『治安はほんとうに悪化しているのか』東京都治安対策担当部長(前)の懺悔あるいは告白
2006.7.16.01:00ころ。
『治安はほんとうに悪化しているのか』(久保 大・著、公人社)
第1章 「治安が悪化している」と皆がいう
第2章 “治安”はどんなふうに悪化しているというのか
第3章 少年による犯罪は増加し、凶悪化し、低年齢化しているのか
第4章 外国人犯罪は治安を脅かす主因か
第5章 「治安の悪化」否定論はなぜ説得力を持たないのか
第6章 「治安の悪化」の言説は何のために語られ、何をもたらしたのか
著者の久保氏は、2003年8月から2005年3月まで、東京都知事本局治安対策担当部長(東京都緊急治安対策本部副部長兼務)だったそうです。
2003年夏以降といえば、「不法滞在者は犯罪の温床」キャンペーンが強化されはじめた時期と記憶しています。同年10月には、法務省入国管理局・東京入国管理局・東京都・警視庁が共同で「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」を打ち出しています。
(その宣言への批判資料としていち早く公開されたのが、『東京都「不法滞在外国人」犯罪データから見る実像—「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」批判 のための基礎資料として----- 』(中島真一郎、2003年11月14日)です。)
久保氏は、東京都を定年退職してから、本書を書き上げたそうです。
「あとがき」では、緊急治安対策本部時代の部下たちへの率直な謝罪が語られており、おもわず微笑んでしまいました。でもふと考え直せば、笑ってられる状況ではありません。
久保氏も書いているように、「凶悪な犯罪を行う来日外国人」と「被害を受ける善良な日本人」という対立項を提示する言説は、「日本人の側からのレイシズム(人種主義)や収奪を正当化する役割」を果たすものです。
そして、内閣府の世論調査や本書でも引用されている民間による意識調査などを見る限り、その「役割」はもう十二分に果たされたと見え、連日、「不法滞在者狩り」のニュースが報じられ、それに異を唱える声はほとんどまったく聞こえません。
本書は、「治安悪化」という神話を、平易な語り口でわかりやすく解体してくれる、貴重な一冊だと思います。
お勧めします。ぜひお読みください。
(おまけ)
「外国人犯罪」の宣伝と報道(英訳付き、コムスタカー外国人と共に生きる会)他(2006.07.07)
『治安はほんとうに悪化しているのか』東京都治安対策担当部長(前)の懺悔あるいは告白(2006.07.16)
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★『マヤカシの「外国人犯罪増加」論〜「人種差別」と「棄民」を生む社会の行方〜』(全4回の第3回)(2004/04/17)
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