第1章 抑止力としてのICC〜ICCの傘の下へ移動せよ!/4.抑止力としてのICC!/ 21世紀の7不思議にノミネート? ブレア首相の決断
イギリスは、ICC規程を批准している。
にもかかわらず、ブレア首相(当時)は、なにゆえ、アメリカのイラク侵略に、ああまでして付き従ったのか?
「あんな賢そうな人がなぜ!?」
と、ワイドショーのご近所さんインタビューみたいに思わず口走りたくもなるが、おそらくこれは、ちっとも不思議なことではない。「侵略の罪」をICCはまだ裁けないこと(仮に裁けるようになったとしても、安全保障理事会での拒否権があれば「侵略の罪」に関してはどーにでもなる、と高をくくっているのかも。ICC規程第5条2項と、国連憲章第39条、本書【豆知識8】を参照)そして、女王陛下のロイヤル・アーミーは戦争犯罪などするはずがないという、映画の「007シリーズ」を真に受けたかのごとき過信と誤信が、ブレア首相の参戦決断の背景にあった。そう思えるからだ。
ただ、同首相にとっては残念なことに、世界の将来のためには幸運なことに、イギリス軍による捕虜虐待が明るみに出てしまった。ブレア首相の信じたであろう、ロイヤル・アーミーの規律の正しさは、砂上の楼閣、あるいは、もっと素朴に表現すると、単なる気のせいだった。戦争と軍隊の非人間的な本質を、ブレア首相は見誤っていたのではないか。そしてブレア首相は、イギリスの法律家たちによって、ICCに刑事告発されたか、されそうだとか。自ら墓穴を掘った形である。
ブレア首相のような愚かな決断を下し、この地上に戦禍をもたらす人間を再び生み出さぬために、ICCとICC規程の締約国は、「侵略の罪」の明確で実効的な定義を、一刻も早く定めねばならない。ICC規程未批准の日本政府には、そのような忠告をする資格などもちろんありはしないが、幸いなことに、私は日本政府の関係者ではない。言いたいことを言っても、かまうまい。ビバ、自由の身!
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