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第2章 ICCの傘に入って軍備オフ〜国際救助隊・国際人道支援隊を結成せよ!/2.「軍隊による国際貢献」論のマヤカシを撃つ!

(その4)
 軍事力を縮小しても日本は安全なのは、わかった。でも、どこかの政治家が言っていたけど、世界のどこかにヒトラーみたいな悪い政治家が出てきて、その地域の人たちを殺戮しはじめたりしたら、助けに行くべきじゃない? そのためには、軍隊が必要じゃない?

 助けるべきだ。人命のために、人間の尊厳のために、あらゆる努力を傾注して、救援に向かうべきだと思う。
 「人道危機」を放置することは、まさに「人道」のために許されないと考えるし、また、「人道危機」なるものが一国のうちにとどまらず、周辺国や果ては世界中を巻き込む悲劇につながった例があるからだ。

 問題は、「人道危機」に介入する主体とその方法だ。
 そういう事態に直面したときに、どこかの国家が指揮する軍隊を、派遣するのが、本当に適切な方法なのだろうか?

 1990年代に入り、コソボでの「人道危機」に対して、NATO諸国が、空爆をする、軍隊を派遣する、という事態があった。
 国連憲章の原則で言えば、「内政不干渉」「自衛の場合以外の、国家による武力不行使」とに明らかに反するケースだ。
 この2つの原則は、20世紀前半の2つの世界大戦を経て確認されたものだ。背景には、国家主権の下にある軍隊がそういう名目で出撃するのを許してしまえば、国家間の新たな紛争の種になりえ、憎悪と暴力の連鎖を生みかねないこと、また、他国への軍事侵攻の口実とするために、「あの国の指導者はこんな残虐行為を続けている」などと宣伝吹聴し実際に派兵する国が出てきかねない、という懸念がある。妥当な原則だと思う。
 だからこそ、コソボ空爆は、「国連の安全保障理事会が正常に機能していなかったので、やむをえずになされた例外的な措置であり、先例とすべき性質のものではない」といった見解(ブルノ・ジンマなど)が出てくるわけだ。(『人道危機と国際介入』「第4章 国際介入の一形態としての暫定的領域管理」山田哲也、広島市立大学平和研究所編)。私もこの見解に賛成だ。

 ただし、「人道危機」に国際社会が介入するのは許されない、と言うのではない。なぜなら、この原則とは別に、国連憲章の目的には、「人権保障を基礎に平和を築く」ことがあり、内戦時の「人道危機」を「平和に対する脅威」としてとらえ、国連憲章第7章に基づく介入をなすべきと考えるからだ。

 もちろん、これはあくまで私個人の見解であって、逆に、そもそも国際連合という枠組み自体が、絶対的な主権を持つ国家同士の紛争解決を主眼に構築されたものなので、冷戦終結後、急激に浮上してきた内戦への人道的介入、という問題に、直接対処するための明確な規定がない、との見解もあるようだ。だが、後者の立場の人たちも、人道介入の必要性を否定しているわけではなく、「国家主権」と「人道介入」との関係をどう調節するかについて、議論が展開されている真っ最中らしい。

 まあ、ややこしい法律論は頭のかたすみにでも置いておいてもらって、本題にもどろう。

 人道介入の主体と方法としては、ICCが動きはじめた今、私は、国際人道支援隊と国際警備部隊、国際警察隊のようなものを設立し活動にあたらせることこそが望ましい、と考えている。

 「人道危機」が起きたとき、まず第1に目指すべきは、「人道危機」から人びとを救うこと。そして第2に、「人道危機」を起こしている者たちの拘束、第3に、「人道危機」をもたらした構造的問題の解決に向かうこと、だ。

 まず、「人道危機」から人びとを救うために何が必要かを考えてみると、(1)「人道危機」を引き起こしている張本人たちの攻撃を、救援対象から遠ざけること、(2)救援対象に必要な物的・人的支援を行うこと、(3)支援活動を行っている人員や支援物資を護衛すること、が基本になろう。

 このうち、通常の軍隊が実行できるのは、(1)と(3)だが、それでさえ、各国軍隊が通常の訓練の中で行っている活動とは、基本的に大きく異なる
 しかも、この(1)と(3)の活動は、「自決の原則」を最大限尊重しつつ行われねばならない
 さらに、人道介入の後に続く「平和創造」「平和定着」のプロセスを考えると、後々の紛争の種を増やさずにすむように、必要最小限の実力行使によって、なされる必要がある、かなり特殊な任務なのだ。

 これを遂行するには、上意下達で破壊と殺傷を使命とする軍隊組織とは違う、別種の組織が必要だろう。臨機応変に、武力行使を極力避けつつ、人的被害を双方に出すことも避け、あくまで、人道支援を必要としている人のために、将来の平和創造プロセスを考慮に入れて、自ら犠牲になることもいとわず、まさに人道に奉仕する組織……。消防隊や消防レスキューを発展させたようなイメージだろうか。

 そもそも各国軍隊は侵略軍の破壊と殲滅を目的として構成されているので、「人道介入」というデリケートな分野には、対処が難しいのだ。そこで、かわりに、常設の国際人道支援隊や国際警備部隊のようなものを設置し、人道介入に特化した訓練・装備を整えていく。

 また、「人道危機」を引き起こした張本人たちは、やがてICCで裁かれなければならない。そこで、「人道危機」が起これば、どのような犯罪が行われたか、調査し、証拠を集めておく必要がある。そういう任務に特化した組織として、ICCの検察局を補助できる情報収集部隊として、国際警察隊を設立する。

 3番目にあげた「構造的問題の解決」は、軍隊はもちろん、以上のような組織の活動でどーこーできるものでもないので、地域社会や国際社会全体が地道に取り組んでいくしかない。
Jindokk

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受信: 2007年10月10日 (水) 20時04分

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