやはり、ICCの実現に向けて傾注された有名無名の専門家たちの情熱と努力と執念に、心からの敬意を捧げたい。彼・彼女らが、せっかく芽吹かせたICCを、何としても育て上げ、実効的な戦争抑止力として活用していかねばと、強く思う。

 そして何より。
 ICC規程の中でも特に第5条から第8条までと、付属文書の「犯罪の要素」とを読んでいるときに、どうしても思いをはせずにはいられなかったのが、これまでの戦争で命や家族、人生を奪われてしまった、凄まじい数の人たちのことだ。その中には、私の祖父やそのさらに父祖たち世代が関わった戦争の被害者たちも、いる。
 狂おしい嘆きと悲鳴が、世界のあちこちに、無念の色ではりついている。

 ICCが、気の遠くなるほど多くの人命と人生の犠牲を踏まえて設立されたことを胸に刻み、戦禍の被害を受けた数え切れないほどの人びとの魂が安らかに眠れるよう、戦争を2度と繰り返さぬための努力を、続けなければならない......。

 などと殊勝なことを書きつつも、太陽エネルギーを使い果たして、もうふらふら状態の私は、後のことはひとまず、読者の皆さまにお任せできたらなあ、と思う。

 皆さま、どうか、本書の内容を最低でも2人の方に伝え、その2人の方にも同じように2人の方に伝えるようにと、お願いしてほしい。本書の読者を、ネズミ〜算式に増やし、せっかくできたICCについての議論をあちこちで巻き起こしてほしい。

 私自身、実を言うと、国際法の専門家ではないので(言っちゃった!)、本書のあちこちに勘違いが潜んでいるやも知れぬ。だが、どうぞ、その勘違いを修正して乗り越えて、議論を深め、進めていってほしい。
 申し訳ないと思いつつ、私は涼しい木陰で風力エネルギーをためながら、しばらく昼寝をすることにする。体力が復活する日まで、おやすみでござる! ちゃお!

   2004年11月2日                
    うさちゃん騎士団の円卓から木陰に移る寸前、記す
                      うさちゃん騎士団SC会員ナンバー1号
Entaku

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第3章 外国籍者、在外邦人と戦争/2.外国籍者保護のための条約と在外邦人保護(3)

◆ ジュネーヴ諸条約「第1追加議定書」

【難民および無国籍者】
(第73条) 戦闘行為(敵対行為)の開始前に、関係締約国が受諾した関連する国際文書または避難国もしくは居住国の国内法令により無国籍者または難民と認められていた者については、すべての場合において、かつ、不利な差別をすることなく、第4条約第1編および第3編に定める被保護者とする。
←戦闘行為(敵対行為)開始前に難民と認められなければならないが、そもそも難民だと認められること自体が今の日本ではヒジョーにむずかしい。なんとかしましょうっ!!!

◆ 市民的および政治的権利に関する国際規約

【非常事態における例外】
(第4条)1 国民の生存を脅かす公の緊急事態の場合においてその緊急事態の宣言が公式に宣言されているときは、この規約の締約国は、事態の緊急性が真に必要とする限度において、この規約に基づく義務に違反する措置をとることができる。ただし、その措置は、当該締約国が国際法に基づき負う他の義務に抵触してはならず、また、人種、皮膚の色、性、言語、宗教または社会的出身のみを理由とする差別を含んではならない。
2 1の規定は、第6条【生命に対する権利および死刑】、第7条【拷問または残虐な刑の禁止】、第8条1および2【奴隷と隷属状態(および強制労働の)禁止】、第11条【契約不履行のみを理由とする拘禁の禁止】、第15条【遡及処罰の禁止】、第16条【すべての者は、すべての場所において、法律の前に人として認められる権利を有する】ならびに第18条【思想・良心および宗教の自由】の規定に違反することを許すものではない。

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第3章 外国籍者、在外邦人と戦争/2.外国籍者保護のための条約と在外邦人保護(2)

ジュネーブ第4条約

【この条約の適用場面】

(第2条) 締約国間で戦争または武力紛争が始まったとき。締約国の領域が占領されたとき。
←日本社会が仮想敵国として恐れているらしき中国、北朝鮮、ロシアもジュネーブ条約を批准しているので、ご安心あれ。
←締約国以外との紛争の場合についても規定があるが、適用される事態が発生する可能性が極めて低いと思われるので、説明省略。

(第3条) 締約国の領域内で生じた内乱のような武力紛争。この場合、戦闘行為に直接参加しない者(文民だけでなく、武器を放棄した軍隊の構成員や病気、負傷、抑留その他の事由により戦闘外に置かれた者も)は、人種、皮膚の色、宗教、信条、性別、門地、貧富、その他類似の基準による不利な差別を受けることなく、人道的に待遇される。

【この条約の保護対象者:以下、「被保護者」】

(第4条) 「紛争当事国の国民」以外で、紛争当事国にいる者。「被占領国の国民」以外で、被占領地域にいる者。ただし、「締約国の国民」に限る。
 なお、「中立国の国民」で交戦国の領域内にいる者と、「共同交戦国の国民」は、本国が、それらの者がいる国に通常の外交代表を駐在させている間は、このジュネーブ第4条約の被保護者にならない。
←「なお」以下が何だかわかりづらいが、
 「中立国の国民」で交戦国の領域内にいる者と
 「共同交戦国(味方として戦っている国)の国民」は、
 本国が、それらの者がいる国に通常の外交代表を駐在させている間は、その外交代表が保護できるし、特別な人権制限(この第4条約が定めるものを含む)を課されるわけではないので、格別の保護は必要としない、という趣旨のようだ。裏から言えば、
 「敵国の国民」は、
 通常の外交代表が駐在しているかどうかにかかわらず、
 この第4条約の保護を受ける。ここがポイント。
 また、すでに書いたように、「被保護者」以外の保護を定めている部分もあるので、ご注意を。

【要注意事項】

(第5条) 紛争当事国の領域内で、被保護者が紛争当事国の安全に対する有害な活動を個人として行ったという明白な疑いがあること、あるいはそのような活動に従事していることを、その紛争当事国が確認した場合には、その被保護者は、「この条約に基く権利および特権」で「その者のために行使されればその紛争当事国の安全を害するようなもの」を主張できない。
←「明白な疑い」とか「確認」とかは、紛争当事国の判断でいかようにも使われかねないので、ちょっと危ない(↓【頼みの綱】を参照してください)。
 被占領地域内で、被保護者がスパイまたは怠業者(サボタージュを行う者)あるいは占領国の安全に対する有害な活動を個人として行ったという「明白な疑いあり」として抑留された場合、軍事上の絶対的安全が要求するときは、その被保護者は、このジュネーブ第4条約に基く「通信の権利」を失う。
←占領国の判断次第だが、失われるのは、ひとまず「通信の権利」のみ。
 上記2つの場合でも、人道的に待遇されるのは当然。訴追された場合、この条約が定める公平かつ正式の裁判を受ける権利あり。また、紛争当事国または占領国の安全と矛盾しない限り、すみやかにこの条約上の被保護者の権利と特権を完全に与えられる。

(第8条) 被保護者は、この条約が保障する権利を部分的にも全面的にも放棄できない。
←「放棄します」などという念書をとられても、「放棄は無効」と文句を言えます

【頼みの綱】

(第9条) 紛争当事国の利益の保護を任務とする「利益保護国」が、条約の実施状況を監視してくれる場合あり。実例は少ないが。
←フォークランド紛争では、イギリスがスイスを、アルゼンチンがなんとブラジルを「利益保護国」に指名。アルゼンチンが、サッカー界での宿敵ブラジルを指名していたのだ。ビバ、 ラテン・アメリカ!!
(第10条) 赤十字国際委員会その他の公平な人道的団体は、文民の保護や救済のため、紛争当事国の同意を得て人道的活動が行える。ジュネーヴ諸条約の第1追加議定書(第81条)では、これらの人道的活動に紛争当事国が必要な便宜を与え、活動を容易にしなければならない、と定めている。
←人道援助活動を通して、ジュネーヴ諸条約などの実施状況を監視してもらえる。くどいようだが、日本社会が仮想敵国として恐れているらしき中国、北朝鮮、ロシアもジュネーブ条約を批准しているので、ご安心あれ。
(第30条) 被保護者は、利益保護国、赤十字国際委員会、その在留する国の赤十字社(赤新月社、赤のライオン、太陽社)、被保護者に援助を与える団体に要望などを申し立てるための、あらゆる便益を与えられる。
 被保護者を抑留している国または占領国は、利益保護国と赤十字国際委員会の代表による被保護者訪問(第143条)の他に、被保護者に対して精神的援助または物質的救済を与えることを目的とするその他の団体の代表者による訪問を、できる限り容易にしなければならない。
(第39条) 被保護者は、いかなる場合にも、本国、利益保護国、第30条に掲げる救済団体から手当の支給を受けることができる。
(第40条) (紛争当事国が、労働強制時の労働条件や補償に関する規定に違反したとき)被保護者は、第30条に従って苦情申立できる。
(第52条) (被占領地で労務の提供を命じられた場合に)どんな契約、協定または規則があっても、利益保護国の介入を要請するため同国の代表者に申し立てる労働者の権利は、制限できない。
(第76条) (被占領地で法律違反の責任を問われて、あるいは有罪判決を受けて)拘禁中の被保護者は、第143条の規定に従い、利益保護国と赤十字国際委員会の代表の訪問を受ける権利を持つ。また、毎月少なくとも1個の救済小包を受領する権利を持つ。
(第78条) (被占領地で)住居指定の措置のため自己の住居から移転することを要求された被保護者は、第39条の生活支援を受けることができ、その一つとして、本国、利益保護国、第30条に掲げる救済団体から手当の支給を受けることができる。
(第101条) 被抑留者は、抑留当局に対し、抑留条件に関する要請を申し立てる権利を持つ。被抑留者は、抑留条件に関して苦情を申し立てようとする事項に対して利益保護国の代表者の注意を促すため、被抑留者委員会を通じ、あるいは直接に、利益保護国の代表者に申し入れする無制限の権利を持つ。これらの要請と苦情は、直ちに、かつ、変更を加えないで伝えられなければならず、また、苦情に根拠がないと認められた場合でも処罰の理由としてはならない。被抑留者委員会は、利益保護国の代表者に対し、収容所の状態と被抑留者の要求に関して定期的報告をできる。

【待遇】

(第27条) 被保護者は、「どんな事情があっても」、その人格、名誉、家族として持つ権利、信仰と宗教上の実践、風俗、習慣を尊重される権利を持つ。紛争当事国は、被保護者を常に人道的に待遇し、すべての暴行、脅迫、侮辱、公衆の好奇心から保護しなければならない。特に人種、宗教または政治的意見に基く不利な差別をせず、すべての被保護者を平等に待遇しなければならない。ただし、紛争当事国は、被保護者に関して、「戦争の結果必要とされるであろう統制と安全の措置」をとれる。
←「ただし」以下が曲者だが、「統制」や「安全の措置」はあくまで例外。最も厳しくても「住所指定」または「抑留」である(第41条参照。抑留については後述のように人権保護のための規定が多数ある)。しかも、それらの措置がとられる場合でも、「ただし」書き以前の原則は活きている、と解釈すべきだろう。
(第28条) 被保護者の所在を、いわゆる「人間の楯」に利用してはならない。
(第29条) 被保護者が支配地域にいる紛争当事国は、その被保護者の待遇について、個人責任の有無に関係なく、責任を負う。
(第33条) 被保護者は、自分がしていない違反行為のために罰せられることはない。集団に科する罰、脅迫または恐かつによる措置は、すべて禁止。略奪も禁止。被保護者とその財産に対する報復も禁止。

【紛争当事国の領域からの退去】

<退去申請と決定>
(第35条) 紛争中、領域からの退去を希望する被保護者はすべて、その退去がその国の国家的利益に反しない限り、その領域を去る権利を持つ。退去の許否は、正規に定められら手続に従って、できる限りすみやかに決定しなければならない。
 退去を許された被保護者は、その旅行に必要な金銭と、適当な量の個人用品を携帯できる。
 退去を拒否された者は、再審査のためにその国が指定する適当な裁判所または行政庁で、その拒否についてできる限りすみやかに再審査を受ける権利を持つ。
←公正な審査が担保できるか? 基準の明確化と合わせて、人道団体などによるチェック・システムをつくる必要があります、日本の有権者の皆さま!

<退去費用>
(第36条) 前条による出発は、安全、衛生、保健、食糧について満足すべき条件で実施しなければならない。その費用は、被保護者がいた紛争当事国の支配領域を離れる地点から先は目的国が負担。中立国へ退去する場合には、被保護者の国籍国が負担する。
←国籍国の財政状況次第では、当座の退去費用を自己負担しなければならない場合もありうるわけ……。日本のODA予算とかで何とかならんのか、と思うが、いざ戦争となると、予算の重点は政府首脳と軍部首脳(つまり政治・軍事機構)の保護に最優先で流されるわけで、一般日本人にすら十分に配分されない恐れが大きい。やはり戦争、しないのが吉。

【紛争当事国の領域から退去しない被保護者】

<原則>
(第38条) この条約が定める例外(「戦争の結果必要とされる統制と安全の措置」(第27条)と、最も厳しくても「住所指定、抑留」(第41条)など)の他、原則として被保護者には、平時における外国籍者に関する規定が適用され、どんな場合でも、以下の権利がある。
(1) 個人または集団宛に送付された救済品を受領できる。
(2) 関係国の国民が受けると同等の程度まで、医療上の手当、入院治療を受けられる。
(3) 信仰を実践し、同一宗派の聖職者から宗教上の援助を受けられる。
(4) 戦争の危険に特にさらされている地区に居住している場合、関係国の国民に許されると同等の程度まで、その地区からの移転を許される。
(5) 15歳未満の児童、妊産婦、7歳未満の幼児の母は、同様の条件を満たす関係国の国民が受ける有利な待遇と同等な待遇を、亨有する。
←つまり、基本的に内国民待遇、というわけ。

<生活支援>
(第39条) 被保護者の在留する紛争当事国は、戦争の結果収入を得る職業を失った被保護者に対して、有給の職業につく機会を与えられなければならない。その機会は、安全上の考慮と第40条に従うことを条件に、被保護者が在留する国の国民が亨有する機会と同等のものでなければならない。
 紛争当事国が被保護者に対し、自ら生活を維持できなくなるような統適用した場合、特に、安全上の理由により被保護者が適当な条件で有給の職業につくことを妨げた場合、その紛争当事国は、被保護者とその扶養を受ける者の生活を保障しなければならない。
 被保護者は、いかなる場合にも、本国、利益保護国、第30条に掲げる救済団体から手当の支給を受けることができる。
(第41条) 住居指定措置により移転を要求された者に対して生活保障をする場合、住居指定をした国は、できる限りこの条約の第3編第4部「被抑留者の待遇に関する規則」の福祉の基準に従わなければならない。

<労働強制>
(第40条) 被保護者は、在留する紛争当事国の国民と同等の程度以上の労働を、強制されない。
 敵国民である被保護者は、「人間としての食糧、住居、衣服、輸送および健康を確保するために通常必要な労働で軍事作戦の遂行に直接関係がないもの」以外は、強制されない。
 労働を強制された被保護者は、特に賃金、労働時間、衣服、器具、予備的作業訓練、業務上の災害と疾病に対する補償に関し、在留する国の労働者と同一の労働条件と保護の利益を亨有する。
 上記の規定の違反があれば、被保護者は、第30条に従って苦情申立できる。

<住所指定、抑留>
(第41条) 被保護者が権力内にいる国は、第42条と第43条による住居指定または抑留以上に厳しい統制措置をとってはならない。
 住居指定措置で移転させられた者に生活保障をしなければならない場合、住居指定をした国は、できる限り「被抑留者の待遇に関する規則」(この条約の第3編第4部)の福祉基準に従わなければならない。
(第42条) 抑留または住居指定は、その国の安全上絶対に必要な場合に限り、命令できる。
←利益保護国の代表者を通じて自発的に抑留を求める者があって、その者の事情が抑留を必要とする場合、その者を権力内に有する国は抑留しなければならない、という規定もあるが、「利益保護国」があまり使われていない制度だそうなので、トリビア的に知っておく程度でよいだろう。
←「住居指定または抑留」以下の厳しさの措置はとれる、ということだが、第2次世界大戦の例では、警察への定期的出頭、身分証明書の携帯義務付け、などがあったそうだ(『新版 国際人道法 再増補』藤田久一、P156)。……入国管理局への定期出頭と在留資格の更新、外国人登録証の常時携帯義務、これって、日本の戦後、今までずっと続いてきた制度じゃんじゃん。外国籍者は常に敵性国民として監視されているってことかあ!?
←抑留の場合、「被抑留者の待遇に関する規則」(この条約の第3編第4部)に従い、人道上の配慮がなされなければならない。
(第43条) 抑留または住居指定された者は、再審査のためにその国が指定する適当な裁判所または行政庁で、できる限りすみやかに再審査を受ける権利を持つ。抑留または住居指定を継続する場合、その裁判所または行政庁は、事情が許すなら、被保護者にとって有利な変更をするため、定期的に、かつ、少なくとも年2回、審査を行わなければならない。

<亡命者>
(第44条) 締約国は、この条約の統制措置を適用するにあたって、事実上いずれの政府の保護をも亨有していない亡命者を、その者が法律上敵国の国籍を持っているということのみに基いて、敵性外国人として扱ってはならない。

<移送>
(第45条) 被保護者を、この条約の締約国以外の国に移送してはならない。どんな事情があっても、その政治的意見または信仰のために迫害を受けるおそれのある国に、移送してはならない。

<制限的措置の速やかな廃止>
(第46条) 被保護者とその財産に関する制限的措置は、敵対行為の終了後できる限りすみやかに廃止しなければならない。

【第4部 被抑留者の待遇に関する規則】
 抑留措置がとられた場合、あるいは占領地域で刑事責任を問われ拘留・服役する場合、被保護者は収容所に入れられることになる。その収容所での人権保障と人道的待遇のために設けられた規則の数々を列挙したこの第4部は、ジュネーブ第4条約の中で、最も分厚い部分だ。収容所がつくられていないうちは適用されることはないと思うが、一応、概述しておく。

<総則>
(第79条) 紛争当事国は、第41条〔住所指定、抑留〕、第42条〔抑留の理由〕、第43条〔再審査手続〕、占領地での第68条〔刑罰〕と第78条〔安全措置〕の場合以外、被保護者を抑留してはならない。
(第80条) 被抑留者は、完全な「私法上の行為能力」を保持し、かつ、それに伴う権利で「被抑留者としての地位と矛盾しないもの」を行使する。
←「被抑留者としての地位と矛盾しない」限り、商売もできるし賃貸借契約とか委任契約もできるし、結婚や離婚、養子縁組、遺言、相続、遺産分割なんかもでき、民事訴訟を起こすこともできる、というわけだ。
(第81条) 被保護者を抑留する紛争当事国は、抑留された被保護者を、無償で扶養し、その健康状態に応じた医療を提供しなければならない。その費用の支払いに充てることを理由に、被抑留者の手当、俸給、債権額を減額してはならない。
 被抑留者の扶養を受ける者が、生活を維持するための適当な手段を持たない場合、あるいは生計を営むことができない場合、抑留国は、それらの者の生活を支えなければならない。
(第82条) 抑留国は、被抑留者を、できる限りその国籍、言語、習慣に従って収容しなければならない。同一国の国民である被抑留者を、言語が異なるという理由だけで分離してはならない。
 同一家族の構成員、特に親子は、抑留の期間中、収容所の同一場所に居住させなければならない。ただし、作業上または健康上の理由のため、あるいは刑罰または懲罰(117〜126条)のために一時的別居が必要な場合は別。
 被抑留者は、その監護を受けないで放置されている自己の子が自分と一緒に収容されるよう要請できる。
 同一家族の構成員は、できる限り、同一の建物内に居住させなければならず、かつ、それらの者に対しては、他の被抑留者から分離した収容施設と、本来の家庭生活を送るための便益とを与えなければならない。

<管理と紀律>
(第99条) 各収容所を指揮する将校または公務員は、自国の公用語(公用語が2以上あるときは、そのうちの1)で書かれたこの条約のコピーを所持し、かつ、この条約の適用について責任を負わなければならない。
 この条約の本文と、この条約に基いて締結される特別協定の本文は、被抑留者が理解する言語で収容所内部に掲示するか、被抑留者委員会(102条)に所持させなければならない。
 各種の規則、命令、通告、公示は、被抑留者に通知し、かつ、被抑留者が理解する言語で、収容所の内部に掲示しなければならない。
 被抑留者に対して個人的に発する命令と指令も、その被抑留者が理解する言語でしなければならない。
(第100条) 収容所での紀律制度は、人道の原則に合致しなければならず、かつ、被抑留者の健康にとって危険な肉体作業を課す規則や、肉体的または精神的苦痛を伴う規則を含んではならない。入墨や押印、身体へのマーキングによる識別は、禁止。
 長時間にわたる直立と点呼、懲戒のための訓練、軍事的訓練と演習、食糧配給量の減配は、禁止。
(第101条) 被抑留者は、抑留当局に対し、抑留条件に関する要請を申し立てる権利を持つ。
 被抑留者は、抑留条件に関して苦情を申し立てようとする事項に対して利益保護国の代表者の注意を促すため、被抑留者委員会を通じ、あるいは直接に、利益保護国の代表者に申し入れする無制限の権利を持つ。
 これらの要請と苦情は、直ちに、かつ、変更を加えないで伝えられなければならず、また、苦情に根拠がないと認められた場合でも処罰の理由としてはならない。
 被抑留者委員会は、利益保護国の代表者に対し、収容所の状態と被抑留者の要求に関して定期的報告をできる。
(第102条) 抑留国、利益保護国、赤十字国際委員会、被抑留者を援助するその他の団体に対して被抑留者を代表する被抑留者委員会が、すべての収容所で、組織される。その委員は、6カ月ごとに自由な秘密投票で選挙され、選挙された被抑留者は、その選挙について抑留当局の承認を受けた後、その任務に就く。
(第103条) 被抑留者委員会は、被抑留者の肉体的、精神的そして知的福祉のために貢献しなければならない。被抑留者が相互扶助制度を組織すると決定した場合、その組織は、被抑留者委員会の権限に属するものとする。
<抑留施設>
(第83条) 戦争の危険に特にさらされている地区に収容所を設けてはならない。
 抑留国は、敵国に対し、利益保護国の仲介で、収容所の地理的位置に関するすべての有益な情報を提供しなければならない。また、軍事上許される場合はいつでも、収容所は、日中空中から明白に識別できる「IC」という文字で示しておかなければならない。ただし、関係国は、その他の表示の方法についても合意できる。これらの表示を収容所以外に使ってはならない。
(第84条) 被抑留者は、捕虜や他の理由で自由を奪われている者と分離して収容し、かつ、管理される。
←「他の理由で自由を奪われている者」とは、たとえば刑法犯を犯し有罪判決を受けて服役している者などだろう。
(第85条) 抑留国は、抑留開始時点から、被保護者に衛生上と保健上のすべての保障を与え、かつ、気候の厳しさと戦争の影響からの有効な保護を与える建物または区画に収容するため、必要かつ可能なすべての措置をとらなければならない。常設的な収容所は、不健康な地域や気候が被抑留者にとって有害な地域に設けてはならない。被保護者が一時的に抑留されている地域が不健康な地域か、あるいは、その気候がその者の健康に有害な場合、事情が許す限りすみやかに、より適切な収容所に移さなければならない。
 収容所の建物は、完全防湿で、適切な保温と点灯とが、特に日没から消灯時刻までの間、なされなければならない。寝室は、十分な広さを持ち、かつ、良好な換気がなされなければならない。気候、被抑留者の年齢、性別、健康状態を考慮して、被抑留者に適切な寝具と十分な毛布を与えなければならない。
 衛生上の原則に適合する衛生設備を、日夜、被抑留者が使用できるようにしなければならず、かつ、それらの設備は常に清潔な状態に維持しなければならない。被抑留者には、日常の清潔と衣服の洗濯のために十分な水と石けん、必要な設備と便益を与えなければならず、シヤワーまたは浴場を利用させなければならない。また、洗濯と清掃のため必要な時間を与えなければならない。
 例外的かつ一時的措置として、男子と同一の収容所に、家族の構成員でない女子の被抑留者を収容する必要があるときは、その女子の被抑留者のために、分離した寝室と衛生設備を設けなければならない。

<宗教儀式>
(第86条) 抑留国は、被抑留者に、その宗派のいかんを問わず、宗教的儀式を行うのに適切な場所を自由に使用させなければならない。

<売店>
(第87条) すべての収容所には、他の適当な便益を利用できない場合、売店を設置しなければならない。被抑留者が個人の幸福と慰安を増すような食糧品、日用品(石けん、たばこを含む)を現地の市場価格より高くない価額で買うことができるようにするためである。
 売店が得た利益は、各収容所に設けられる福祉基金の口座の貸方に記入し、かつ、その収容所の被抑留者の利益のために管理しなければならない。被抑留者委員会(102条)は、売店と福祉基金の運営を監視する権利を持つ。
 収容所が閉鎖された場合、福祉基金の残額は、同一国籍の被抑留者のための収容所の福祉基金に繰り入れる。そのような収容所が存在しない場合、すべての被抑留者の利益のために管理される中央福祉基金に繰り入れる。全般的解放がなされた場合、前記の利益は、関係国間に反対の協定がない限り、抑留国に残される。
<空襲の避難所>
(第88条) 空襲その他の戦争の危険にさらされているすべての収容所には、必要な保護を確保するために、適切な構造の避難所を適切な数、設置しなければならない。警報があると、被抑留者は、空襲から宿舎を防護するために残存する者以外、できる限りすみやかに避難所に入ることができる。
 住民のためにとる防護措置は、被抑留者にも適用しなければならない。
 収容所では、火災の危険に対する適切なすべての予防措置をとらなければならない。

<食糧>
(第89条) 毎日の食糧配給の量、質、種類は、被抑留者を良好な健康状態に維持し、かつ、栄養不良を防止するのに十分なものでなければならない。被抑留者の食習慣も、考慮しなければならない。
 被抑留者に対して、配給以外の食糧で所持しているものを自分で調理する手段を与えなければならない。飲料水を十分に供給しなければならない。喫煙は、許さなければならない。
 労働する被抑留者に対する食糧の配給は、その労働の種類に応じて、増やさなければならない。
 妊産婦、15歳未満の児童に対する食糧の配給は、その生理的必要に応じて、増やさなければならない。

<衣服>
(第90条) 被抑留者は、抑留されるときに、必要な衣服、履き物、着替の下着を準備するためのすべての便益を与えられ、かつ、その後必要が生じた場合にそれらを入手するためにも、すベての便益を与えられる。被抑留者が、気候に対する十分な衣服を持っておらず入手もできない場合、抑留国は、衣服を無償で与えなければならない。
 抑留国が被抑留者に供給する衣服と、その衣服に付ける外部的マーキングは、侮辱的なものや被抑留者を嘲笑にさらすようなものであってはならない。
 労働する被抑留者に、労働の性質上必要な場合、適切な作業服(保護用の衣服を含む)を支給しなければならない。

<医療>
(第91条) 各収容所には、資格ある医師の指揮の下で被抑留者が必要な治療と適切な食事を受けられる病舎を備えなければならない。伝染病、精神病にかかった患者のために、隔離室を設けなければならない。
 妊産婦、重病の被抑留者、または特別の治療、外科手術、入院を必要とする状態にある被抑留者は、適切な処置をする能力がある施設に収容しなければならず、かつ、一般住民に与えられる治療と同等以上の治療を与えられる。
 被抑留者は、なるべく、自己と同一の国籍の衛生要員によって治療を受ける。
 被抑留者が診察を受けるために医療当局に出頭するのを妨げてはならない。
 治療(被抑留者を良好な健康状態に保つため必要なすべての器具、特に、義歯その他の補装具、めがねの供給を含む)は、被抑留者に無償で提供する。

<身体検査>
(第92条) 被抑留者の身体検査は、少なくとも月1回行わなければならない。検査には、体重の測定、少なくとも年1回のエックス線による検診を含む。その目的は、特に、被抑留者の健康、栄養と清潔の一般的状態を監視し、伝染病(特に結核、マラリア、性病)を検出することである。

<宗教上の義務>
(第93条) 被抑留者は、抑留当局が定める日常の紀律に従うことを条件として、自己の宗教上の義務の履行(自己の宗教の儀式への出席を含む)について完全な自由を持つ。
 抑留された聖職者は、同一の宗派に属する被抑留者に対して自由に自己の聖職を行うことを許される。このため、抑留国は、同一の言語を話し、または同一の宗教に属する被抑留者がいる各種の収容所に、それらの聖職者が衡平に配属されるようにしなければならない。聖職者の数が少ない場合には、抑留国は、それらの聖職者が収容所を巡回するため必要な便益(輸送手段を含む)を与え、かつ、入院中の被抑留者を訪問することを許さなければならない。聖職者は、自己の聖職に関する事項について抑留国の宗教機関と、できる限り、自己の宗派の国際的宗教団体と通信する自由を持つ。その通信は、第107条が定める「通信の割当数」に含めてはならない。ただし、その通信については、第112条(検閲)に従わなければならない。
 被抑留者がその宗派に属する聖職者の援助を受けられない場合、または抑留されたそれらの聖職者の数が少ない場合、その宗派に属する現地の宗教機関は、抑留国との合意により、その被抑留者の宗派に属する聖職者または、宗教的見地から可能なら、類似の宗派に属する聖職者か資格がある非聖職者を指名できる。それらの非聖職者は、自己が引き受ける聖職に対して与えられる便益を受ける。

<娯楽、研究、運動競技>
(第94条) 抑留国は、被抑留者の知的、教育的、娯楽的活動、運動競技を奨励しなければならない。ただし、その活動や競技に参加するかどうかは、被抑留者の自由。抑留国は、特に適切な場所を提供して、それらの活動と競技を行うために、すべての可能な措置をとらなければならない。
 被抑留者が研究を継続し、または新たな研究課題に着手するため、すべての可能な便益を与えなければならない。児童と青年の教育を確保しなければならず、児童と青年が通学することを、学校が収容所の内にあると外にあるとを問わず、許さなければならない。
 被抑留者に、身体の運動、運動競技、戸外競技をする機会を与えなければならない。このため、すべての収容所で十分なオープン・スペースを確保しなければならない。児童と青年のために特別の運動場を確保しなければならない。

<使役>
(第95条) 抑留国は、被抑留者が希望しない限り、その者を労働者として使役してはならない。「抑留されていない被保護者」に強制すれば第40条(労働強制)や第51条(占領時の労働強制)の違反になるような使役、品位を傷つけるあるいは屈辱的な性質の使役は、禁止。
 6週間労働した被抑留者は、8日前に予告すれば、いつでも労働をやめることができる。
 ただし、抑留国が、抑留されている医師、歯科医師その他の衛生要員を、同一の収容所に抑留されている者のために使役する権利や、被抑留者を収容所の管理と維持の労働に使役し、炊事場の労働その他の雑用に当たらせる権利、空襲その他の戦争の危険に対する被抑留者の防護に関連する任務に従事するよう求める権利は、認められる。そうは言っても、ある被抑留者の者の身体にとって不適当だと医務官が認める仕事を、その被抑留者に要求してはならない。
 抑留国は、すべての労働条件、医療、賃金の支払い、使役されるすべての被抑留者が作業上の災害と疾病に対して補償を受けること、について全責任を負う。この労働条件と補償を定める基準は、国内法令と現行の慣習に合致するものでなければならず、同一地方の同一性質の労働に認められる基準より不利であってはならない。賃金は、被抑留者と抑留者の、そして場合によっては、被抑留者の生活を無償で維持し必要な医療を供給すべき他の雇用者との間の特別の合意で、公平に決定する。
 労働条件、作業上の災害と疾病に対する補償の基準は、同一地方の同一性質の労働に適用される基準より不利であってはならない。
(第96条) すべての労働分遣所は、収容所の一部として収容所に従属し、抑留国の権限ある当局と収容所長は、その労働分遣所でのこの条約の遵守に責任を負う。

<個人用品>
(第97条) 被抑留者は、個人用品の保持を許される。被抑留者が所持する金銭、小切手、証券等と有価物は、正規の手続によらねば取り上げられない。取り上げた物に対しては、詳細な受取証を渡さなければならない。
 取り上げた金銭は、第98条に従い、その被抑留者の口座の貸方に記入しなければならない。その金銭は、その所有者が抑留されている地域で施行されている法令が要求するか被抑留者が同意した場合でなければ、他の通貨に両替できない。
 主として個人的価値または感情的価値のみを持つ物品は、取り上げてはならない。
 女子の被抑留者は、女子以外の者が捜索してはならない。
 解放または送還されるとき、被抑留者は、抑留中に取り上げられたすべての物品、金銭その他の有価物を返還される。また、第98条に従って持つ口座の貸方残高を現金で受け取る。ただし、施行中の法令によって抑留国が留置する物品と金額はこの限りでなく、留置されることがあるが、その場合、所有者に詳細な受取証を渡さなければならない。
 被抑留者が所持する家族に関する文書または身分証明書を取り上げるには、受取証を渡さなければならない。被抑留者を身分証明書のない状態に放置してはならず、身分証明書を所持していない被抑留者には特別証明書を発給しなければならない。
 被抑留者は、物品を購入するため、現金または購入券で一定の金額を携帯することができる。

<金銭収入>
(第98条) 被抑留者は、たばこ、化粧用品等の物品を購入するために十分な手当を定期的に支給される。この手当は、口座への記入または購入券という形式で、支払える。
 被抑留者は、自己の本国、利益保護国、被抑留者を援助する団体、自己の家族、から手当を支給され、かつ、抑留国の法令に従い、自己の財産から生ずる所得を受け取れる。被抑留者の本国が支給する手当の額は、被抑留者の種類(虚弱者、病者、妊産婦等)に応じて同一のものでなければならず、また、本国や抑留国が、第27条の禁止する差別(人種、宗教または政治的意見に基づく不利な差別)に基づいて、割り当てたり分配したりしてはならない。
 抑留国は、被抑留者各人のために正規の口座を開かなければならない。本条の手当、賃金、受領した送金、被抑留者から取り上げた金額でその者が抑留されている領域の法令により使用できるものは、その口座の貸方に記入しなければならない。被抑留者は、その家族と自己が扶養する者に送金するため、その領域に施行されている法令と矛盾しないすべての便益を与えられる。被抑留者は、抑留国が定める制限内で、自己の口座から必要な額を引き出せる。被抑留者は、いつでも、自己の口座を調べ、またはそのコピーを得るために、しかるべき便益を与えられる。被抑留者が移送される場合、口座の明細書は、被抑留者に携行させなければならない。

<外部との通信>
(第106条) 被抑留者が抑留された時ただちに、または収容所到着後1週間以内に、あるいは、病気になった場合や他の収容所か病院に移送された場合にも1週間以内に、被抑留者がその家族と中央被保護者情報局(141条)に直接、抑留された事実、アドレス、健康状態を通知する「抑留葉書」(条約付属の型に沿うのが望ましい)を送付できるようにしなければならない。その葉書は、できる限りすみやかに送付され、いかなる形でも遅延があってはならない。
(第107条) 抑留国は、被抑留者が手紙や葉書(条約付属の型に沿うのが望ましい)を送付し、受領することを、許さなければならない。発送する手紙と葉書の数を制限する必要を抑留国が認めた場合でも、毎月手紙2通と葉書4通は許可しなければならない。被抑留者宛の通信が制限されなければならない場合、その制限は、抑留国の要請に基いて、被抑留者の本国のみが命令できる。これらの手紙と葉書は合理的な期間内に運送しなければならず、懲戒を理由に、遅延させまたは留置してはならない。
 家族から長期間連絡のない被抑留者、家族との間で通常の郵便によっては消息を伝え合えない被抑留者、家族から著しく遠い場所にいる被抑留者には、電報の利用を許さなければならない。その料金は、被抑留者が処分できる通貨で支払う。また、緊急と認められる場合にも、同様に電報を利用できる。
 被抑留者の通信は、原則として、その者の言語で書かれなければならない。紛争当事国は、その他の言葉での通信を許可ができる。
←つまり、自己の言語以外での通信を強制してはならない。
(第108条) 抑留国は、被抑留者が、特に、食糧、衣服、医療品、書籍、被抑留者の必要を満たす宗教、教育または娯楽用物品を内容とする個人宛または集団宛の荷物を、郵便その他の経路で受領することを許さなければならない。それらの荷物が送られてきたからと言って、この条約が抑留国に課す被抑留者のための福利厚生の義務は免除されない。
 関係国は、被抑留者による救済品の受領を遅延させてはならない。
 書籍は、衣服または食糧の荷物の中に入れてはならない。
 医療救済品は、原則として、集団宛の荷物として送付しなければならない。
(第110条) 被抑留者のためのすべての救済品は、輸入税、税関手数料その他の課徴金を免除される。
 他の国から被抑留者宛の、あるいは被抑留者から発送の、郵便による物品(小包郵便で発送する救済小包を含む)と送金はすべて、差出国、名宛国、中継国において郵便料金を免除される。
 被抑留者宛の救済品が重量その他の理由で郵便で送付できない場合、その輸送費は、抑留国の管理下の領域においては、抑留国が負担しなければならず、この条約のその他の締約国は、それぞれの領域における輸送費を負担しなければならない。それらの救済品の輸送費用のうちその他のものは、発送人が負担しなければならない。
 締約国は、被抑留者が発信する電報と、被抑留者に宛てられる電報の料金をできる限り低額にするよう努めなければならない。
(第112条) 被抑留者に宛てられた通信と、被抑留者が発送する通信の検閲は、できる限りすみやかに行わなければならない。
 被抑留者に宛てられた荷物の検査は、中の物品を損なうおそれのある条件下で行ってはならない。検査は、名宛人の立会いの下であるいは名宛人が正当に委任した被抑留者の立会いの下で、行わなければならない。被抑留者に対する個人宛または集団宛の荷物の引渡は、検査の困難を理由にして遅延してはならない。
 紛争当事国が命ずる通信の禁止は、軍事的理由によるのであれ政治的理由によるのであれ、一時的なものでなければならず、禁止期間はできる限り短いものでなければならない。
(第116条) 被抑留者は、定期的に、できる限り頻繁に、訪問、特にその近親者の訪問を受けることを許される。緊急の場合、特に、近親者が死亡したとき、または重病のときは、できる限り帰宅を許される。

<法律文書と法律行為、財産管理>
(第113条) 抑留国は、被抑留者に宛てられた、または被抑留者が発送する、遺言状、委任状その他の文書が、利益保護国または中央被保護者情報局(第140条)を通じて、あるいはその他必要な方法で伝達されるように、合理的なすべての便益を提供しなければならない。抑留国は、これらの文書を妥当かつ適法な様式で作成し認証を受けるための便益を、被抑留者に与えなければならない。特に、被抑留者が法律家に相談することを許さなければならない。
(第114条) 抑留国は、被抑留者が、抑留条件と適用される法令に違反しない限り、自身の財産を管理できるように、すべての便益を与えなければならない。抑留国は、このため、緊急の場合において事情が許すときは、被抑留者に収容所からの外出を許可できる。

<訴訟行為>
(第115条) 被抑留者が訴訟当事者になっている場合、抑留国は、その者の要請があったときは、関係裁判所に抑留の事実を通知しなければならない。また、訴訟事件の準備、進行に関し、あるいは判決の執行に関して、その者が抑留されていることを理由に不利益を受けないよう、必要なすべての措置を、法令の範囲内でとらなければならない。

<刑罰と懲戒罰>
(第117条) 被抑留者が抑留されている領域内で施行されている法令は、第117条から第126条に従うことを条件に、抑留中に法律違反をした被抑留者に適用される。
 一般の法律や規則または命令が、被抑留者のある行為を処罰できるとしているが、被抑留者でない者が同一の行為をしても処罰されえないなら、その行為については、懲戒罰のみを科せる。
 被抑留者は、同一の行為または同一の犯罪事実について、重ねて処罰されない。
(第118条) 裁判所または当局は、刑罰の決定にあたって、被告人が抑留国の国民ではないという事実をできる限り考慮しなければならない。裁判所または当局は、被抑留者が訴追された法律違反に関して定める刑罰を自由に減軽でき、最も軽い法定刑よりも軽く科刑できる。
 日光が入らない場所での拘禁と、あらゆる種類の残虐行為は例外なく、禁止。
 懲戒罰または刑罰に服した被抑留者を、他の被抑留者と差別して待遇してはならない(第120条に例外あり)。
(第119条) 被抑留者に対して科せる懲戒罰は、以下のものとする。
(1) 第95条により被抑留者が受領すべき賃金の50%以下の減給、30日以内。
(2) この条約が定める待遇以外に与えられている特権の停止。
(3) 収容所の維持に関連する1日2時間以内の労役。
(4) 拘禁。
 懲戒罰は、非人道的、残虐、または被抑留者の健康を害するものであってはならない。被抑留者の年齢、性別、健康状態を考慮しなければならない。懲戒罰の期間は、複数の紀律違反行為の責任が問われるときでも、最大で連続30日まで。

<大脱走!>
(第120条) 逃走しまたは逃走を企てて再び捕えられた被抑留者には、それが何度目のチャレンジであっても、その行為については懲戒罰のみを科せる。このような被抑留者は、懲戒罰を受けた後も、特別の監視下に置くことができる。その監視は、被抑留者の健康状態を害するものであってはならず、収容所内で行われるものでなければならず、また、この条約によって被抑留者に与えられる保護のいずれをも排除するものであってはならない。
 逃走または逃走の企てを手伝い、またはそそのかした被抑留者には、その行為について懲戒罰のみを科せる。
(第121条) 逃走または逃走の企ては、被抑留者が逃走中に行った法律違反について訴追されたとき、刑を加重する情状にしてはならない。
 紛争当事国は、被抑留者の法律違反について、特に、逃走に関連して行われた行為について、懲戒罰を科すか刑罰を科するかを決定するにあたって、権限ある当局が寛容を示すよう、確保しなければならない。
(第122条) 逃走して捕えられた被抑留者は、権限のある当局にできる限りすみやかに引き渡される。
 紀律違反に対しては、懲戒の決定があるまでの拘禁期間は、最少限度としなければならず、また、14日を超えてはならない。この拘禁期間は、服役期間に算入しなければならない。
 第124条と第125条は、紀律違反に対する懲戒の決定があるまでの間に拘禁されている被抑留者に準用する。
(第124条) 被抑留者を、懲治施設(監獄、懲治所、徒刑場等)に移動して懲戒罰に服させてはならない。
 懲戒罰に服させる場所は、衛生上の要件を満たすものでなければならず、特に、十分な寝具を備えていなければならない。懲戒罰に服する被抑留者が清潔な状態を保てるようにしなければならない。
 懲戒罰に服する女子の被抑留者は、男子の被抑留者から分離した場所に拘禁し、かつ、女子の直接の監視下に置かなければならない。
(第125条) 懲戒罰に服する被抑留者には、1日に少なくとも2時間の運動と、戸外に出ることを、許さなければならない。
 懲戒罰に服する被抑留者が要求すれば、毎日の医学検診の受診を許さなければならない。懲戒罰に服する被抑留者は、必要な治療を受け、必要なら、収容所の病室または病院に移される。
 懲戒罰に服する被抑留者は、読むこと、書くこと、手紙の発送と受領を許さなければならない。ただし、送付されてきた小包と金銭は、処罰が終了するまでの間、留置できる。留置された小包と金銭は、被抑留者委員会に委託しなければならず、被抑留者委員会は、荷物中の傷みやすい物を、病室に引き渡さなければならない。
 懲戒罰に服する被抑留者から、第107条(通信)と第143条(利益保護国と赤十字国際委員会の代表による被保護者訪問)の利益を奪ってはならない。

<被抑留者の移送>
(第127条) 被抑留者の移送は、人道的に行わなければならない。移送は、原則として鉄道その他の輸送手段によって、少なくとも抑留国の軍隊の移駐と同等の条件で行わなければならない。例外的に徒歩で行わなければならない場合、被抑留者の健康状態が適していないなら、移送を行ってはならない。いかなる場合にも、被抑留者を過度に疲労させる移送をしてはならない。
 抑留国は、移送中の被抑留者に、健康維持するために十分な量、質、種類の飲料水と食糧、必要な衣服、適切な宿舎、必要な医療上の手当、を供与しなければならない。抑留国は、移送中の被抑留者の安全確保のため、適切なすべての予防措置をとらなければならない。
 傷病者、虚弱者、妊産婦は、移送がその者の健康にとって極めて有害なとき、移送してはならない。ただし、それらの者の安全のために絶対に移動が必要な場合は、この限りでない。
 戦線が収容所に接近した場合、移送を十分に安全な条件で行えるとき、あるいは被抑留者を現地に留めれば移送した場合より一層大きな危険にさらすことになるときに限り、その収容所の被抑留者を移送できる。
 抑留国は、被抑留者の移送を決定するにあたって、被抑留者自身の利益を考虜しなければならない。特に、それらの者の送還または家庭への復帰を一層困難にするようなことを、してはならない。
(第128条) 移送する場合、抑留国は、その出発について、そして郵便物の新しい宛先について、被抑留者に正式に通知しなければならない。その通知は、被抑留者が荷物を準備し、家族に知らせることができるよう、十分に早く与えなければならない。
 被抑留者に個人用品、受領した手紙と小包を携帯することを許さなければならない。それらの物品の重量は、移送の条件により必要とされるときは制限できるが、1人25キログラム未満に制限してはならない。
 以前の収容所に宛てられた手紙と小包は、遅滞なく被抑留者に転送しなければならない。
 被抑留者の共有物と重量制限で携帯できない荷物の輸送を確保するため、収容所長は、被抑留者委員会と協議して、必要な措置をとらなければならない。

<死亡、遺言書など>
(第129条) 被抑留者の遺言書は、安全に保管するため責任ある当局が受理する。被抑留者が死亡した場合、その者があらかじめ指定していた者に遅滞なく送付しなければならない。
 被抑留者の死亡は、医師が確認し、死因と死亡の状態を記載した死亡証明書を作成しなければならない。
(第131条) 被抑留者の死亡または重大な傷害で、衛兵や他の被抑留者その他の者に起因したもの、あるいは起因した疑いがあるもの、そして原因不明の死亡について、抑留国は、ただちに公の調査を行わなければならない。
 調査によって1人または複数の者が罪を犯したと認められるなら、抑留国は、責任を負うべき者を訴追するために必要なすべての措置をとらなければならない。

<解放(>
(第132条) 抑留国は、抑留する理由がなくなったらただちに、その被抑留者を解放しなければならない。
 紛争当事国は、戦闘行為(敵対行為)の期間中に、特定の種類の被抑留者(特に児童、妊産婦、幼児と児童の母、傷病者、長期間抑留されている被抑留者)の解放、送還、居住地への復帰または中立国での入院を実現するための協定締結に、努めなければならない。
(第133条) 抑留は、戦闘行為(敵対行為)の終了後できる限りすみやかに終了しなければならない。
 紛争当事国の領域内にある被抑留者で、懲戒罰のみを科せる法律違反以外のものについて刑事訴訟手続が進行中の者は、その手続終了まで、そして必要なら刑の執行が終わるまで、拘禁しておくことができる。すでに自由刑の判決を受けている被抑留者も、同様である。
(第134条) 締約国は、戦闘行為(敵対行為)または占領の終了にあたり、すベての被抑留者がその最後の居住地に帰還することを確保し、またはそれらの者の送還を容易にするよう、努めなければならない。
(第135条) 抑留国は、解放された被抑留者が抑留された時に居住していた場所に帰還するための費用を、あるいは、それらの者を旅行中にまたは公海上で拘束したのであれば、その旅行を完了しまたはその出発地点に帰還するための費用を、負担しなければならない。
 抑留国は、抑留前にその国に恒久的な居所を持っていた者に、その領域内での居住を許可しない場合、それらの被抑留者の送還の費用を支払わなければならない。ただし、被抑留者が自己の責任において、または本国政府の命令に従って帰国することを希望する場合、抑留国は、その支配領域を離れる地点からの旅費を支払う必要はない。また、抑留国は、自己の要請に基いて抑留された被抑留者の送還の費用を支払う必要はない。

【占領地域】
 日本の領土のうち住民がいる地域が占領される、なんてことはまずないと思うが、一応、解説しておく。アメリカ様の植民地になってるじゃん、という話は、ひとまず置いておいて。
 なお、「被保護者」以外にも適用されるものがあるので、しっかりとご確認を。

<権利の不可侵>
(第47条) 占領地域にある被保護者は、いかなる場合にもいかなる形でも、この条約の利益を奪われない。

<送還>
(第48条) 占領された地域を領域とする国の国籍を持たない被保護者は、第35条に従うことを条件に、その領域から退去できる。これに関する決定は、同条に基いて占領国が定める手続に従って行わなければならない。

<追放>
(第49条) 占領国は、住民の安全または軍事上の理由のため必要なとき、一定の区域の全部または一部の立退きを強制できるが、物的理由のためやむを得ない場合以外、被保護者を占領地域外に移してはならない。立退きさせられた者は、その地区での戦闘行為(敵対行為)終了後すみやかに各自の家に戻される。
 立退きを強制する占領国は、できる限り、被保護者を受け入れる適当な施設の設置、その移転が衛生、保健、安全、栄養面について満足すべき条件で行われること、家族が離散しないこと、を確保しなければならない。住民の安全または緊急の軍事上の理由のため必要とされる場合以外、戦争の危険に特にさらされている地区に被保護者を抑留してはならない。

<児童>
(第50条) 占領国は、被占領国またはその現地当局の協力の下、児童の監護と教育に充てられるすべての施設のしかるべき運営を容易にしなければならない。
 占領国は、児童の身元の識別と親子関係の登録を容易にするため必要なすベての措置をとらなければならない。占領国は、児童の身分上の地位を変更したり、自国に従属する団体や組織に児童を編入してはならない。
 現地の施設が適当でない場合、占領国は、戦争の結果孤児となった児童や、両親と離別したうえ近親者や友人によって適当な監護を受けることができない児童の扶養と教育が、できる限り、その児童と同一の国籍、言語、宗教の者によって行われるように、その児童の扶養と教育のための措置をとらなければならない。
 占領国は、食糧、医療上の手当と、戦争の影響からの保護に関して、15歳未満の児童、妊産婦、7歳未満の幼児の母のために占領前に採用されていた有利な措置の適用を妨げてはならない。

<志願、労働>
(第51条) 占領国は、被保護者に、自国の軍隊または補助部隊での勤務を強制してはならない。自発的に志願させるための圧迫、宣伝は、禁止。
 占領国は、18歳以下の被保護者を、「占領軍の需要、公益事業または被占領国の住民の給食、住居、衣服、輸送、健康のために必要な労働」に従事させることができるが、それ以外の労働強制は不可。
 労働は、微発された者が所在する占領地域でのみ行わせることができる。皆、できる限り通常時の雇用場所で労働できるようにしなければならない。労働者には公正な賃金を支払わなければならない。労働は、労働者の肉体的・知的能力にふさわしいものでなければならない。被占領国で実施されている法令で労働条件と保護に関するもの、特に賃金、労働時間、衣服、器具、予備的作業訓練、業務上の災害と疾病に対する補償に関するものは、本条の労働に従事する被保護者に適用される。
(第52条) どんな契約、協定または規則があっても、利益保護国の介入を要請するため同国の代表者に申し立てる労働者の権利は制限できない。
 占領国のために労働者を働かせる目的で、占領地域において失業を生じさせるための措置や、労働者の就職機会を制限するための措置は、禁止。

<個人あて救済品>
(第62条) 占領地域にいる被保護者は、緊急の安全上の考慮に従うことを条件として、個人宛の救済品を受領することを許される。

<レジスタンスと刑罰>
(第68条) 「占領国を害する意思」のみをもって、占領軍または占領行政機関の構成員の生命や身体に危害を加えず、重大な集団的危険を生ぜず、しかも、占領軍または占領行政機関の財産やその使用施設に重大な損害を与えない法律違反を行った被保護者は、抑留または単なる拘禁に処す。その抑留または拘禁期間は、その犯罪行為にふさわしいものでなければならない。
 第64条と第65条に従って占領国が公布する刑罰規定は、被保護者がスパイとして行った行為か、占領国の軍事施設に対して行った重大な怠業(サボタージュ)、または1人または複数の者を死に至らしめた故意による法律違反のため有罪とされた場合にのみ、その被保護者に死刑を科せる。ただし、占領開始前に実施されていた被占領地域の法令でそのような犯罪行為に死刑を科せた場合に限る。
 死刑判決は、法律違反のあった時に18歳未満だった被保護者に言い渡してはならない。
(第70条) 被保護者は、占領前または占領の一時的中断の間に行った行為や、それらの期間中に発表した意見のために、占領国によって逮捕されたり、訴追されたり、有罪とされたりしない。ただし、戦争の法規や慣例に違反した場合は、この限りでない。
 戦闘行為(敵対行為)開始前に被占領国の領域内に亡命していた占領国の国民は、戦闘行為(敵対行為)開始後に行った法律違反による場合または戦闘行為(敵対行為)開始前に行った普通法上の法律違反で被占領国の法令によれば平時に犯罪人引渡が行われるものによる場合でなければ、占領国によって逮捕されたり、訴追されたり、有罪とされたり、占領地域から追放されたりしない。
(第76条) 法律違反の責任を問われた被保護者は、被占領国で勾留され、有罪判決を受けた場合は被占領国で刑に服する。
 それらの者は、可能なら、他の被勾留者(法律違反の責を問われているのではない者たち)から隔離しなければならず、食糧と衛生の条件については、良好な健康状態を保つに十分であり、かつ、被占領国の監獄で与えられる条件と同等以上の条件を亨有する。健康状態に応じて必要な医療を受けることができ、また、宗教上の援助を要求し、受ける権利を持つ。
 女子は、分離した場所に拘禁し、かつ、女子の直接の監視の下に置かなければならない。占領国は、未成年者に対する適切で特別な待遇も考慮しなければならない。
 拘禁中の被保護者は、第143条の規定に従い、利益保護国と赤十字国際委員会の代表の訪問を受ける権利を持つ。また、毎月少なくとも1個の救済小包を受領する権利を持つ。

<安全措置>
(第78条) 占領国は、いかなる場合においても、住居指定または抑留以上に厳しい統制措置をとってはならない。
 住居指定または抑留に関する決定は、占領国がこの条約に従って定める正規の手続によって行わなければならない。関係当事者は決定に対して上訴(異議申立)でき、この上訴(異議申立)に対する決定は、まったく遅滞なくなされねばならない。住民指定または抑留の決定は、占領国が設置する権限のある機関によって、定期的に、可能なら6カ月ごとに、再審査される。
 住居指定の措置のため自己の住居から移転することを要求された被保護者は、第39条の生活支援を受けることができる。

【人種、国籍、宗教または政治的意見による不利な差別なく、紛争当事国の住民全体に適用される一般原則】

(第16条) 傷病者、虚弱者、妊産婦は、特別の保護と尊重を受ける。紛争当事国は、軍事上の事情が許す限り、死傷者を捜索し、難船者その他重大な危険にさらされた者を救援しなければならず、さらに、それらの者を略奪や虐待から保護するための措置に便益を与えなければならない。
←外国籍者を後回しにすることは、許されない( 人種、国籍、宗教または政治的意見にかかわらず、国民と同等の扱いが義務づけられている。
(第23条) 締約国は、以下のどれかを恐れる重大な理由がないと認めた場合、「他の締約国(敵国を含む)の文民のみにあてられた医療品、病院用品、宗教上の行事に必要な物品からなる送付品」と、「15歳未満の児童、妊産婦にあてられた不可欠の食糧品、衣服、栄養剤からなる送付品」の自由通過を許可しなければならない。
(a) その送付品の名宛地が変えられるかもという恐れ。
(b) 管理が有効に実施されない恐れ。
(c) 敵国が、その送付品が送られてこなければ自ら供給または生産しなければならない物品の代りに、その送付品を使うことで、軍事的または経済的利益を明らかに得る恐れ。敵国が、その送付品が送られてくることで、それらの物品の生産に必要な原料、役務、設備を使用せずにすみ、軍事的または経済的利益を明らかに得る恐れ。
(第24条) 紛争当事国は、戦争の結果孤児となり、またはその家族から離散した15歳未満の児童が遺棄されないように、そして、そのような児童の生活、信仰の実践、教育が容易になされるように、必要な措置をとらねばならない。それらの児童の教育は、できる限り、文化的伝統の類似する者に任せなければならない。紛争当事国は、12歳未満のすべての児童の身元が名札その他の方法で識別できる措置に努めなければならない。
(第25条) 紛争当事国は、その領域またはその占領地域にあるすべての者がその消息を家族と伝え合えるようにしなければならない。消息の通信は、すみやかに、かつ、不当な遅滞なく送り届けられなければならない。
 紛争当事国は、家族との通信を制限する必要があると認めた場合でも、自由に選択された25の単語からなる標準書式を使用させること、およびその書式による通信の数を毎月1通に制限すること、以上の制限を課せない。
(第26条) 紛争当事国は、戦争のため離散した家族が相互に連絡を回復し、できれば再会しようとする目的で行う捜索を容易にしなければならない。特に、この事業に従事する団体が自国にとって許容し得るものであり、かつ、その団体が自国の安全措置に従うものである限り、その団体の活動を奨励しなければならない。
(第54条) 占領国は、被占領地域の公務員または裁判官が、良心に従い、その職務の遂行を避ける場合にも、その者たちの身分を変更したり、何かの制裁を加えたり、強制的措置や差別的措置をとったりしてはならない。他の理由でなら、公務員をクビにできるけど。
(第55条) 占領国は、利用できるすべての手段を使って、住民の食糧と医療品の供給を確保する義務を負う。
(第56条) 占領国は、利用できるすべての手段を使って、被占領地域の医療施設と病院、医療サービス、公衆の健康と衛生状況を、被占領国とその現地当局との協力の下に、確保し、維持する義務を負う。特に、伝染病と流行病のまん延を防止するために必要な予防措置を実施しなければならない。すべての種類の衛生要員は、その任務の遂行を許される。
(第58条) 占領国は、聖職者に対し、その者と同一の宗派に属する者に宗教上の援助を与えることを、許さなければならない。また、宗教上の要求から必要とされる書籍と物品からなる送付品を受領し、かつ、占領地域でのその送付品の分配を容易にしなければならない。
(第59条) 占領地域の住民の全部または一部に対する物資の供給が不充分な場合、占領国は、その住民のための救済計画に同意し、かつ、その使用できるすべての手段によりその計画の実施を容易にしなければならない。
(第64条〕 被占領国の刑罰法令は、それが占領国の安全を脅かす場合かこの条約の適用を妨げる場合に占領国が廃止または停止しない限り、引き続き効力を持つ。占領地域の裁判所は、その任務を引き続き行わなければならない。なお、占領国は、この条約上の義務を果たし、被占領地域の秩序ある政治を維持し、かつ、占領国、占領軍、占領行政機関の構成員の安全と、その者たちが使用する施設と通信線の安全を確保するのに必要な規定に、占領地域の住民を従わせることができる。

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第3章 外国籍者、在外邦人と戦争/2.外国籍者保護のための条約と在外邦人保護(1)

 日本国籍を持っている読者の皆さま。

 たとえば、自分が外国にいるときに、その国で戦争が始まってしまった。そんな状況を想像してみてほしい。中には面白がる人もいるかも知れないが、たいていの人は、非常に大きな不安に襲われるのではあるまいか。

 戦時にあって、交戦国にいる外国籍文民(とくに敵国籍の文民)ほど、不安な状況に置かれる者もないはずだ。

 とくに、在日外国籍者の場合を思うと、不安を倍加させるような状況が多すぎる。たとえば、平時の日本政府、日本社会が非欧米系外国籍者に向けているさまざまな差別の熾烈さや、入管施設での収容者への仕打ちの数々(「日本のアブグレイブ」と形容されるほどだ)、政府・警察庁や東京都知事がマスメディアと組んで多くの国民の心中に培養してきた「外国人嫌悪」感情。どれもこれも、戦時をいっそう不安にさせる材料ばかりだ。しかも、戦後一貫して日本政府が在日コリアンに向けてきた排除・抑圧の手法と、今でもことあるごとに日本社会の中から吹き出す朝鮮人バッシングなどを想い起こすと、万一、日本が北朝鮮に戦争をしかけでもすれば、在日コリアンに対してどのような弾圧が向けられるか。暗澹たる気持ちになる。
 数少ない希望のひとつが、日本政府が批准している国際人道法と国際人権条約、具体的には、「ジュネーブ第4条約」とジュネーブ諸条約「第1追加議定書」、「市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」(1976年)だ。

 以下に、まず「ジュネーブ第4条約」で「外国籍者」に特に与えられる保護と権利のうち、ICC規程と重ならない部分を、「人種、国籍、宗教または政治的意見による不利な差別なく、紛争当事国の住民全体に適用される一般原則」も含めて、おおざっぱにではあるが、条文をかみ砕きつつ、解説しておく。ジュネーブ諸条約の「重大な違反」のうちICC規程が列挙するものについては、被害者の国籍にかかわらず、行為者処罰と責任者処罰が、そして被害者への補償と賠償命令が可能になるので、本書第1章をご参照いただきたい。続いて、補足的に、ジュネーブ諸条約「第1追加議定書」の「難民と無国籍者」に関する規定と、「市民的および政治的権利に関する国際規約」(1976年)の「国家非常事態でも制限できない人権」に関する規定も、紹介する。

 「外国人には納税とか義務ばかりを教えて、社会保険の利用法とか年金の受取方法など権利に関することは教えない

 そんな悪評ぷんぷんの日本政府は、昨今ただでさえ「単一民族妄想」に取り憑かれたかのように排外的国家主義の道を爆走しており、「ジュネーブ第4条約」に違反した場合の罰則が定められていないのをいいことに、そこに記された外国籍者の権利を告知もせず、ただひたすら人権を蹂躙しようとする……なんてことが、ありえんとは到底断言できない現実があるからだ。

 外国籍の友人や家族を持っている人は、ぜひ、「ジュネーブ第4条約」の保護について、その友人や家族と語り合ってみてほしい。聞いたこともない権利を戦時下の異国で主張するなんてことは、とてつもなく困難に違いないのだから、平時のうちに。

 また、日本人ともおおいに語り合ってみてほしい。
 こういう外国籍者保護の制度があることが日本人の間で知られれば知られるほど、戦時下で、外国籍の人たちの人権が蹂躙される恐れは小さくなるに違いないから。

 今は外国籍の友人や家族がいない人も、どうかぜひ読んでおいてほしい。
 そう遠くない将来、きっと外国籍の友人や同僚ができる日が来るはずだから。
 そして、その友人や家族との絆は、海と空を越えて、遠い異国の人たちとも、つながっている。

※ ちなみにこの条約は、日本人が海外赴任中や海外旅行中に戦乱に巻き込まれたときにも、おおいに使える。おそらく、こっちの方が使用される可能性ははるかに大きいのではあるまいか。
 その意味でも、日本国籍の皆さんも、心して、お読みあれ。

(以下の解説では、防衛庁のウェブサイトにある訳文を参考にした。ただ、同サイトの訳文には、どうも原文と違うっぽい、と感じる部分が多々あったので、適宜、英文を参照しつつ、概説を試みた。外国語を母語とする友人や家族と話をするときは、ウェブなどで、彼・彼女らの母語での正文ないし原文を見つめ、プリントしておくと良いと思う。また、省略した条項も少なくないので、他の日本語訳と見比べるのも一興であろう。風流、風流。)

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第3章 外国籍者、在外邦人と戦争/1.「国民保護法」の憂鬱

 2004年6月、有事法制の最後の最後に、「国民保護法」と呼ばれる法律が成立。同年9月に施行された。

 私ごとで恐縮だが、私の場合、相棒(配偶者)の国籍はブラジルである。また、在日コリアンや日本への留学生、帰国した元留学生、移住労働者とその家族など、外国籍の友人、知人がおおぜいいるし、親戚の中にも、中国や欧米地域で暮らし働いている者が、幾人かいる。国際結婚した者もいる。

 私の周辺に限らずとも、日本社会で暮らす外国籍者の数は、2003年末の統計によれば外国人登録者だけでもすでに200万人近くにのぼっている。「現在のグローバリズムと呼ばれる現象」に対する評価はいろいろあるとしても、天然資源もなく食糧自給率も低く出生率も低下しまくりの日本社会が、今後も「何らかの形でのグローバリズム」の中で生きていくしかないとすれば、グローバルな人の移動にも否応なく関わることになるわけで、日本社会で暮らす外国籍者、外国出身者の数や、日本の人口に対するその割合が、今後ますます大きくなっていくのは確実だ。

 あなたの友人や家族が外国籍、といった状況も、これからますます珍しくなくなっていくだろう。

 そんな時代の行く手を塞ぐかのような、不気味な響きの「国民保護法」……。嗚呼っ!

 「国民保護法」が、「国民保護」とは名ばかりで、結局は「保護」の実効性なんて何もなくって、実は戦争準備と軍事行動とに国民を動員し協力させるのだけが目的の偽善的法律で「看板に偽りあり」じゃんか、というツッコミは、第1章で述べたとおり。

 本章では、「国民保護法」の下での「外国籍者の保護」について解説したかったのだが、条文を見てみると、外国籍者に関する規定は「外国人の安否情報の収集と照会への回答」(第96条)くらいしか、なかった。残念なことに。

 また、第174条(基本的人権の尊重)には、「緊急対処保護措置を実施するに当たっては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない。」とあるが、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利」すなわち「人権」が外国籍者には「制限されたかたちでしか与えられない」というのが、これまでの最高裁判例の悲しい流れである。やはり「国民保護法」は、外国籍者の人権擁護や保護には役立ちそうもない。再び、嗚呼っ!
Fuhen

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第2章 ICCの傘に入って軍備オフ〜国際救助隊・国際人道支援隊を結成せよ!/3.国際救助隊・国際人道支援隊の結成に尽力せよ!

 日本は常設の国際人道支援隊と国際警備部隊、国際警察隊、さらには国際救助隊(第1章「5.ICCの傘に入れば……?」参照)の設立にこそ、イニシアティブを発揮すべきだ。
 間違っても、軍隊派遣の道など、選んではいけない。

 「軍隊なら国旗をつけてうろつけるので国際貢献をアピールできる」

 こんな意見が政界にはあるようだが、本末転倒もはなはだしい。人道支援は、支援する側のためにするのではない。何のための支援か、もう一度考えなおすべきだ。支援を必要としている人たちのためになるのなら、国家の示威などという浅ましくも見苦しいことを、わざわざせずともかまわないではないか?

 「日本も(カネではなく私以外の)血を流すことが必要だ」

 などというネオコン政治家たちの言葉に、惑わされてはいけない。
 資本主義の世界なら、人を出さずに金を出す、それで十分だとは、かつての某漫画家の言い分だが、理にかなっている。ネオコン政治家たちは、日銭を稼ぐのにあくせくしている庶民の苦労をまったくなんと心得ておるのか!

 たとえ上にあげたような組織、機関の設立が今すぐにはできず、当面は「人道危機」に対して、国連平和維持活動(PKO)などで対応するしかないとしても、アジア諸国の人びとから日本の軍事的野心に警戒心を向けられているような現状で、軍隊派遣をこれ以上繰り返すべきではない。今の日本が踏み切ろうとしている軍隊派遣の恒久的合法化など、死の商人と関連官庁たちの利益温存・利益拡大策に他ならないことは、アジア諸国からは見透かされている。そんなものを押し進めることは、ただでさえ乖離してしまっている歴史認識を時とともにさらに激しくかけ離れさせ、永遠に修復のつかない亀裂を、近隣諸国との間に生じさせるおそれがある。

 今はまず、ICC規程を批准し、武力によらない平和構築というメッセージを、東アジア地域に、そして世界全体に向けて、遅ればせながら、発する。
 非常に遅ればせながらではあるが、人間万事塞翁が馬。「武力による国家利益の追求」のためにイラク侵略戦争に加担してしまったことの過ちを正々堂々と認めて、このようなメッセージを発信すれば、「さすがに日本も懲りたか」と、説得力を強める効果がある。

 そして、すでにICC規程を批准している韓国やフィリピン、カンボジア、東ティモール、モンゴルなどと協力して、批准国の東アジア地域での 拡大を図るべきだ。

 同時に、「軍備オフ」を進め、東アジア地域のための国際人命救助隊や国際人道支援隊を、近隣諸国と協力して結成、運営することに、予算と人材を注ぐべきだ。その試みを、上で述べた、「人道危機」に対処する国連組織の設立ともシンクロさせていく。

 こういった構想を推し進めてこそ、日本国憲法がうたい小泉首相(当時)が我田引水して使った「国際社会における名誉ある地位」を得ることができ、将来にわたって世界の人びとを戦禍から守ることもできるのだ。そうではなかろうか? ね!?

(おまけの情報というか、こちらをどうぞ!)
Furyoku

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第2章 ICCの傘に入って軍備オフ〜国際救助隊・国際人道支援隊を結成せよ!/2.「軍隊による国際貢献」論のマヤカシを撃つ!

(その4)
 軍事力を縮小しても日本は安全なのは、わかった。でも、どこかの政治家が言っていたけど、世界のどこかにヒトラーみたいな悪い政治家が出てきて、その地域の人たちを殺戮しはじめたりしたら、助けに行くべきじゃない? そのためには、軍隊が必要じゃない?

 助けるべきだ。人命のために、人間の尊厳のために、あらゆる努力を傾注して、救援に向かうべきだと思う。
 「人道危機」を放置することは、まさに「人道」のために許されないと考えるし、また、「人道危機」なるものが一国のうちにとどまらず、周辺国や果ては世界中を巻き込む悲劇につながった例があるからだ。

 問題は、「人道危機」に介入する主体とその方法だ。
 そういう事態に直面したときに、どこかの国家が指揮する軍隊を、派遣するのが、本当に適切な方法なのだろうか?

 1990年代に入り、コソボでの「人道危機」に対して、NATO諸国が、空爆をする、軍隊を派遣する、という事態があった。
 国連憲章の原則で言えば、「内政不干渉」「自衛の場合以外の、国家による武力不行使」とに明らかに反するケースだ。
 この2つの原則は、20世紀前半の2つの世界大戦を経て確認されたものだ。背景には、国家主権の下にある軍隊がそういう名目で出撃するのを許してしまえば、国家間の新たな紛争の種になりえ、憎悪と暴力の連鎖を生みかねないこと、また、他国への軍事侵攻の口実とするために、「あの国の指導者はこんな残虐行為を続けている」などと宣伝吹聴し実際に派兵する国が出てきかねない、という懸念がある。妥当な原則だと思う。
 だからこそ、コソボ空爆は、「国連の安全保障理事会が正常に機能していなかったので、やむをえずになされた例外的な措置であり、先例とすべき性質のものではない」といった見解(ブルノ・ジンマなど)が出てくるわけだ。(『人道危機と国際介入』「第4章 国際介入の一形態としての暫定的領域管理」山田哲也、広島市立大学平和研究所編)。私もこの見解に賛成だ。

 ただし、「人道危機」に国際社会が介入するのは許されない、と言うのではない。なぜなら、この原則とは別に、国連憲章の目的には、「人権保障を基礎に平和を築く」ことがあり、内戦時の「人道危機」を「平和に対する脅威」としてとらえ、国連憲章第7章に基づく介入をなすべきと考えるからだ。

 もちろん、これはあくまで私個人の見解であって、逆に、そもそも国際連合という枠組み自体が、絶対的な主権を持つ国家同士の紛争解決を主眼に構築されたものなので、冷戦終結後、急激に浮上してきた内戦への人道的介入、という問題に、直接対処するための明確な規定がない、との見解もあるようだ。だが、後者の立場の人たちも、人道介入の必要性を否定しているわけではなく、「国家主権」と「人道介入」との関係をどう調節するかについて、議論が展開されている真っ最中らしい。

 まあ、ややこしい法律論は頭のかたすみにでも置いておいてもらって、本題にもどろう。

 人道介入の主体と方法としては、ICCが動きはじめた今、私は、国際人道支援隊と国際警備部隊、国際警察隊のようなものを設立し活動にあたらせることこそが望ましい、と考えている。

 「人道危機」が起きたとき、まず第1に目指すべきは、「人道危機」から人びとを救うこと。そして第2に、「人道危機」を起こしている者たちの拘束、第3に、「人道危機」をもたらした構造的問題の解決に向かうこと、だ。

 まず、「人道危機」から人びとを救うために何が必要かを考えてみると、(1)「人道危機」を引き起こしている張本人たちの攻撃を、救援対象から遠ざけること、(2)救援対象に必要な物的・人的支援を行うこと、(3)支援活動を行っている人員や支援物資を護衛すること、が基本になろう。

 このうち、通常の軍隊が実行できるのは、(1)と(3)だが、それでさえ、各国軍隊が通常の訓練の中で行っている活動とは、基本的に大きく異なる
 しかも、この(1)と(3)の活動は、「自決の原則」を最大限尊重しつつ行われねばならない
 さらに、人道介入の後に続く「平和創造」「平和定着」のプロセスを考えると、後々の紛争の種を増やさずにすむように、必要最小限の実力行使によって、なされる必要がある、かなり特殊な任務なのだ。

 これを遂行するには、上意下達で破壊と殺傷を使命とする軍隊組織とは違う、別種の組織が必要だろう。臨機応変に、武力行使を極力避けつつ、人的被害を双方に出すことも避け、あくまで、人道支援を必要としている人のために、将来の平和創造プロセスを考慮に入れて、自ら犠牲になることもいとわず、まさに人道に奉仕する組織……。消防隊や消防レスキューを発展させたようなイメージだろうか。

 そもそも各国軍隊は侵略軍の破壊と殲滅を目的として構成されているので、「人道介入」というデリケートな分野には、対処が難しいのだ。そこで、かわりに、常設の国際人道支援隊や国際警備部隊のようなものを設置し、人道介入に特化した訓練・装備を整えていく。

 また、「人道危機」を引き起こした張本人たちは、やがてICCで裁かれなければならない。そこで、「人道危機」が起これば、どのような犯罪が行われたか、調査し、証拠を集めておく必要がある。そういう任務に特化した組織として、ICCの検察局を補助できる情報収集部隊として、国際警察隊を設立する。

 3番目にあげた「構造的問題の解決」は、軍隊はもちろん、以上のような組織の活動でどーこーできるものでもないので、地域社会や国際社会全体が地道に取り組んでいくしかない。
Jindokk

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第2章 ICCの傘に入って軍備オフ〜国際救助隊・国際人道支援隊を結成せよ!/【豆知識11】世界人権宣言が提示する「テロをなくす方法」

 次にあげるのは、「世界人権宣言」(1948年)の前文だが、そこには、人権と人道危機や戦争との関係テロの発生防止に必要なことなど、今あらためて読むと、実に示唆に富むことが書かれている。第2次大戦でさんざん懲りて、狂おしい悲劇からいろいろな教訓を読みとり、これからの時代のために活かそう、後世の人たちのために残そう、と考えた先人たちの思いが、しみじみと伝わってくる。

世界人権宣言 前文
 人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義および平和の基礎を構成するので、
 人権の無視および軽蔑人類の良心を踏みにじった野蛮行為をもたらし、また、人びとが言論および信仰の自由を有し、恐怖と欠乏から解放された世界の到来が人間の最高の願望として表明されたので、
 人間が専制と圧制とに対して最後の手段として反抗に訴えざるを得ないことがないようにするためには、法の支配によって人権を保護することが肝要であるので、(筆者注:ここに、「テロ」防止方法が記されている。加えるなら「構造的暴力を解決するための試みの必要性」だろう)
 諸国民間の友好関係の発展を奨励することが肝要であるので、
 連合国の諸人民は、憲章において、基本的人権、人間の尊厳と価値、男女の同権に関する信念を改めて確認し、かつ、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進することを決意したので、
 加盟国は、国際連合と協力して、人権および基本的自由普遍的な尊重と遵守の促進を達成することを誓約したので、
 これらの権利および自由に関する共通の理解は、この誓約の完全な実現にとって最も重要であるので、
 したがって、ここに、(国連)総会は、
 すべての人民とすべての国民とが達成すべき共通の基準として、この世界人権宣言を公布する。それは、社会のすべての個人およびすべての機関が、この宣言を念頭におきながら、指導および教育によって、これらの権利と自由の尊重を促進させ、ならびに、加盟国自身の住民の間にも、また、加盟国の管轄下にある地域の住民の間にも、それらの普遍的かつ効果的な承認と適用を、国内的および国際的な漸進的措置によって確保するよう努力するためである。」

 赤色部分だけでも読んでね。
Sengen

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第2章 ICCの傘に入って軍備オフ〜国際救助隊・国際人道支援隊を結成せよ!/1.「軍備オフ」への不安に答える(3)

(その3)
 日本本土が安全だとしても、海外にいる日本人を守るためには軍隊が必要じゃないの?

 その理屈でいけば、世界中の国が、異国で自国籍者が何かの事件に巻き込まれるたびに、その国に向けて軍隊を派遣しその国の中で軍事活動を展開することを認めなきゃならなくなると思うが、それでいいのか? 日本にも外国の軍隊が、ガンガンやって来るぞ〜

 そもそも、たとえば在外邦人がどこかの武装勢力や犯罪組織に誘拐されたとしても、その救出のために日本から派遣された 軍隊が何かをできると期待するなど、言っちゃあ悪いが、見当違いもはなはだしい。軍隊はそもそも、人質救出作戦のプロではないし、現地の事情がよくわからないのは、今の日本の在外公館と同レベルだろう。現地の警察に任せるか、警察機構の国際的な協力を通して解決するのが、最も現実的な方策だ。

 どこかの国の内乱に巻き込まれた 日本人救出に、日本の軍隊を派遣すべきか。

 「自己責任」などと冷たいことを言えない性分の私は、思わず「はい」と言いそうになるが、第2次大戦後、内乱に巻き込まれた日本人が自衛隊が来てくれないから海外で酷い目に遭った、などという話を、寡聞にして聞いたことがない(あったら、教えてね!)。

 第2次大戦後、イラク侵略までの間、日本人ジャーナリストや日本のNGOがさしたる敵意に直面することなく海外で活動してこれたのは、「平和憲法」を掲げる日本が海外に軍隊を送ることがなかったからだ。丸腰で来る相手っていうのは、武力に頼ろうとしている連中からは、一目置かれやすいものなのだ(絶対、ではないが)。

 それに、もし世界中の在外邦人を軍隊使って救出だの保護だのするとすれば、それこそ世界中に軍隊を常時派遣しておかねば、どうにもならない。火ダルマ状態の財政赤字にトドメを刺す、とんでもない負担になるぞ。

 そもそも、領事館や大使館が、平時から現地状況に鋭くアンテナを張り巡らせ、現地政府関係者以外の人脈も広く築いておけば、内乱の切迫具合は察知できるし、在留邦人の脱出用航空チケットをあらかじめ押さえておくなど、在留邦人保護の手はずをととのえることもできる。いざ、国外への脱出が必要になった場合には、わざわざ自衛隊機を日本から派遣せずとも、その国や近隣諸国の民間機を利用することもできる。そちらの方が迅速かつ安価な場合がほとんどだろう。電話一本で手配はすむし
Reserv

 また、第3章「外国籍者・在外邦人と戦争」で見るように、「ジュネーブ第4条約」は、内乱時に、滞在している外国籍者の国外脱出を確実にするための措置を、現地政府に課している。現地政府の協力を求めることも十分可能だ。

 だいたい、在外邦人の保護、なんていう大義名分が、あまたの 侵略の口実に使われてきたという歴史を、忘れてはならない。

 9.11以降のアメリカのテロ対策もそうだが、警察機構や文官組織で対処すべき問題に軍隊を持ち出すことは、無用な混乱と戦乱を呼び寄せて、憎悪と暴力の連鎖を生むだけだ。それに、そもそも テロを根絶するには、(1)その背景にある憎悪と、その憎悪を生み出す社会構造とをどうにかするか、あるいは、(2)すべての人間の行動を細かく監視できるシステムを導入するか、しかない。どちらを選択するにしても、それは 軍隊が出てきてどうこうできる問題ではない

 外国で怨みを買うような商売をするから、その用心棒に自衛隊を使いたい、などという発想が、経済界の一部にはあるようだが、そんなものは本末転倒どころかあまりに外道。けっして許されることではない。

 要するに、ICC規程を批准すれば、莫大な軍事予算を使うことなく、せいぜい専守防衛の軽武装さえあれば、在外邦人を危険に陥れることもなく、日本で暮らす人びとの安全も十分に守れる。そして、他の分野、特に教育や福祉に予算を回すことで、社会の活力も暮らしやすさも増すことができる。
 もう一度、言う。第2次大戦後の日本の 高度成長の背景に、憲法9条とアメリカ様の傘の下、軽武装でいられたことがあるのを、思い出してほしい。イラク侵略以降、国際的に孤立を深めるアメリカ様の傘の下から出て、国際法と国際人道法、ICCの傘の下に移る方が、日本国民、日本住民の安全のためになるのだ。

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第2章 ICCの傘に入って軍備オフ〜国際救助隊・国際人道支援隊を結成せよ!/1.「軍備オフ」への不安に答える(2)

(その2)
 占領されても住民の生活を守る仕組みがあることはわかったけど、無人島や無人の原野をめぐる領土紛争はどう? 竹島とか尖閣諸島とか、紛争が起きそうなところ、たくさんあるじゃないか。

 外国の占領を「妨害」するのに必要なだけの警察力があれば十分。

 そもそも、国連加盟国なら、しかも、もし常任理事国入りなんかを狙うつもりがあるのなら、そのような紛争も話し合いの中で解決を図るのが、全力で追求すべき大原則だ。

 かつて近代国家関係がつくられる以前、国境などなかった時代には、また、近代以降の国境がつくられた後でも、尖閣諸島は、琉球と台湾双方の漁民たちが利用していたという。今でもそうかも知れない。
 日常の暮らしの中で培われてきた、このような利用方法は、領土紛争の解決を図るうえで、おおいに参考になる。たとえば、まず、紛争の種になりかねない地域の国際的な(と言っても、せいぜい2国間、3カ国間程度だろう)共有化を行い、次に、資源の分配をどうするか、開発のための負担をどうするか、などを交渉していく、とか。土地の平和的利用こそが、長期的な視点に立てば双方の利益になるのは、間違いないのだから。
 また、ICC規程の「侵略の罪」の定義を確定することも、領土紛争の抑止につなげうるだろう。

 領土を巡る紛争をセンセーショナルに煽りたてて、双方のナショナリズムと敵対意識の炎に油を注ぐのは、どちらの国民にとっても大きな損失だ。交流が妨げられ、うっかりしてると、どっちの社会も戦時体制に組み込まれて自由がまったく奪われていた、なんてことになりかねない。そして、それで喜ぶのは、仕事が増える軍需産業(死の商人)と軍部官僚、外敵をつくって国民の眼を自分たちの失政と無能からそらさせ誤魔化そうとする政治家、官僚たちだけだ。

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