河野洋平・太郎父子、塩崎恭久&石原伸晃、議会制民主主義の破壊(入管法改定案に関する国会会議録より)
2006.11.16.18:10ころ
自民党の中川幹事長は、役員連絡会のあとの記者会見で、焦点となっている教育基本法の改正案をめぐり、野党側が採決には応じられないとしていることについて「審議は尽くされており、少数政党の横暴は許されない」と述べ、野党側の対応を厳しく批判しました。(NHKニュース、2006.11.14)
議会制民主主義の国において、多数派の横暴により少数派の人権が侵害・抑圧されるおそれは常に存在します。
ですので、人権保障を旨とする立憲民主主義を標榜する国の政府・与党としては、そのあたりに十二分に配慮した議会運営をするのが原則であり、政府・与党として則るべき「規範」です。
今の自民党そして公明党に、そんな「規範意識」などかけらもないことが、昨日は、衆院委員会での単独採決に現れてしまいました。
河野洋平議長は単独採決について「円満ではなかったが運営に瑕疵(かし)があったとは思わない」との見解を示した。これを受け、与党は野党が欠席しても16日の衆院本会議で可決する方針。17日には参院本会議で教育基本法特別委員会設置を議決し、法案の趣旨説明や質疑を行う方向だ。(教育基本法改正案を単独採決 衆院特別委、朝日新聞、gooニュース、2006.11.16)
そして本日、野党欠席のまま、衆院本会議で可決されたそうです。
委員会での審議時間さえたまれば、どんな審議がなされていたかなんて、関係ないっていうわけです。
いやはや。今春の入管法改定案審議でも見られた国会の現実ですが、これで議会制民主主義だなんて、ほんとうに言えるんでしょうか。
さて、今春の入管法改定に関する国会審議において、議会制民主主義はどのように殺害されたか、その手口の一つを今日は紹介します。
本日紹介するのは、
「質問にまっすぐ答えず、自己の主張を延々と語ることで時間をつぶす」という手法です。
(「審議の前提となる重要な情報を隠して野党議員に教えない」という手法については、またいずれ。)
杉浦正健法務大臣(当時)、河野太郎法務副大臣(当時)、塩崎外務副大臣(当時。現在は内閣官房長官)、三浦入管局長は、この手法をさんざん使いまくり、討論を通じて法律を練り上げていくという議会制民主主義の原則を、殺戮していきました。卒塔婆を立てていきました。そして、「申し合わせたが時間が切れた」として審議打ち切り、採決に持ち込みました。
その全部を紹介すると、トンデモない分量になってしまいますので、今日は、河野太郎氏による殺戮現場の一部、そして現・内閣官房長官および法務委員会委員長(当時)の登場する部分の一部を、私がまとめている資料の中から紹介したいと思います。読みにくい点はご容赦ください。
河野太郎議員は、その一般受けする発言のためか、その将来に期待を抱いている人も少なくないようですが、今回の会議録から見えてくるのは、議会制民主主義とはまったく相容れない政治姿勢ばかりです。小泉・前首相の亜流のポピュリストだと断ぜざるを得ません。皆さま、くれぐれもご用心を。
◆河野太郎議員(1)
(3月22日、衆院法務委員会)石関貴史議員(民主党:公式サイト)は、杉浦法務大臣という「壊れたテープレコーダー」を前に、質問をさらに詳細なものとして、繰り返さざるを得なかった。
「(入国審査時に採取した外国人の生体情報を)滞在中は当然保有をするというのも、これは私はとても当然ではないと思いますので、テロの未然防止ということであれば、入国審査が終わった段階で消去することも十分考えられることでありますから(【3月17日:発言番号113、119】漆原議員も同様の意見)、これはとても当然というふうには受け入れられません。/繰り返しになりますけれども、テロの未然防止のためには、こういう情報を外国人の方も提供して、それでしようがないよ、いつまで保有されちゃうかわからないけれども、いや、テロの未然防止だ、こういう治安を守るためには、いつまでこういう大変な指紋ですとか顔とかそういう情報がデータベース化をされて保管される、わからないんだけれども、しようがないよ、それでお国のために協力しましょうというふうに、国民の皆さんや入国をされる外国人の方が今の説明で納得をされると思われますか」(038)と問う石関議員。
これに対して、河野副大臣がしゃしゃり出て、しかし質問にまっすぐ答えることはなく、意味不明の粗雑な持論をまたもや展開する。
「同じ人間が違う旅券を使って日本に入国を繰り返すということは多々起きております。残念ながら、今の入管の職員が非常に努力をしておりますが、それでも今、退去強制がかかる8人に1人はそうしたリピーターであるのが厳然たる事実でございます。/また、アメリカは同様のシステムを導入しておりますが、2004年、2005年、2006年と、確実にアメリカを訪問される外国人の数はふえております。むしろ、このテロが横行する、テロがばっこする時代にあって、確実にテロリストをストップするシステムがあるということは、その国にむしろ人を引きつけるということになると思っておりますし、先般来日されました国際移住機関のマッキンリー事務局長との意見交換でも、当然にそれは人間の生存期間は保有されるべきだろうという御意見でありました。/そういうことを考えれば、来日中は当然に保有すべきだと思いますし、帰国後も必要な期間は保有するべきだと私は考えております」(039)。この河野副大臣の答弁にも、重大な問題がある。
(1) まず「退去強制にかかる者の8人に1人がリピーター」だったという切り出しについて、その意味不明さと悪質さを厳しく断罪せざるをえない。1996年以前のある時点からの退去強制者の指紋データと顔画像データは入管当局が約80万件保有しており【3月17日:発言番号105】、入国申請者の指紋と入国審査時に照合することで、リピーターの入国は拒否できる。過去の退去強制者以外の指紋データを審査終了後も保管しつづけることが「リピーター対策」に役立つというような論理関係はないのである。にもかかわらず、ここで「8人に1人がリピーター」というデータを持ち出したのは、「不法入国」というもののイメージの悪さを利用して、政府が企図する生体情報長期保存もやむをえない、とのムードを法務委員会内で強める意図があったのであろう。一種の「目くらまし」である。
(2) ちなみに、この「8人に1人がリピーター」というデータは、この後も繰り返し河野副大臣の口からまるで「壊れたテープレコーダー」あるいは「馬鹿の一つ覚え」のように繰り返されることになる。「たしかに「8人に1人がリピーター」と言われると、とてつもなく大きな数のリピーターが日本国内に入り込んでいるかに思えるが、実数で見ると、2005年に退去強制された外国人5万7100人余りのうちの13%に当たる7479人が、退去強制手続の中で調べるうちに、過去に退去強制手続を受けたことがある、いわゆるリピーターとわかった、というに過ぎない【3月17日:発言番号025】。1年間に指紋採取されることになる外国人が直近でも約600万人から700万人と予想されているが、そのわずか0.1%程度である。そして、そのうちどれほどのリピーターが「出入国管理及び難民認定法」違反以外に「治安悪化」につながる刑法犯などを犯していたのかを語らぬままに治安対策の一環として「リピーター対策」を論じるのは、危険である。しかも、今回の法改定案のように、テロリストと不法滞在者(非正規滞在者あるいは未認可滞在者)を同一に扱うような政策は、常軌を逸している。
(3) 次に、「確実にテロリストをストップするシステム」だという認識の甘さである。本当にテロを実行する気があれば、テロリストないしそのグループは、ブラックリストに未掲載の人間を日本へ送り込んでくるだろう(このことは、後に国民新党の亀井郁夫議員(公式サイト。2010年選挙で改選)が指摘する【5月9日:発言番号162】)。確実にテロリストをストップするのに必要なのは、テロリストを生む背景を解消することだ。「テロとの戦い」などと嘘偽りの大義名分を掲げて世界各地で殺戮や人権侵害を繰り返す国を支援しつづける間は、日本が「テロの対象」から外れることはありえない。
さらに以下の問題点を、石関議員がその場で指摘した。「目くらまし」で相手の思考を混乱させ、意味不明の言辞を振り回す河野副大臣を前に踏みとどまれたのは、地方議会議員としての経験が生きていたからではあるまいか。
「アメリカの入国者がふえたとかなんとかというのは、それはいろいろな要因があるんでしょうから、これを入れたから激減したとか、そういうふうに簡単に言えるものではないんだと思います。それに、今の御説明を伺っていますと、だれだれが言っているとか、御自身の希望するところはわかりますけれども、これで私は、とても国民の皆さんや外国の入国を希望される方々が、そうですかということではないというふうに思います」(040)。
◆河野太郎議員(2)
(3月22日、衆院法務委員会)しかし、河野副大臣からは入国時の照合のほかに、取得した生体情報を「70年から80年保存したい」との発言があったし【3月17日:発言番号029】、しかもそのような保存をなすことについては配付資料でも法案の趣旨説明でもまったく触れられていないのである。
平岡秀夫議員(民主党:公式サイト)がその予算計画に納得できないのは当然で、
「その(年間)700万件の情報をストックして、何年間か知りませんけれども、河野副大臣の言葉によれば、70年間、約5億人のデータをどう使うのかということがここに示されないで、そのための費用が示されないで、この法案は審議できない。大臣、どうですか」(090)と呼びかけた。すると、しゃしゃり出てきたのが河野副大臣である。そして相も変わらず質問にはまっすぐ答えず、自説のみを主張する。
「最初から申し上げておりますように、スペックが決まらなければ正確な概算の費用は出ません。/700万人の来日者の指紋をきちっと把握して、別なパスポートで入ってくるような人間は、しっかりと次からの来日時に排除できるような、あるいはきちっと口頭審理ができるような、そういうシステムを組んでいるつもりであります」(091)。筆者の学生時代には、この手の発言を繰り返す人物を「タコ」と呼んだものだが、河野副大臣はまさにその「タコ」の称号にふさわしい人物である。
平岡議員は、おそらくは声を荒げて、問い直した。
「そのための予算がどこに示されているのかというのを聞いているんですよ。そのための予算がなければ質問できない」(092)。実にまっとうな主張だが、杉浦法務大臣も、やはりピントをズラした回答をする。
「このシステムと言いますか、やり方は、法律を成立させていただいて、施行後1年半に実施するという内容になっておりますので、今年度予算にはもちろん入っておりません」(093)。平岡議員は、それでも耐えた。堪忍袋の緒を切らすことなく、踏ん張って、問い直した。
「そんなことは聞かなくたってわかりますよ。70億円だって入っていないのは、私もよく知っていますよ。/私は、1年間700万件集まるそういう個人識別情報、これをどう利用するのかについて、どのようなシステムになるのか、そのために費用はどれだけかかるかということが示されなければ、予算が示されなければこの法案は審議できないと言っているんですよ。示してください」(094)。しかし、河野副大臣は相も変わらず、ピントをズラした回答を繰り返す。
「ここでお示ししているシステムは、来日された際に指紋を提供いただいて、その指紋をどういう形で照合するのかというシステムについてお示しをしているわけであります。その指紋情報を保存するシステムにつきましては、今大変にコストダウンが早い世の中になっておりますので、どれだけの予算を確保することができるかによって、当然にその容量は変わってまいります。/先ほど、最長で70年ないし80年指紋を保存したいというふうに申し上げておりますが、70年ないし80年というのは、16歳で指紋を提供いただいた方が、生きて、平均寿命でその程度の指紋をいただけるんだろうと。最長の理論値をしっかり確保できるかどうかは、保存する装置の費用その他を勘案しなければ、当然にできないわけであります」(095)。読んでいても腹立たしくなる答弁の連続だが、それでもこの河野副大臣の答弁からは、貴重な情報が読み取れる。
「どれだけの予算を確保することができるかによって、当然にその容量は変わってまいります」ということは、今後、技術が進歩して指紋データなど生体情報の保存コストが低下していけば、その保存期間はそれに合わせてどんどん伸びていく、ということだ。「最長の理論値をしっかり確保できる」ときが来るのはそう遠くないはずであり、そこから考えると、政府は河野副大臣がうっかりもらしたかに見える「70年ないし80年」という期間にわたって保存することを、暗黙の前提として法案を作成していると推察するのが合理的だ。さて、またしてもピント外れの悪質な答弁をされた平岡議員は、まだ粘って質問を続ける。
「700万件を保存するだけの費用を聞いているんじゃないんですよ。700万件、何年間か保存して、それを照合していく、その照合するための費用もかかるわけですよ。そのものについて何も情報が提供されていない。我々は、この法案を実行するためにどれだけの予算がかかるのかというのをちゃんと示せと言って、出てきたのがこれですよ。/だから、我々は、そんな全貌がわからないような状態でこの法案を審議できない(【5月16日:発言番号028以下】参照)。大臣、どうですか。審議できない」(096)。この質問を平岡議員は、【3月22日:発言番号033】から入国審査時のブラックリストとの照合以外に用途があると確信したうえで行っているのだが、これに対して、三浦入管局長は、
「今委員御指摘の、毎年の700万人程度の入国者の指紋情報、これについては、蓄積方法はいろいろあるんだろうと思います。要するに、データベースにため込むわけでございますが、我々が今考えておりますのは、そういった膨大な数の指紋情報に対して、入国審査の段階で一々当てていても、時間がかかって、そんなことでは到底入国審査はできないわけでありますので、それは考えておりません。あくまで、ここに掲げさせていただいたのは、ブラックリストに当てる。/先回の法務委員会でも警察の方から御説明がありましたが、いわゆるデュモンというテロリストが日本に過去何回も出入りしておった。最初に日本に来た段階……(平岡委員「そんなことは聞いていない。時間稼ぎしないでください」と呼ぶ)時間稼ぎではありません。聞いてください。/それで、そういった、後から照合をする必要がある場合には、多少時間がかかってもそれは構わない場合が多いわけでございますので、後日、問題が発覚したときに照合をする作業というのはこのシステムを利用してできるわけでございますので、私どもは、そういう照合作業も含めた上で、この70億程度の予算でできるというふうに試算をしておるところであります」(097)。かくして三浦入管局長も、法案説明用の配付資料に書かれていない生体情報利用方法が予定されていることを、明言せざるを得なかったのである。
◆河野太郎議員(3)
(3月22日、衆院法務委員会)だが、相手は河野副大臣である。まともに答えが返ってくるなど、期待するのがおかしかった。
「大体、人間の平均寿命が7、80歳ということを考えますと、16歳で指紋を提供された方の平均余命は7、80年ということに論理的になると思います」(129)。平岡議員は、怒りもあらわに、問い直した。
「質問に答えないこの態度は、本当に許しがたいね。あなたは、7、80年保有したいというふうに考えておりますという答



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