2008.2.1.18:00ころ
「日本国民に誇り」93%で過去最高…読売調査(読売新聞、2008.1.24)
Survey: 93% proud to be Japanese(Daily Yomiuri Online、2008.1.25)
英語版と日本語版で、中身は違いますが、同じ世論(?)調査を元にした記事です。
その内容については、
読売、世論調査する。(黙然日記、2008.1.24)
「日本国民に誇り」っていうけど…(タカマサのきまぐれ時評2、2008.1.27)
誇りの中身が空虚になった(非国民通信、2008.1.27)
読売世論調査「日本人」について(白頭の革命精神@ネタ切れ人民共和国統合不定期更新日記、2008.1.29)
などがすでにいろいろツッコミを入れてくれています。
本日は「非国民通信」さんのコメント欄で知った、記事には出ていない情報について考えてみました。
★
調査方法は下記のようなものだったそうで、調査項目の中に、なかなかびっくりさせてくれるものがありました。
「年間連続調査・日本人 (1)国家観」 2008年1月調査(面接方式)(読売新聞社)
▽調査日:2008年1月12-13日
対象者:全国有権者3,000人(250地点、層化二段無作為抽出法)
方法:個別訪問面接聴取法、回収:1,780人(59.3%)*
Q17(32)あなたは、「日本人は、他の国の国民に比べて、すぐれた素質を持っている」と思いますか、そうは思いませんか。
答え 1.そう思う 69.6 2.そうは思わない 24.6 3.DK.NA 5.8
この設問を裏から読むと、
あなたは、「外国人は、日本国の国民に比べて、素質が劣っている」と思いますか、そうは思いませんか。
答え 1.そう思う 69.6 2.そうは思わない 24.6 3.DK.NA 5.8
となりますよね〜。聞く方も聞く方だし、「そう思う」と答える方も
たいがいにしろよな(-_-:)、って感じです。
素質って「持って生まれた性質」「将来あるものになるのに必要な能力や性質」(大辞林 第二版(三省堂))を指すもの、だそうです。
では、この設問では「どんな素質」「何の素質」のことを問い、答えてるんでしょうか。
「持って生まれた性質」で例を挙げてみると、
気の長さ? 気の短さ? 繊細さ? 図太さ? 勇敢さ? 臆病さ? 慎重さ? フットワークの軽さ?
どっちが優れているかなんて状況次第だというのが、世の現実でしょう。
続いて身体的な特徴を考えてみると、たとえば、
身長が高い、低い、体重が重い、軽い、目が一重・二重?
これらも、どっちが優れているか劣っているかなんて、言えたものではないでしょう。
では、「将来あるものになるのに必要な能力や性質」は?
優れたサッカー選手になる素質? 売れっ子漫画家になる素質? 面の皮の厚い政治家や公務員になる素質? 読売新聞の読者になる素質?
どれもこれも国籍なんかはまったく無関係で人それぞれ、なんじゃないでしょうか。普通に考えて。
ところが、世界最大の発行部数を誇る「読売新聞社」が、こんな設問のある世論調査をしてしまうあたりに、今の日本社会の恥部が見え隠れする気がします。記者やデスクも同感だったのか、英語版の記事はもちろん、日本語版でも、この部分を紹介していません。
「それなりの見識が編集部にあったんだあ」と、生暖かい目でほめてあげるべき……なのかも。
だって、ナベツネの読売だから!(『ギリギリ科学少女ふぉるしぃ』風に)
★
ひょっとすると、「日本人」というのが「全体としての日本人」というように、個人とは別次元で考えられた設問かも……なんて考えてもみましたが、そういう場合、「素質」とは言わないですよね。
それに、たとえ「全体としての日本人」なる抽象的な存在が仮に設定できるとしても、それが「全体としての外国人あるいは○○人」より「本来的に」優れているかどうかなんて、「個人としての日本人一人ひとり」の場合と同様、やはり何に関してかでずいぶん違ってくるでしょうし、もしそういうあたりを無視してかまわないというのなら、それは発想がどことなく「選民思想的」で、非常に不健全な気がします。ちょっと、ナチスっぽいですよ、と。
まさか天下の読売新聞社さんなので、そんなことはない、はずだ、と……期待したいのですが。
★
属性をもって人を判断することの無茶、危険性なんて、は今さら言うまでもないことだと思います。
なにせ、SMAPの「世界に一つだけの花」が大ヒットした日本社会ですから、人の多様性への理解、人の多様性を尊重することの重要性は、多くの人が気づいているんだと思いますので。
しかし、国籍やら国民やらが出て来たとたん、なんでこんな回答結果が出てしまうのか。
「あんまり馬鹿な設問なので、嘘を答えてやった」なんていう人ばかりだと楽しいんですが、さすがにそれはないでしょうねえ……。
人を属性で判断しようとする姿勢は、レイシズムや民族主義、国家主義への道と地続きです。そして、レイシズムや民族主義、国家主義が生む愚劣な差別意識が、歴史の中でどれほどの惨劇を招いてきたことか。
「世界に一つだけの花」が歌い上げた「多様性への理解」「多様性を尊重する精神」が、国籍などという枠を飛び越え、人を見るときの普遍的な姿勢につながっていくことを、切に願います。
【関連記事】
自民党の限界と内閣府「人権擁護に関する世論調査」(2007.8.29)
【コメント返答(2)】文化の「無常」を受け止め、共生のための新たな社会変革を(2006.11.29)
おまけ
こんな設問ではなくって、
日本国内で開花しやすい個人の素質、開花しにくい個人の素質には、どのようなものがあると考えますか?
なんていう設問だったら、意義深いものになったんじゃないかなあ……なあんて、思いますが、
どんなもんでしょ? 読売さん???
←レイシズムや民族主義、国家主義に、うさキック!
←「多様性」が尊重される世界へ向けて、うさSMAP!
←節分もうすぐ、春ももうすぐ!?