在留許可求め、東京入管前でデモ/「治安悪化説に異論」(東京新聞インタビュー)
2006.9.24.22:30ころ
1)
在留許可求め、東京入管前でデモ(TBS HEADLIES、2006.9.24)映像あります。
日本で生まれた子どもを持つオーバーステイの外国人らが在留特別許可を求めて、24日、東京入国管理局でデモを行いました。 このデモには、様々な事情から日本でオーバーステイになった5ヶ国の外国人ら100人が参加しました。 彼らは港区の東京入管前で、日本で子供が生まれていることなどを考慮に入れて、日本政府に対し、人道的に滞在が許される在留特別許可を出すよう求めました。 また、中には家族が入管に収容されている人の姿も見られ、建物の外からマイクを使って母国語でメッセージを送るとともに、家族の仮放免を入管側に訴えました。 現在、日本にはこうした外国人が22万人いますが、東京入国管理局に対するデモはこれが初めてのことだということです。
「不法滞在」になってしまった人たちとその家族らが、今春成立した改定入管法で直面する問題の一端が、外国人の2007年問題シリーズ(西京入国管理局、2006.7.9〜)で紹介されています。
「テロリスト」や「犯罪者」と「不法滞在者」とをいっしょくたに取り扱う改定入管法、そして現政権の考え方、やり方には、激しく強い疑問を禁じ得ません。
『外国籍住民との共生にむけて—NGOからの政策提言』(移住労働者と連帯する全国ネットワーク編、現代人文社)が提示したような、現行の「出入国管理計画」にそった流れとはまったく違う視点から生み出される抜本的な改革提言・政策こそが、今、必要なのだと思います。
2)
久保大・元東京都治安対策担当部長へのインタビューが、東京新聞に掲載されたようです。
治安悪化説に異論(加古陽治記者、東京新聞「核心」、2006.9.25)
(2007.3.13追記。東京新聞のサイトからはもう記事が消えています。冬枯れの街さんでどうぞ!)
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不法滞在は大罪ですよ。
投稿: クライムハンター | 2006年9月28日 (木) 00時11分
多文化・多民族・多国籍というのは抽象的で分かり難いと思います。
5族協和というと戦前を思い出す方もおられるとは思いますが、何も戦前を恥じる必要はないと思います。
昭和19年以降の米軍の空襲がひどかったですけどね。
先ずは、日本人・朝鮮人・漢人・満州人・モンゴル人あたりから始めるのはどうでしょうか。
1度失敗しましたが、次回は成功するかもしれませんよ。
やみくもに民主主義とか自由とか人権に拘る必要はありませんよ。
投稿: 金 国鎮 | 2006年9月28日 (木) 00時28分
クライムハンターさん、コメントありがとうございます。
「不法滞在は大罪」と考えるのはどういった理由からかを教えていただければ、私も、そしてこのブログをのぞいてくれている方々も、いろいろ考えるきっかけになると思います。このブログで私が主張していることと正反対の考えですので。
まず、
不法滞在は、何に対しての罪なのか? 誰に対しての罪なのか?
そして、「罪」ではなく、なぜ「大罪」なのか?
(まさか「滞在」にひっかけてる、ってことはないですよね)
そのあたりを、もしよかったら、教えてください。
投稿: 仲@ukiuki | 2006年9月28日 (木) 01時06分
金 国鎮さん、コメントありがとうございます。
「多文化・多民族・多国籍」が抽象的でわかりがたいというのは、たしかに「五族協和」と比べればそうかも知れません。
でも、今の日本社会は、戦前の満州よりもはるかに多民族化・多文化化・多国籍化が進んでいるので、なんとかしてその状況を表せる言葉がないかと、巷間よく使われている「多文化」「多民族」に、「多国籍」を加えてつくったのが本ブログのタイトルです。異国籍カップルの間に生まれたダブル国籍の子どもたちも、今、この社会で暮らしているのですし。無国籍の子どももいます。
それに、日本社会の「多文化」「多民族」「多国籍」化は、好むと好まざるとにかかわらず、どんどん進行していくものだと思います。
そんなわけで、「多文化・多民族・多国籍社会」は別に私が目指してる理想というのではなく、今、ここにある現実を示した言葉(のつもり)なのです。目指すべき理想としての意義が感じられる「五族協和」とは、ちょっと次元が違う気がします。
目標を語るのならよく使われる「共生」よりも「協和」の方がふさわしいとか、もっと別の言葉の方がいい、ということはあるかも知れませんが、私には、適切な目的を指し示す言葉がまだ見つかっていません。
あと、民主主義とか自由とか人権は、それこそが平和の礎だという世界人権宣言なんかの思想に、かなり説得力を感じちゃってるので、こだわらないようにするのは、ちょっとむずかしいかなあ……。
※http://ukiuki.way-nifty.com/war/2006/07/icc11_19d0.html
(『戦争の抑え方☆軍備オフ ICCでつくる戦争のない世界』、【豆知識11】世界人権宣言が提示する「テロをなくす方法」)
クライムハンターさんのコメントに続き、刺激的で、思索のきっかけを与えてくれるコメント、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
投稿: 仲@ukiuki | 2006年9月28日 (木) 01時33分
http://academy4.2ch.net/test/read.cgi/jurisp/1130076695/
ヒマだったら読んでみては。
投稿: | 2006年9月28日 (木) 16時23分
名無しさん(20060928162340)、情報ありがとうございます。
ご紹介の「☆時代遅れな国籍法の改正案☆」というスレッド、知りませんでした。
さすが、2ちゃんねる。間口が広いですね。
提示されている改正案の3条1号(?)にある「日本国民採用試験」という言い回しに思わずふいてしまいましたが、出生地主義の採用、養子の場合の条件緩和、重国籍を禁止していない点などに、私としては賛同できます。
けっこう長いスレなので、ヒマを見つけて、ぼちぼち読んでみます。情報提供、感謝です!
投稿: 仲@ukiuki | 2006年9月28日 (木) 23時20分
仲@ukiuki様
>不法滞在は、何に対しての罪なのか? 誰に対しての罪なのか?
読んで字のごとく、不法に滞在している人達ですよ・・!ハァァァ
あなたは、どこぞの国に行ってオーバースティして在留許可申請してご覧なさい。即刻強制送還ものですよ。そんなこと出来もしないで、日本に不法滞在している人達をどう救済するのですか?甘やかしすぎ・・・。
法治国家である日本に対しての罪です。
投稿: 一般市民 | 2006年9月30日 (土) 14時18分
こんにちは。TBありがとうございます。
どうも日本は「鎖国」したいようなかんじですね。遊鬱さんところにもコメント入れさせていただきましたが刑務所の外国人の犯罪の実態について浜井浩一さんが論文をかかれておりますご一読されてみるといかがでしょうか。
2005年1月26日(水) 読売新聞
ベトナム難民の妻と三人の子供がおり、生活費は妻のパートなどで賄う。パソコンプリンターのインクなどを万引きし、二年の懲役刑を受けた男性は「多くの人に迷惑をかけた。子供のために早く病気を治して働きたい。在留資格を認めてほしい」と訴えている。
これに対し、法務省入国管理局は「法律上、国外退去の方針に変わりはない。ベトナム政府には強制送還に応じるよう交渉していく」としている。
同省OBの浜井浩一・龍谷大法学部教授の話「ベトナム難民は、言葉の壁が厚くて単純作業に就く人がほとんど。景気の影響を受けやすく、不況になるとぎりぎりの生活を余儀なくされる。それが生活必需品の万引きなどにつながっており、難民への対応を再検討する必要がある」
〈仮放免〉
退去強制(国外退去)令か収容令が出された人を収容せず、あるいは身柄拘束を一時的に解く人道上の措置。逃亡の恐れがなく、病気療養が必要な場合や通学中の児童生徒の場合などに認められる。行動範囲が限定されるほか、毎月一回の入国管理局への出頭が義務付けられている。退去強制令を受けた人の仮放免は例外的。
■景気の影響で軽微な「万引き」で外国人が「2年」もの懲役を受けていること、凶悪犯罪者があふれてる刑務所の実態などはどこにもないことを指摘されています。
投稿: 安原 | 2006年9月30日 (土) 20時47分
「一般市民」さん、コメントありがとうございます。
そうですね。「一般市民」さんの書いておられるような感覚が、まさに一般の市民の人たちに広く根づいている(あるいは、根づいてきた)から、「不法滞在は治安悪化の温床だ」などという言説もまた広まってきたのだと思います。「不法滞在」という言葉の響きもかなり悪いですし。もし「非正規滞在」といった言葉が広まっていれば、今の状況もなかったのではと思います。「外国人犯罪」も同様です。「日本人犯罪」という言葉が何の疑問もなく使われる世界を想像してもらえれば、その異常性は明らかでしょう。
そして、おっしゃるとおり、「不法滞在」は日本という国家が定めた罪、日本という国に対する罪です(ご存知のように、入管法違反であって、刑法犯ではなく、行政犯です)。
ですので、官僚機構がその違反をなくそうとするのは、まあわかりますが、そのまさに官僚的、というより、今や警察的な意識に多くの国民が乗っかっていくような状況って、これまた異様に思えます。また、危険だと思います。
東京新聞のインタビューで久保大さんが「行政の役割」を語っていましたが、ああいう「行政のプロ」としての意識が、「警察的な意識」に塗り替えられてしまうと、きわめて息苦しい社会になっていくと思います。
また、「不法滞在」が入管法違反という行政犯であれば、時代の流れ、社会の変遷にともなって、今現在の「不法滞在者」がアムネスティを受ける、正規の在留資格を獲得することも、あながち無理な話ではありません。日本政府も、在留特別許可はアムネスティの一種だと主張し、行ってきたわけですし。
「どこぞの国へ行ってオーバーステイして……ご覧なさい」との提案については、今のところまだ日本は先進国の仲間に入っておりますし、個人的にはブログも展開できる程度に経済面にもどうにかなっているので、その必要性を感じていません。
そういう意味では、この日本で暮らせる私たちこそ甘やかされてるのかも知れませんね……。う〜ん、なんておそろしい気分にさせてくれるんですか……、「一般国民」さんは。
前にこのブログでも書いたことですが、世界経済のグローバル化が進んだ結果、現在の入管法がもはや社会状況に適合していないために、そして、日本の在留資格制度が厳しすぎるために、「不法滞在」が生じてしまう。
そういった側面を見落とすと、単に弱い立場に陥っている人を強い立場にある側がバッシングするだけに終わってしまうのではないでしょうか。「美しい国」にはほど遠い姿だと思います。
投稿: 仲@ukiuki | 2006年10月 1日 (日) 21時40分
安原さん、コメント&情報ありがとうございます。
まあ、今さら鎖国も無理でしょうが、鎖国を欲する心情が広まれば広まるほど、この社会で平穏に生きている非正規滞在の人たちを今以上に苦しめていくのは必至です。だからこそそう遠くない将来、大規模なアムネスティが実施される時が来るんじゃないかと思っています。
浜井浩一さんの論文って、遊鬱さんとこのコメント欄で見つけられませんでした(涙)。
ウェブで検索してみたのですが、『犯罪社会学研究29号』に掲載されているという「日本の治安悪化神話はいかに作られたか——治安悪化の実態と背景要因(モラル・パニックを超えて)」でしょうか?
う〜ん、何だか違う気がします……。刑務所っていう文字すらないし……。
投稿: 仲@ukiuki | 2006年10月 1日 (日) 21時52分
こんばんわ。
>今や警察的な意識に多くの国民が乗っかっていくような状況って、これまた異様に思えます。
異様です。
「過剰収容の本当の意味」という02年の論文です。『犯罪社会学研究29号』の論文は治安悪化を実証でひっくり返してる論文ですので、こちらもおすすめですが。
投稿: 安原 | 2006年10月 1日 (日) 22時05分
安原さん、重ね重ねありがとうございます。
論文、探してみます!
今後ともよろしくお願いします!!
投稿: 仲@ukiuki | 2006年10月 1日 (日) 22時39分
グローバル化グローバル化とみなさんはおしゃいますが、国家及びこの国の文化を守る為にも国家単位は必要です。また日本国以外の人が、来日を希望する場合は正規の手続きによっておいでください。
>日本で子供が生まれていることなどを考慮に入れて、日本政府に対し、人道的に滞在が許される在留特別許可を出すよう求めました。
不法滞在の方が、このような事で在留許可申請するなんてナンセンスです。東京入管前でこのようなデモが出来るなんて、ほんと日本はお人好しすぎ・・。
「俺は不法滞在者だ何が悪い子供も生まれてるんだから在留許可をくれ」
これは筋が通らないでしょ。
投稿: 一般市民 | 2006年10月 2日 (月) 13時08分
仲@ukiuki さま
こんにちは。いえいえそんな。
大きな視点で見れば、日本は少子高齢化、大学の存続や産業面からも外国人の方と共生していく方法論をもうちょっと真剣に考えるべきだと思います。だいたい日本のなかで閉じてて、生活できる国なわけじゃないのですから。
私はオーストラリアで多文化教育を勉強しましたが世界でも希少な“留学生の権利を守る国家法”があり、小学生のころから「わたしたちはアジアの一国でもある」ということを教えていました。“留学生の権利を守る国家法”があること「わたしたちは多様な人種と多様な世界を生きていくんだ、外国人に優しいんだ」ということが誇りに思う人が多く、非常にラクな毎日を送っておりました(そもそもはたしか国土の割に人口が少ないという国防の意味と産業発展のために受け入れはじめたんですけどね)。
当時は香港返還やバルト三国の紛争で多くの移民を受け入れていて
放課後は英語の補習授業でいろんな年代のいろんな国の人がいっしょに集まって勉強してました。社会保障が充実してましたので、当時失業率11%くらいでしたけど治安よかったですけどね。
今は豪州も保守反動してる面も多々あるんですがだけど、日本よりはマシです。日本が外国人に対して非常に不寛容である社会であるのは確かだし「日本だけなんで移民を受け入れん!」とそのうち、アメリカさまから国際協力せよ、っていわれたらグウともいえないんじゃないかしら。
人に言われる前に「差別」という文脈だけではなく現実的に考えたほうがいいんじゃないかと思います。
ちょっと前ですが、拉致被害者の厚遇に比べて、中国残留孤児で日本へ帰国した人への補填がまるでないこと(ようするに生活保護だけ 好きで帰ってきたんでしょっていうロジックなのよね)を、ドイツのメディアの人が指摘してました。なんでなんでひどすきない??って。
投稿: 安原 | 2006年10月 2日 (月) 18時24分
一般市民さま
上の記事で「仮放免」のことを書きましたが、読みました?なんで「筋」とおらないの?もう一度書いておきます。法治国家ですよ、日本は。
〈仮放免〉
退去強制(国外退去)令か収容令が出された人を収容せず、あるいは身柄拘束を一時的に解く人道上の措置。逃亡の恐れがなく、病気療養が必要な場合や通学中の児童生徒の場合などに認められる。行動範囲が限定されるほか、毎月一回の入国管理局への出頭が義務付けられている。退去強制令を受けた人の仮放免は例外的。
↑の内容わかって「国家及びこの国の文化を守る為」って大げさなこといってます?
投稿: 安原 | 2006年10月 2日 (月) 18時43分
「一般市民」さん、こんにちは。
「仮放免」について安原さんも触れておられますが、「在留特別許可」は入管法で定められた制度的救済措置であって、超法規的措置ではありません。ですから、その適用を求めることがナンセンスだとすれば、日本は法治国家ですらないことになってしまいます。
まあ、おそらく「一般市民」さんは、そんな意図でコメントしているのではなく、もっと感情面からの問題提起をされたいのではないかと推察します。
ただ、そうだと考えた場合にちょっと気になるのは、「一般市民」と名乗っておられるにしては、どうも日本の国家というか行政機構というか、その類いの何かに、「一般市民」さんが自分を仮託しすぎてる感があることです。
>来日を希望する場合は正規の手続きによっておいでください。
と書いてるあたりなど。立憲民主主義国の一般市民って、そこまで国家に自分を仮託していいものかなあと、不安を覚えます。
私も何も、グローバル化の時代には国家は不要だ、などといってるわけではありません。物や資金が国境を越えて駆け巡り、人の移動も世界規模に大きくなったグローバル化の時代であればこそ、新たな国家像が必要ではないかと考えているのです。
私がイメージするのは、「一般市民」さんがおっしゃる「国家およびこの国の文化を守る為」の国家ではなく、前に「人として!(「もうひとつの日本は可能だ! 人間尊重の多文化・多民族・多国籍社会へ!」より)」というエントリーで書いた、「そこで暮らす人のための国家」です。
「国家を守る」といっても、その国家とは、現行憲法下では主権者である私たちがつくっていくものでありますし、その一方で、場合によっては、国民自体の利益を害することもしかねない強大な権力機構でもあります。
ですから、無条件に「国家を守る」という言説には危険を覚えます。むしろ、理想とする国家をつくろうと不断に努力することの方が大切だと思います。
「この国の文化を守る」というのも、「この国の文化」が何を指すかで、またややこしい話になってきます。
「相身互い」とか「困ったときはお互いさま」とか「三代住めば江戸っ子だ」とか、「杓子定規な官僚文化」とはまったく違った、もっと寛容な部分も、日本の文化の中にはあったはずです。
最近あちこちで話題になっているらしき「伝統の発明」なんて話もからんできます。伝統文化だと思ってたものが、実は近代国家形成の過程で発明されたものでしかなかった、という。(『日本の文化ナショナリズム』(鈴木貞美・著、平凡社新書)が手頃でおすすめです。)
>「俺は不法滞在者だ何が悪い子供も生まれてるんだから在留許可をくれ」 >これは筋が通らないでしょ。
そんな言い方をされたらムッとするのはたしかでしょうが、かなり悪意に過ぎる伝言ゲームではないですか? そういう発言、そういう物言いを、実際に聞いたことがあるのでしょうか?
まあ、それでも私なら、子どもがいてこの社会で育っている時点で、許可やむなし、と考えます。
子どもに罪はないわけですし、子どもの最大の利益と、家族の統合の実現を図って。これについては子ども権利条約も賛成してくれるでしょうけど、この手の寛容さも日本の文化の中にあったのではないでしょうか。子どもの守り神としての地蔵信仰とか、根っこでつながってる気がします。
投稿: 仲@ukiuki | 2006年10月 3日 (火) 00時58分
安原さん、こんにちは。
フォローとコメント、ありがとうございます。
多文化主義の本場の一つで、多文化教育を勉強してこられたんですか! うらやましいなあ。
日本では今、大学の存続もあちこちで危険水域に突入しつつあるとの噂をよく耳にします。
そこで留学生誘致に活路を見出そうとするところも少なくないようですが、積極的に受け入れておいて、実は教育環境や教員の指導力が十分でなかった、などという悲惨な話があちこちで増えていくのではないかと、非常に不安です。
ぼくの相方が日本に留学してきてた関係で、留学生のこの国での苦労は、いろいろ聞かされていますので。相方のも、友人たちのも。
それを考えると、すごいですね、オーストラリアの「留学生の権利を守る国家法」って! そういう法律があれば、日本で自殺なんてしないですんだ留学生や馬鹿げた犯罪にかかわらずにすんだ留学生たちも、少なからずいたでしょうに……。
今、日弁連の大会を外国人の人権を守る基本法をつくろうという動きが始まっています(http://www.g-jinkenho.net/)。(外国人労働者の受け入れを議論する前に、まずこの手の法律の制定を議論すべきだろうと考え、いい動きだなあと思っていたのですが、何たる不覚。留学生のための特別法には思い至りませんでした。
たしかに留学生はまた特殊な立場・状況にあるので、オーストラリアにならって、留学生のための特別法をつくるのも意義があるかも知れませんね。
せっかく日本に来てくれた留学生には、しっかり学んで、良い印象を持って帰国してもらいたいですし。
>人に言われる前に「差別」という文脈だけではなく現実的に考えたほうがいいんじゃないかと思います。
そのとおりだと思います。この世界の中で、どんな立ち位置を選ぶのが最も現実的で合理的なのか。そうした観点からも冷静な議論が必要です。
安原さんの書かれているように、世界情勢次第では、靖国神社の遊就館の問題みたいにいきなりアメリカさまに指摘される、なんてこともありえるわけです。
思えば、日本が「人身売買受け入れ大国」だという話も、アメリカさまから指摘されて、日本政府は大慌てになったのでした。それでようやく法改正に動き出し、実現した、と。
残留孤児(中国帰国者)の状況が拉致被害者の厚遇に比べてひどすぎるっていうこの恥ずかしすぎる事実も、いずれドイツ、ヨーロッパ経由でアメリカさまから指摘されるかも知れませんね。
>「わたしたちは多様な人種と多様な世界を生きていくんだ、外国人に優しいんだ」ということを誇りに思う人が多く、
素敵です。そんな社会をつくっていきたいと、心から思います。
投稿: 仲@ukiuki | 2006年10月 3日 (火) 14時28分
こんばんわ。
私がオーストラリアにいたときは、ほんと良い時期だったとは思うんですけど、たまたまホームステイしてたお宅が、ティーチャーズユニオン(日本でいう教組)のトップのうちでして(それも女性)、そこの娘さんはインドネシアの方と結婚して、だんなさんが主夫というかなりエッジの効いた家族でした。
豪州はアメリカほど、ルーディな差別語はないんですが一度だけ、駅で高校生に「虫けら、日本人」みたいなこといわれて私も単純に疲れてたときで、なんか学校でワンワン泣いてしまったことがあるんですよ(あのころ私も若かった)。
そしたら、翌日、その高校の校長先生がほんと飛んできて謝罪にきました。私「別に差別だーゆるさーん、クレームだー」とかいってませんよ。単純に疲れたのもあって、なんか先生たちに心配かけちゃったなこんなことで泣くなんて、とか反省してたんです。ま、高校生がふざけてただけだろうと。でもそのとき同僚の先生がどういう制服だったの?聞いてたので答えた覚えはあるんですけどそれで高校にクレームいれたんでしょうね。人権意識がぜんぜん違うと思いました。
校長先生は私の目をまっすぐ見て
「わたしたちはアジア、オセアニアの1国である(当時、環太平洋教育と現地ではいってました)という教育をしているのに、ほんとうに恥ずかしいことだ。申し訳ありません」と。かえって恐縮のうえ、感激しまして(このへんが日本人なんですけど 笑)、放課後、学校を解放して移民のための英語教育の教室とかやってたんですけど、そういうのに参加させてもらったり、逆にそこで、日本の文化がらみの授業をやってくれないかといわれて「折り紙」教えたりと、お小遣い稼ぎにはなったし(笑)かなり楽しい毎日を過ごさせてもらいました。
投稿: 安原 | 2006年10月 4日 (水) 01時12分
安原さん、こんにちは。
ちっとも嬉しくない衝突(と言っても、安原さんが一方的にぶつけられた「もらい事故」)から、新たなつながりをつくっていける、オーストラリアの多文化主義の底力が実感できるエピソードですね。
涙あり、喜びありの、すごく刺激的で素敵な体験をされたようで、非常にうらやましいです。
私は留学したことないですし。
日本へ来た留学生の様子は、私の知る限り、どんな指導教官、どんな研究室に当たるか、そしてどんな日本人の友人に巡り会えるかで、大違いのようです。
日本の学校へ通う南米系の子どもたちもおんなじで、個々の先生にはいろいろがんばってサポートしてくれる人がいるのですが、やはり個人努力だけでは限界があって、結局、学校で嫌な思いをして不就学になっていく、さらにはまだ15歳にもなっていないのに工場で働きはじめる。そんなケースが少なくありません。
安原さんの一連のコメントを読んでいて、オーストラリアの白豪主義がどういう議論を経て多文化主義(マルチカルチュラリズム)に変わっていったのか、すごく気になってきました。その過程って、今の日本の状況を考えていくうえで、思い切り参考になるんではないかと。
で、「白豪主義」でググってみて、「マルチカルチュラリズム(多文化主義)のゆくえ—オーストラリアの人種・エスニック問題をめぐって」(杉本 修平)という1998年に書かれた論文にたどりつきました。
http://www.bekkoame.ne.jp/tw/hibana/h203_1.html
トップページに行ってみると、「共産主義者同盟(火花)」という、なんだか非常に熱いタイトルのサイトにあって、ちょっとびっくりしたのですが、論文自体を読んでまたびっくり。
なあんと、私が中学校で「オーストラリアは白豪主義の国」なんて教わっていたころ(1970年代後半あたり)には、もうオーストラリアは多文化主義に向けて舵をきってたんじゃないっすか!!
しかもその後、『美味しんぼ』でオーストラリアの多文化主義が取り上げられるのを読むまで、私はそんなこと知らずに過ごしていたわけで、
感無量の、サブカル万歳!?
ともあれ、この論文を読んで、多文化主義に至る歴史のおおざっぱな流れは把握できました。多文化主義が採用されていった背景も、大枠はわかったと思います。そして、この論文が指摘しているさまざまな問題に、ここのところ私自身がまさに直面していたりするので、非常に興味深く、また、オーストラリアの経験から今の日本人が学ぶべきことは多いのだと、確信しました。サッカーだけでなく。
ただ残念なことに、1972年に誕生したウィットラム労働党政権というのが移民政策を転換していく基礎となった議論がどんなものだったか、そこまではよくわかりませんでした。
今みたいにウェブがあったわけでもないので、当時の一般市民レベルでの意識の変容を調べるのはむずかしいのでしょうが、そのへんの議論を読むことができれば、今、日本で展開されはじめている外国人労働者受け入れや移民受け入れに関する議論を進めるうえで、大きな参考になるように思います。
それはさておき、ハワード首相って、1996年に就任してたんですか。
う〜ん、ちょっと長過ぎかも。
投稿: 仲@ukiuki | 2006年10月 4日 (水) 16時21分
こんにちわー。ははは「美味しんぼ」ですか!
>1972年に誕生したウィットラム労働党政権
広大な国土のわりには、人口が少なすぎることというのがあるかと思います。労働力不足と国防のためであると教えてました。そこは麗しい話ではないんですがまあそのとおりだと思います。
私が行ってたころは北にチィモールの紛争なども抱えてましたし、
カンボジアのPKO活動にもかなりの人数を送ってましたし。ようするに、国家の位置関係として経済的、国防的にインドネシア、オセアニアをはじめとしたアジアを共生するほうが、国にとってもメリットがあるって判断かと思います。逆にいうと共生しないとデメリットがあるという考えかと。
ただし民の意識的には「白豪主義」っていうのは完全に過去の遺物でした。私が行ってたころは。まあ、どわーっと入ってきたんで、「慣れ」もあるし「仲良くしたほうがいいんじゃね」だと思います。ほんとに「マルチチュード化」みたいなもんかと。どっちかいうと、イギリス、アメリカに対する負けないぞという同属嫌悪的意識のほうが強かった印象があります
ベトナム戦争のことは、かなりの難民を受け入れていたと思います。香港返還のときの移民もかなりきてましたね。バルト3国からも。私が実習で教えていた学校はYEAR3くらいできて言葉がわからなくてイライラして授業中大暴れする子がいたんですが3ケ月くらいの放課後の英語補習で私より英語うまくなってましたorz
いわゆるソフトな同化主義をとっていたかと思います。公立の小学校でも高学年からかな宗教{道徳みたいなもんです)の時間があるんですがこれは、子供たちが好きな宗教を呼べました。もちろん無宗教も可能。学校に一人でもモスリムの子がいれば、たったひとりでもモスリムの先生がいらしてました。あと、小学生のときからアジア、オセアニア言語を選択でとることになってました、日本語圧倒的に人気でしたが。
なぜかというと日本は当時最大の貿易相手国、観光客も大勢くるので日本語が喋れれば、仕事にありつけるってことでどこから聞いたんだか、私には「家庭教師」やって欲しいっていう大学生が大勢いました(いやもう人気者)。新聞の求人欄に「日本語しゃべれる人」って別項になってたくらいですから。
余談ですが、最初おお暴れしてた移民の子とお目付け役そして私の勉強ってという意味でもいっしょに英語の補修によく出てたんですがオーストラリア人はご飯をパスタみたいにゆでるんですよ!ゆるせねーといってたら「うち炊飯器あるよ」とおいしい中華とご飯をよくごちそうになりにいってました。いやあほんとにアジア系の移民のおうちにはご飯の方面ではとってもお世話になりました(笑)
投稿: 安原 | 2006年10月 4日 (水) 18時11分
安原さん、こんばんは。
いろいろコメントしてくださったおかげで、オーストラリアの多文化主義をテーマに、エントリーを書けそうな気がしてきてます。いや、ぜひ書くべきかも。
労働力不足と国防、それとやっぱり経済なんですね。
くだんの論文によると、1800年代半ばから移民労働者が中国はじめアジア各国から、流入していた。1947年に、年10万人の移民を受け入れる計画を発表。目的は、国防、内陸部開発、工業化の基盤整備、国内市場拡大、欧州の難民庇護なんかで、ヨーロッパからの移民を念頭に置いていた。
それが60年代半ば以降、アジア・中近東からの移民が流入していく中で、「中国革命に伴う中国難民の受け入れ、非ヨーロッパ人の帰化承認。日本人「花嫁」・中国人の家族呼び寄せ承認、「(移民希望者へのヨーロッパ言語による)書き取りテスト」廃止、混血ヨーロッパ人の移民手続きの簡素化など」が進み、従来の移民政策・人種差別政策がなし崩し的に廃棄、緩和されていった、のだそうです。
状況が移民を必要とするうちに、なんだかんだと「白豪主義」よりいいものがあるじゃん、って感じに意識が変わっていったのかも知れませんね。経済的にも外交的にもメリットはあるし、生活実感としても「白豪主義」に固執するよりもっとこっちの方が楽しそうとか、そんな感じで。
最近ときどき耳にする「マルチチュード」って、関連の本を読んでないんでよくわかんないままでしたが、安原さんの指摘を受けて「はてな」の解説を読み、理解できた気がします(半可通とも)。うん、まさにマルチチュードかも。
日本でも「同属嫌悪的意識」が働いて、日本も韓国には負けんぞ〜、とか言って、人権関係の分野でも競争してくれたらなあ、なんて思います。
>私が実習で教えていた学校はYEAR3くらいできて言葉がわからなくてイライラして授業中大暴れする子がいたんですが3ケ月くらいの放課後の英語補習で私より英語うまくなってましたorz
ええっ、3カ月で!! これって、英語に近い言語の国から来た子、じゃなくって、香港からの子なんですよね? かなり充実したカリキュラムがあるのかなあ。今の日本ではなかなか考えにくい話です、これって。
>いわゆるソフトな同化主義をとっていたかと思います。公立の小学校でも高学年からかな宗教{道徳みたいなもんです)の時間があるんですがこれは、子供たちが好きな宗教を呼べました。もちろん無宗教も可能。学校に一人でもモスリムの子がいれば、たったひとりでもモスリムの先生がいらしてました。
この最後のところ、さらっと書いておられるけど、すごいことですよね。経済的合理性からは絶対に説明できない部分を、子どもにそして社会に必要なこととして、国が認めてるってことですから。
>あと、小学生のときからアジア、オセアニア言語を選択でとることになってました、日本語圧倒的に人気でしたが。なぜかというと日本は当時最大の貿易相手国、観光客も大勢くるので日本語が喋れれば、仕事にありつけるってことでどこから聞いたんだか、私には「家庭教師」やって欲しいっていう大学生が大勢いました(いやもう人気者)。新聞の求人欄に「日本語しゃべれる人」って別項になってたくらいですから。
80年代末に国内のユースホステルで住み込みのバイトをしてたとき、オーストラリアから高校卒業したばっかという子が旅に来ていて、日本語ばっちしなことに驚きました。嗚呼、私も若かった(笑)。
>余談ですが、最初おお暴れしてた移民の子とお目付け役そして私の勉強ってという意味でもいっしょに英語の補修によく出てたんですがオーストラリア人はご飯をパスタみたいにゆでるんですよ!ゆるせねーといってたら「うち炊飯器あるよ」とおいしい中華とご飯をよくごちそうになりにいってました。いやあほんとにアジア系の移民のおうちにはご飯の方面ではとってもお世話になりました(笑)
えっ、『美味しんぼ』では、長粒米は、タイでは茹でて食べる、なんてことを書いてましたよ。きっとオーストラリアには、タイ風が最初に上陸したんでしょう。
とはいえ、何度かタイには行ってきたけど、私自身、お米を茹でる光景はまだ目撃してません(おかゆを除く)。。。
投稿: 仲@ukiuki | 2006年10月 5日 (木) 03時00分