【お薦め書籍】子どもたちよ、分断と虚飾の罠を越えて進め。『沖縄ラプソディ 〈地方自治の本旨〉を求めて』
2009.2.23.08:00ころ
叙事であって叙情。
事実をていねいに見つめ、それと対峙してきたからこそ、
そして、人をではなくそこにある強固な現実を突き崩して、
子どもたちに未来を渡したいという強い意志があればこそ、
生まれたのであろう、類い稀な書籍のご紹介です。
米軍基地の移転問題という狂おしい現実に対峙することになった/対峙せざるをえなかった/対峙した著者は、その後の展開やそれ以前の歴史の来し方を、丁寧に伝えてくれます。子どもたちに少しでもわかりやすく伝えたいという責任感があるからでしょう。
それにしても、こんな話を子どもたちに伝えざるをえない現状とは……。
ただでさえ絶望的な状況に私などには思えるのですが、著者はあきらめに背を向けて、立ちふさがる壁を揺さぶり突き崩すための新たな出発点とすべく、冷静に一つひとつ、静かに事実を積み上げていきます。
地方の暮らし、そして地方自治、市民自治、住民自治の現場から、
植民者へ、同時に、被・植民者へ。
植民者の側にいる身としては目を塞ぎたくなるような事実が並びます。
しかし、著者の語り口は、それを許してくれません(;<>;)。
ズシリと重たい事実を突きつけつつも、しっかと最後まで届けてくれました。
おそらく、地元・名護、沖縄の人たちにとっても同じなのではと思います。
世のそこかしこに知らず知らずに埋め込み/埋め込まれた罠にとらわれてしまうことの少なくないのが人間というものでありますし、そんな人間存在に向けられたやさしさゆえに、断罪の言葉を向ける相手を、慎重に選んでくれていますから。
熱く冷静な、それでいて柔らかな文体の奥から、著者の決意がじわじわと伝わってきます。そして、深く考えさせられます。
こういう内容でああいう文章を書ける人、滅多にいないんじゃないでしょうか。
『週刊金曜日』も、佐藤優なんか重用してないで、著者の宮城さんとかもっといい人いるだろうにと思うのですが、ふと振り返ると、私のお気に入りの沖縄からの執筆者たち、印象ではありますが、あまり厚遇されてなかった気がします(;<>;)。やっぱ、定期購読すべきじゃなかったのかも(-_-;)。
そんなわけで超お薦めの一冊ですが、内容も少し紹介しておきましょう。
まず、沖縄の米軍基地問題、そして日本と沖縄の関係について、日本と米国の関係について、日本の有権者としては知っておくべき情報が満載のうえ、上述のように、実に読みやすいです。
さらに、副題に「〈地方自治の本旨〉を求めて」とあるように、ことは沖縄の問題、米軍基地の問題に限られない普遍的問題が核に据えられています。
地方自治はまさに民主主義の基本をなすものであって、それが構造的で深刻な問題にさらされていることは、多くの日本人が気づいていることだと思います。
何せ、国と地方の関係についてあれこれ物申すスタイルの自治体首長が人気を集めたりするのが昨今の世相ですから。
ただ、そういう首長たちが、地方自治、住民自治、市民自治、そして究極的には民主主義をどう考えているのか。本書で描かれている沖縄の、名護の置かれてきた状況についても、同様に異を唱えて連帯していくのか、連帯していくとしてどんな形でか。それを尋ねることができれば、即座に把握できるんじゃないか、なんて、意地悪なことを思ってしまいました(-<>-;)。
また、盛り込まれた普遍性あるテーマとは、「地方自治の本旨」に関するものだけではありません。
たとえば、「地球の万人へ」と題された第3部。中でも「名付けの政治 隠蔽と露顕のレトリック」を読んでいて、ちょうど文科省による憲法蹂躙・地方自治蹂躙を見せられたばかりのこともあって、私はどんだけ在日外国人の置かれた状況を想像したことか。
『植民者へ―ポストコロニアリズムという挑発』(野村浩也・編、松籟社)を読んだときもそうでしたが、日本政府が「とるに足らない」とか「煮て食おうが焼いて食おうが勝手」とか見なした相手に向ける言動には、やはり共通性があるのでしょう。
そしてその第3部には、岩国市の話が出てきます。「日米軍事再編に抵抗する「地方自治の本旨」」と題する章で。きっともう、地元以外では忘れられはじめているであろう、あの岩国市が。
(私も「草の根ネットワーク岩国」との縁がなければ、とうに忘れ去っていたでしょう。ヤバイ、ヤバイ(-_-;)。)
著者が対峙している現実は、この国に暮らすすべての人にとって他人事ではありません。
著者が目指している未来は、人が当たり前の暮らしを営んでいける、そんな社会です。そしてその実現は、著者一人で成し遂げられるものでもなく、本書一冊で呼び込めるものでもありません。
今こそ、分断の罠から逃れて、
民主主義を、市民自治・住民自治を、目指してまず一歩でも踏み出すべく。
も一度言います。超お薦めです!
【署名のお願い】
NEW!●愛宕山の米軍住宅化は絶対に許さない!趣意書、署名用紙(集約期限は2009年2月28日、「愛宕山を守る市民連絡協議会」、「草の根ネットワーク岩国」)
●Creation of a Special Tribunal to try Israeli War Criminals(「イスラエル戦争犯罪特別法廷」設置を国連総会に求める署名)
●ガザ封鎖解除のために、日本政府が積極的に働きかけるよう外務大臣に求めるオンライン署名(集約期限は2009年2月28日、アムネスティ・インターナショナル日本、パレスチナ子どものキャンペーン、ピースボート、ユナイテッドピープル株式会社・共同よびかけ)
■Stop US helipad plan in Okinawa to save great nature.
★すべてのアフガニスタン難民に在留資格を(第1次集約期限2009年2月19日、RAFIQ)
◆日本版US-Visitシステムの廃止を要望する国会請願署名、電子署名(集約期限2009年8月31日、国際結婚を考える会、IST請願の会)
◆複数国籍の容認を求める請願署名、電子署名(集約期限2009年8月31日、IST請願の会)
他にもサイドバーにいろいろあります。賛同いただける方は、どうかよろしくお願いしますm(_ _)m
