外国人集住都市会議「規制改革要望書」に対する危惧、そして……
2006.2.20:07:00ころ
外国人集住都市会議が生まれ、「浜松宣言」を出したときには、その内容に驚くと同時に、将来に大きな期待を抱いた私でしたが……。
昨秋、外国人集住都市会議は、三重県四日市市で開催され、政府に対する「規制改革要望書」を提出しました。そのコピーを11月に知人からいただいたのですが、じっくり読む機会がないまま年が変わり、先週になってようやく読むことができました。読んで、たちまち失望し、それどころか、恐怖に襲われました。
浜松宣言の頃は、もうちょっと外国籍住民の人権からの視点があったと思うのですが、どうも行政の効率化、管理の効率化が、今や集住都市会議の主たる目標になっているように感じたのです。
1)たとえば、「外国人の子どもの不就学対策」として「(保護者の)在留資格の更新の要件として子どもの就学を定める」とありますが、子どもの権利を考えたとき、それは本末転倒だろうと私には思えます。
こんな「罰」を設けるよりも、国に対して、外国にルーツを持つ子どもたちが日本国内で大勢暮らすようになっている社会状況に合った、新しい公教育のあり方とカリキュラムの内容を創り出すよう求めることが、問題解決への早道だと思うからです。また、はるかに人道的な方策でもあります。
(「日本語指導」に特化する形ではあっても学習指導要領改訂を、政府からの回答を受けた「再検討要請」で求めている点は評価しますが、それでは不十分だと思います。子どもの可能性、子どもが持っているものを伸ばしていくことを最優先に考えるなら、子どもが親から受け継いできたさまざまな力(「財力」は除くとして)や言語、文化を否定せず、肯定し、さらに育てていくことが、そもそもの出発点になるはずです。だからこそ、日本語教育だけでなく継承語教育が不可欠だと考えるのです。もちろん、日本社会で暮らすうえで、また、せっかく日本社会で暮らしているのだから、「日本語の習得も大事」なのは、ある意味で真実でしょうから、日本語教育と継承語教育を何らかの形で融合させた、バイリンガル教育、マルチリンガル教育を実現していくべき、その実現を求めていくべきだと思います。)
2)外国人登録制度を改め、各省庁がその情報を共用できるようにするという提案も、行政の効率化という点からは望ましいでしょうが、現に警察庁が主導する形で政府がゼノフォビア(外国人嫌い)を煽動し(こちらの「粉砕!プロパガンダ」コーナーを参照ください)、「不法滞在者狩り」を推進しているような状況の中で、このような提案するのは、万が一にも実現した場合に、人権侵害を深刻化させるおそれがあまりにも大きいと思います。
「データ保護に万全を尽くし、国民、外国人及び関係NPOなどの理解と協力を得る必要があることを強調しておきたい」と要望は結ばれていますが、懸念がぬぐえません。
これと同様の理由で、「外国人庁」「多文化共生庁」を設けるという提案にも、危惧を覚えます。むしろ、たとえば人権擁護庁といった、独立の人権救済機関の設立を求めることこそ、重要だと思います。
3)雇用企業の就労管理の適正化はぜひとも必要ですが、そこに出入国管理に関する部署を「情報共有化」という名目で巻き込んでしまうことには、上記と同じ懸念を覚えます。
せっかく参議院法務委員会で、1989年12月07日に、労働省労働基準局監督課長(当時)が、
○説明員(氣賀澤克己君) 労働基準監督機関といたしまして、外国人労働者から申告、相談あるいは労災補償の給付の請求ということがありまして、それに関連して不法就労者であるということが判明した場合の取り扱いにつきましては、今法務省などからお答えがありましたのと同様な見地に立ちまして、こういう人を出入国管理行政機関に対して情報提供をするということにいたしますと事実上不法就労者からの申告、相談あるいは労災補償請求というものの道を閉ざしてしまうということになりまして、労働基準関係法違反の発見なり是正の端緒を失う、そして本来の行政目的の達成を困難にするということにもなりかねませんので、私どもそういう場合には原則として出入国管理行政機関に対して情報提供は行わないというような扱いをすることにいたしておるところでございます。(国会会議録検索システムより)
と言ってくれているのを、元の木阿弥にして、人権侵害の温床の生成・育成につながってしまうのではないかと危惧します。
4)年金や健康保険に関しては詳しくないので、あれこれ論評するのは難しいです。
ただ、政府からの回答の中に出てくる、「厚生年金の「脱退一時金」を保険料の3年分を限度として、日本に短期滞在する外国人に対する時限的な措置として支給している」という点を、在住外国人に対して広くアピールし、帰国後の受給手続の便宜を図るとか、そういった施策を強く打ち出していかないと、厚生年金加入者が数の上では増えたとしても、「日本政府が掛け金を搾取しているだけ」といった批判を浴びつづけることになりそうなのは、想像がつきます。
ですので、政府の回答を受けての「再検討要請」で外国人集住都市会議側が、南米出身者の滞日期間が当初より伸びて3年以上の人が多数になっていることを理由に、脱退一時金の対象期間の上限の延長を求めていることや、「上記の外国人は定住化傾向はみられるものの、日本での永住については未だ見通しが立っていない状況にあるなかで、我が国の年金制度はその受給権の発生に要する年数が欧米諸国と比べて著しく長いため、社会保障協定が締結されたとしても、我が国においての年金受給権の発生に必要な年数が短縮されない限り、外国人に日本で老齢年金の受給権を発生させることは困難であり、加入率の増加にもつながらないと考える。数的に少数である外国人に対して本制度を見直すことが、日本人を含めたすべての住民にとって魅力のある制度になることにつながると考えられるため、現行法制度にとらわれずご検討いただきたい」としているのには、納得がいきます。
結局やはり、「すべての移住労働者とその家族の権利保護に関する条約」の批准を、困難かも知れませんが、呼びかけていくことが、大事な気がします。
まあ、それはNGOや民間の人たち、政党の役割かも知れません。
しかし、どんなに出入国管理を厳しくしても、どうせ人の移動を完全に制限などできないのですし、昨今の社会情勢や官僚組織の性格というものを考慮すれば、放っておいても出入国管理(「外国人管理」)は厳格化はしても緩やかな方向に進むとはとうてい考えられないのですから、まずは、ここに暮らす人、ここにいる人、たちの置かれた状況を、改善することに、地方自治体は努力を注ぐべきだと思うのです。
外国人集住都市会議の原点は、まさにそこにあったと思うのですが、私の過剰な期待が生んだ誤解だったのか、それとも参加自治体が増える中で、あるいは、いろいろな分野の専門家の方たちが関わるようになる中で、何かの変化があったのか。「規制改革要望書」を出すのは今回が初めてだったため、「要望書」という形にまとめあげる調整だけで手一杯だった——せめてそう思いたいです。
なお、今回の要望書に対する政府からの回答では、
◆2005年に設置された外国人の在留管理に関するワーキングチーム等において、関係省庁で検討を行っている。
という点に大きな不安が残るものの(どうせ「テロ対策」とやらが主眼でしょう)、「外国人庁」の実現や「在留資格と子どもの就学を結びつけること」などは、関係各省庁も、それぞれのさまざまな理由から、考えていないようです。
私的にはほっとしましたが、こんなことでほっとしなければならない状況は、切ないだけです。ちっとも嬉しくありません。
地方自治体が、主体になって、国籍や在留資格にかかわらず、住民が直面している問題を解決していくことを、外国人集住都市会議の将来にもう一度期待したいのですが、難しいんでしょうか……。
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