介護と医療と外国人労働者
2008.3.31.21:00ころ
前回の記事で、フィリピンから介護士が来日するのは難しくなりそうだと書きましたが、インドネシアとのEPA(経済連携協定)は年内にも発効する見込みだそうで、インドネシアから看護士・介護士が来日するのは、もう間もなくのようです。
【参考資料】EPA/FTAをめぐる状況[PDF:432KB](外務省)
有害廃棄物のゴミ捨て場に使われることになるのかもという懸念、フィリピン以外の国ではなかったのかなあ……。
ともあれ、これらのEPAでは、外国人介護士らにも日本人と同等の労働条件が認められることになっているようですが、日本人でさえ介護の現場では、非常に厳しい条件を強いられている、と聞きます。
また、国際結婚などをして日本で暮らしている外国出身者で仕事を求めている人に、介護や看護の仕事への道を開くほうがベターではないか、との議論(当ブログでもちょっとだけ資料を紹介した気がするんですが、どこに行ったか、検索しても出てきません。気のせいだったのかな……)も以前からなされています。
う〜ん……。
これに関して、紹介を忘れていた記事をいくつか、どうぞ。
介護:現場で外国人活躍 背景に人出不足--横浜の特養「よつば苑」 /神奈川(池田知広記者、毎日新聞神奈川版、2008.3.17)
介護の人手不足が深刻化する中、横浜市保土ケ谷区の特別養護老人ホーム「よつば苑」(定員120人)では在留資格を持つフィリピン籍とカンボジア籍の男女計5人が働く。パートや派遣という形だが、同市福祉事業経営者会によると、外国人が5人も働く特養は珍しい。海外から多数の介護福祉士候補者が来日するとされる経済連携協定(EPA)が話題になる中、注目される。
◇日本語読み書きできないネックも
「この仕事、気分的に楽なんですよね。家にいるみたいで」
ヘルパー2級の資格を持つフィリピン籍の永沢ロイダさん(40)はほほ笑み、流動食をすくったスプーンを入所者の口にあてた。来日して11年。日本人男性と結婚し2児をもうけたが、今はシングルマザーだ。派遣社員としてよつば苑に来たが、派遣期間が過ぎても時給が200円下がるのを我慢してパートになった。「せっかく利用者さんと仲良くなったのに、さみしくなったんです」と流ちょうな日本語で話す。
よつば苑の職員は計63人。うち4人はフィリピン籍で、1人はカンボジア籍だ。入所者の女性(75)は「やさしいですよ。こまやかで、よく働いてくれる」。職員の長田栄作さん(23)は「元気でパワーがある。レクリエーションでも僕みたいに控えめに接してしまう所がない」と言う。昨年5月から本格的に採用を始めた碓井義彦施設長(39)は「人材不足が厳しく、将来は外国の労働者に就いてもらうしかない。今から慣れておいた方がいい」と話す。
ネックもある。介護記録の読み書きができないことだ。日本に来て6年になるフィリピン籍の姫野マリアさん(48)は「一番大変だったのは利用者さんの名前を覚えること」と打ち明ける。碓井施設長も「受け入れはあと数人が限度」と言う。
65歳以上の高齢者人口が66万人に上る横浜市では、介護人材不足が深刻化。市は08年度予算案で、海外からの介護人材の就労支援に2500万円をつけ、EPAに基づき30人程度をまとめて受け入れる方針だ。
ただフィリピンとのEPAは、日本で介護福祉士として働くには複数の研修を受けたうえで4年間のうちに日本語による国家試験に合格しなければならないなど、厳しい条件を課す。碓井施設長は「わざわざ英語の通じない国に来るだろうか」と懐疑的だ。
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■ことば
◇経済連携協定(EPA)
国家間で貿易や投資の自由化ルールを定め、規制の撤廃や制度の調和などにより経済交流の強化を図る協定。日本政府は06年9月、フィリピン側の要請を受け、2年間で看護師400人、介護福祉士600人を受け入れる協定を締結。07年8月にはインドネシアとも同人数の看護師、介護福祉士を受け入れる協定を結んだ。
看護・介護の人手確保へ 外国人受け入れなお課題 高い資格基準、狭い門戸 「パートナー」になれるか(酒匂純子記者、西日本新聞朝刊、2008.3.13)
私たちの老後、そばにいてくれる人はだれなのだろう。看護・介護分野での人手不足が懸念される中、日本政府との経済連携協定(EPA)により、インドネシアやフィリピンから看護師と介護福祉士の候補者が年内にも来日する。九州大アジア総合政策センター(福岡市)が主催したシンポジウム「グローバル化する介護と看護」では、私たちはこの現実にどう向き合えばいいのか、意見が交わされた。
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グループホームかけはし(同)では、在日フィリピン人のホームヘルパー3人が働いている。運営会社の梯(かけはし)公子社長は「とても明るくて、利用者やスタッフともうまくやっている。家族やお年寄りを大事にしており、介護の仕事に向いている」と働きぶりに満足している。
3人は、在日外国人向けヘルパー講座を開設しているインターアジア(福岡県小郡市)で、ホームヘルパー2級の資格を取得した。同社は4回の講座を実施、計63人が資格を取ったが、介護の現場で働いているのは6人だけだ。中村政弘社長は「最大の問題は時給が700円前後で、家計の主な収入になり得ないこと」と、介護業界全体の問題を指摘する。
外国人だから、という偏見や抵抗感は、事業に携わり始めた3年前に比べると減ったように感じる。卒業生受け入れを望む施設も出てきた。「風向きは変わってきたが、安く雇えるのかとか、フィリピン人に頼るほど困っていない、などがっかりする発言も多い。彼女たちは対等なパートナーなのに」◆
厚生労働省によると、介護職員は2014年に140万‐160万人(04年には約100万人)必要とされ、人材確保は重要課題だ。看護職員も、例えば今年は需要見通しが供給見通しを3万7100人上回っている。「人を入れる入れないではなく、入れざるを得ないのが日本の現実。両国はお互いの弱い部分を補い合う関係でありたい」。日本フィリピンボランティア協会(東京)の網代正孝会長はそう言い切る。
ただ、EPAが実現してもハードルは高い。国内で実際に働いている介護福祉士は約27万人にとどまる。多くの現場を担っているのはホームヘルパーだが、外国人は介護福祉士の資格が必要だ。EPAは非常に専門的な知識を持った人を対象にしており、ヘルパーまで門戸を広げようという話ではないのだ。
シンポでは人の移動をよりスムーズにするため、「両国間で資格の標準化や相互認証も必要では」との提言もあったが、厚労省担当者は「非常に難しい」と否定した。一方、各国に人材を送り出しているインドネシア政府の担当者は、日本がこうした対策をとらない場合「(介護士たちが)サウジアラビアやオーストラリアに流れてしまうかもしれない」と指摘した。世界各地で高齢化が進んでいる。将来は外国人労働者の奪い合いが起きるのだろうか。
小川全夫・山口県立大大学院健康福祉学研究科教授は「新たな社会が始まっている。どんな考えでこの問題に向き合うのか。われわれの構えが問われている」と語った。●欧米などケア人材不足深刻 東南アが供給源に フィリピンからは50カ国へ
少子高齢化が進む欧米などの先進国や北東アジア、中東では、看護・介護分野での人材不足が深刻な問題になっている。こうした国や地域では「ケアの文化」があるフィリピンやインドネシア、ベトナムなど東南アジアから労働者を受け入れる傾向が強まっている。
主要な送り出し国の1つ、フィリピンは、医療・介護労働者が世界50カ国で働いている。1995‐2006年、看護師の新規受け入れが多かったのはサウジアラビア(約6万8000人)、英国(約1万7000人)、米国(約1万2000人)、UAE(約5300人)、シンガポール(約4200人)など。インドネシアの場合、介護士は香港や台湾、シンガポール、イタリア、看護師はサウジアラビア、クウェート、カタール、オランダなどに渡っている。
高齢化が進んでいる台湾では、外国人の「ケアワーカー」が約16万人に上るという。韓国も雇用許可制度を導入するなど、外国人労働者の合法的な受け入れ体制を整えようとしている。
日本の場合、フィリピン、インドネシアとの間で経済連携協定(EPA)の署名を終え、当初2年間で各国上限1000人(看護400人、介護600人)の受け入れ枠を設定した。3、4年など決められた期間内に看護師、介護福祉士の資格を取得することが就労の前提。雇用の際は「日本人と同等額以上の報酬」などが条件となっている。
続けて、今度は医師不足に関して。
外国人医師の特区認めず 厚労省、現行制度で対応を(2008.3.13、MSN産経ニュース)
厚生労働省は13日までに、過疎地域の医師不足を解消するため、新潟県が提案した外国人医師の医療行為を認める構造改革特区の創設や規制緩和について「現行制度で対応可能」として必要ないとする結論を出し、県に伝えた。
厚労省は、外国人医師の研修を目的として医療行為を認めた臨床修練制度があると指摘。制度を効果的に活用すれば、日本人医師の負担を軽減できるとして、県に外国人医師への支援策の充実を求めている。
しかし県の担当者は、臨床修練制度について、指定病院に限られ、日本の指導医が外国人医師を監督する必要があり、報酬も認められていないなどの問題があると指摘し「医師不足対策にどれほど効果があるかは疑問」としている。
新潟県は昨年11月、日本で留学や医学研修を受けた経験があり、母国で日本の医師と同等の経験がある外国人医師に、日本の医師免許がなくても過疎地域の中核病院で医療行為ができるよう求める提案書を政府に提出した。
新潟県といえば、2年前に、人口減の佐渡島へ外国人移民の永住受入を検討している、とのニュースがありました。
かなり真剣に、新しい時代状況にどう対応してこれからの社会をつくっていくのか、暗中模索、試行錯誤を続けている自治体のようです。こういう地域から、新しい何かが生み出されていくような気がします。そんなわけで、
