【書籍紹介】高齢化社会と移民『移民の時代〜フランス人口学者の視点』
2009.3.1.23:00ころ
ともあれ、人口減と言うより「少子高齢化の進展」への対応策を検討する前提として、人口推計などをきちんと分析する必要がありそうです。
これについて、たとえば、公明党が2006年4月に発表した「少子社会トータルプラン」は、2015年までは国内労働力人口の増加や生産性の向上で現状を維持できるが、その後に外国人労働者の導入が大きな政治課題になる、と予測しているのだそうです(「総合調査 人口減少社会の外国人問題」の「外国人政策の変遷と各種提言」)。この推計は、はたしてどこまで当てになるのか。
ただ、諸事多忙な折ですしこの類いの分析をやったことはありませんので(;<>;)、どなたかやってくれるとありがたいというのが、本心だったりします。
?「野党はナチス」?「移民か日本の若者か」?(追記アリ)(2008.8.6)
この問題に関して、遊鬱さんに昨秋教えてもらった本、やっと読めました。
非常に刺激的で、勉強になる一冊です。日本の将来や移民政策を考えるうえで、必読の書籍ではありますまいか。
遊鬱さんの紹介文に私から付け加えるとすれば、
……。
ほとんどないかも……(^^;)。
ですが、自分の頭の整理をかねてアウトラインを復習がてらまとめつつ、また、移民論議に関する若干の情報提供を目指して、以下で紹介してみます。遊鬱さんの紹介文と併せてお読みくださいませ。
同書によると、国連の定義では、少なくとも1年以上滞在している外国人を移民として扱うように指導しているそうです。これに従えば、すでに日本もかなりの移民受入国ですね。
フランスは、他のEU諸国に比べて、出生率が高く、それが移民による人口増だという言説があってフランスでも幅をきかせてきたようなのですが、著者によって、その言説内容は統計的にきっちり否定されています。
そこからは、社会政策によって出生率をある程度は高めることができることが、近隣諸国との比較を通して示唆されるのですが、それに加えて、「かつてのベビーブームのようなことはもう起こりえない、避妊の知識もツールも普及しちゃった今となっては」として、実はそういう対策すら「焼け石に水」でしかないという、これまたクールで論理的な結論が導かれています。
そして、平均余命の伸びとかつてのベビーブームとがもたらした「高齢化」を埋め合わせるために移民に頼ればよいとの言説もこれまた幻想であって、若年層による高齢者層の扶養比の急速な低下を防ぐ方策は、何もない。ただ高齢化に順応した社会システムに変えていくしかない、と……。
同時に著者は、結局、フランスの将来の人口増は、いわゆる「押し付けられた移民」に頼るしかない、とも結論づけます。
国の政策によって「選択された移民」(日本政府が期待する「高度人材」みたいなものです)のために「押し付けられた移民(家族的移民や難民庇護請求権を却下された人たち)」を抑え込む政策を続ければ、フランスの人口は増加期待できない、という分析を、私なりに解釈すれば、移民がいなければ、新たな人の参入(出生を含めて)が極めて少ない社会にフランスはなってしまうということでしょう。
そんな社会を迎えることのコストと、移民をうまく受け入れていくことにかかるコスト。どちらを負担するのか。他国の話ではすまされないものを感じます。
また、著者は、カナダやスイス、スペインとイタリアの移民受入政策についても人口学の観点から分析を行っており、そのあたりも示唆に富みます。
カナダの方式は、「移民を希望する個人の様々な資質をポイント化して、これを合計した結果で判断する選抜試験のようなもの」で、そこに雇用の需給をマッチさせる意図はない。スイスの方式は、移民を選抜しようとするもので、日本の「移民受入1000万人計画」を主張している一派が参考にしている(あるいは参考にできる)ものに見えます。スペインとイタリアの政策やその変化も興味深いですが、それはぜひ書籍に直接あたってください。
(こちらで紹介した「労働」資格の提言、かなり斬新なのかも知れません。ひょっとすると、マジに効果的な突破口になるのかも。)
さらに興味深いのが、平均寿命の延びとそれが生んだ現状に関する論議を、移民に対する「受け入れキャパシティ」という常套文句とともにひんぱんに持ち出される論理を当てはめて検討する試みです。そこから浮かび上がるものは、実にスリリング……。
さらにさらに、フランスにおける移民排斥の動きとそれに対抗する動きなんかもかいま見ることができ(サルコジが大統領になった後に出版された本です)、フランスの人口構成や、国際法と国家主権の対立とか、いろいろ興味深い話が読み取れます。
さあ、皆さん、興味、すっごく湧いてきませんか???
ところで、同書には次のような一節もあります。
1975年の段階で、移民の経済問題に詳しいジョージ・タピノスは、就労移民が家族を呼び寄せることはないと想定することは幻想であると述べていた。
1989年の入管法改定が日系人の来日や家族の呼び寄せにつながることは、当然のように予想されてしかるべきだった、と言えるでしょう。しかるに、その受入れ態勢の貧弱さ、そして今、その日系人たちが置かれている苦境を考えると、やはり「自民党の皆さんに移民受入1000万人なんて言われてもねえ…」と、冷ややかな目線を向けずにいられません。
自民PT「日本型移民国家」を超えてゆけ、真夏の夜の夢!(2008.8.14)
【署名のお願い】
NEW!●Creation of a Special Tribunal to try Israeli War Criminals(「イスラエル戦争犯罪特別法廷」設置を国連総会に求める署名)
●ガザ封鎖解除のために、日本政府が積極的に働きかけるよう外務大臣に求めるオンライン署名(集約期限は2009年2月28日、アムネスティ・インターナショナル日本、パレスチナ子どものキャンペーン、ピースボート、ユナイテッドピープル株式会社・共同よびかけ)
■Stop US helipad plan in Okinawa to save great nature.
★すべてのアフガニスタン難民に在留資格を(第1次集約期限2009年2月19日、RAFIQ)
◆日本版US-Visitシステムの廃止を要望する国会請願署名、電子署名(集約期限2009年8月31日、国際結婚を考える会、IST請願の会)
◆複数国籍の容認を求める請願署名、電子署名(集約期限2009年8月31日、IST請願の会)
他にもサイドバーにいろいろあります。賛同いただける方は、どうかよろしくお願いしますm(_ _)m

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