『インパクション』150号[視点]2つ/『週刊ポスト』連載ルポ「日系外国人は告発する」最終回
2006.2.15.01:40ころ
1)
『インパクション』150号
[視点]
◎外国人人権法連絡会の発足(矢野まなみ)
◎問われるべきは、問題の起源である ウトロ——棄て置かれた戦後補償問題(中村一成)
ご一読ください。
2)
1月26日の記事と2月8日の記事で紹介した『週刊ポスト』の連載「日系外国人は告発する」(杉山 春)。
今週号(2月24日号)で第4回。最終回となりました。最終回のサブタイトルは、
子どもたちの「居場所」を創る教育が
国を越えた新たな「共生」のヒントだ
リード文は、
「ブラジル人はしょぼい。僕は日本人になりたい」——ブラジルで生まれながら、「出稼ぎ」として働く親を「恥ずかしい」と感じる日系人の子どもたち。彼らの現実は、外国人労働者を続々と受け入れている日本の企業、行政、教育現場の不備を“告発”するものだ。彼らを救う試みは、日系人のみならず、今の日本が抱える教育問題とも無関係ではない。
前回第3回の締めの一文が、
子どもたちを未来に繋ぐ場はどこにあるのか、さらに探ってみたい。とあって、非常に期待をしていたのですが、なんだか奇麗にまとめようと無理をしすぎた感じです。
紹介されている横浜市立潮田中学や神奈川県立鶴見総合高校の取り組みは、賞賛に値するものだと思います。登場する子どもたち、若者たちへのエールは送りたいですし、「TEN SAIS MC's」の活躍にも大いに期待しています。
そしてこのルポも、子どもたちや、子どもたちと関わっている人たちの声をよく拾っていて、筆者の杉山氏にもエールを送りたいです。
しかし、締めの一文が、
明日を切り開く方途は難しいが、ないわけではない。自分を見つけ、仲間を見つけ、表現し、伝えること。そのことを知った者たちが、国を越えて、未来を作る。とは、う〜ん、拍子抜けしてしまいました。
「日系人とその家族」が、日本国内で合法的に就労できる在留資格を与えられるようになって、もう16年です。にもかかわらず、いまだに子どもの「個人努力」や、どこの地域に保護者が「派遣」されるかという運、そして学校の一部の先生方の超人的な努力、といったものに頼らざるをえない状況が、相も変わらず、あるのです。
そのあたりへの問題意識が、このルポからは感じられていただけに、まとめの文が、その内容の当否はともかくとして、上記のようなものだとは、残念に感じました。結局、子どもの努力と運次第……ということに落ちつくのかなあ、と。ある部分はそうかも知れないけれど、それだけではないでしょう。そうして放置してしまえるのなら、日本の大人としては「とっても楽」、ではあるのですが。
ちょうど、昨日の毎日新聞大阪版の「新聞時評」で、大阪大学大学院の杉原 達教授が、
日系南米人の教育問題 公教育なじめず中退多数 国の対策、これから(中村一成記者、毎日新聞「教育の森」、2006.1.30)
を評して、次のように書いていました。
滋賀県や岐阜県の現場を歩きながら、記者は、民間グループによる子どもたちの学習支援、母語教育の姿、将来展望の困難、岐阜県可児市の独自の取り組みなどを具体的に描く。きれいに話をまとめず、現在進行中の課題とさまざまな模索を紹介し、複雑な状況の中で何が問われているかを読者に投げかけるスタイルに、言葉の力を感じた。
同感です(杉原氏の1月6日付「記者の目」に対する評価は、前述のように、納得いきませんが)。「日系外国人は告発する」にも、同様の「言葉の力」を感じていただけに、最後のまとめが、惜しくて仕方がありません。4回完結ということで、ちょっと無理してまとめざるを得なかった、のかも知れませんが、あまりに、もったいない。この分野を、杉山氏にも『週刊ポスト』にも、さらに深く突っ込んでいっていただきたいです。期待しています。
※ ところで、「日本の中学に在学する外国人生徒の高校進学率」について、「全国平均は五割との試算もある」との一文があります。このソースをご存知の方がいらっしゃったら、お教えいただけないでしょうか。私個人の周囲を見渡す限り、南米日系人の子たちの場合、せいぜい2割程度といった感じです。もちろん、紹介されている横浜の市立中学のように高校進学率の高い学校や高い地域もあるのでしょうが、意外な気がして、この試算の中に、ひょっとして在日コリアンの子どもたちも入っているのかな、とか思ってしまうのです。はい、子どもたちへの支援態勢が非常に乏しい地域にいるせいです。あっ、ふと思えば、中国帰国者の子どもたち(漢字圏出身)は、その数字の中に含まれているのか、いや、彼・彼女らは日本国籍を持ってるのか? とか、いろいろ疑問が湧いてきます。一口に外国人生徒といっても、その背景も状況も、きわめて多様なわけでして……。私もわからないことだらけです。
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